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『病院・クリニック経営150講 ― ステージ別・頻出過去問集 ―』【第28講】

医療機器リースは中途解約できない? ― 廃業時まで残る契約

病院・クリニック経営150講 ― 院長が困る日の教科書 ―

第28講 医療機器リースは中途解約できない?― 長期契約の落とし穴

第Ⅲ部 不動産・開業コンサル・取引業者

医療機器のリースは、初期支出を抑えて設備を導入する選択肢です。ただし、月額だけでは、支払総額や途中で使わなくなった場合の負担が分かりません。機器を選ぶ段階で、契約の種類と終了条件も確認します。

この講は、主にファイナンス・リースを対象にします。これは設備投資の資金を契約期間中に回収する仕組みで、中途解約や故障時の負担に特徴があります。一方、レンタルやオペレーティング・リース、保守付き契約では条件が異なります。「リース」という名称だけで結論を出さないでください。

例えば、次のような場面を考えてみてください。導入した超音波診断装置が、思ったほど使われていません。導入から2年、稼働は月に数回。
「解約して、もっと使う機器に入れ替えたい」とリース会社に伝えると、返ってきた答えはこうでした。
「本契約は中途解約ができません。どうしてもということでしたら、残りのリース料相当額を一括でお支払いいただくことになります」。残り5年分、およそ900万円。

1ファイナンス・リースの仕組みと負担

ファイナンス・リースの典型例では、先生が機器と販売会社を選び、リース会社が購入して先生に貸します。所有権は原則としてリース会社にあり、売買代金を分割払いして当然に自分の物になる契約とは異なります。使用・保守の責任や満了時の所有権は、契約で確認します。

ファイナンス・リースは、機器の取得費用などをリース料によって概ね回収する設計です。金利相当額だけでなく、税・保険・手数料等が含まれる場合があります。保守や消耗品が別料金かも確認してください。

一つは、中途解約の制約です。ファイナンス・リースは通常、借主都合で自由に解約できず、合意により終了させる場合も残リース料等を基準とする負担が生じます。法律がすべてのリースの中途解約を一律に禁止しているわけではありません。約定の終了条件、解除・取消し等の根拠、精算方法を確認します。

もう一つは、不具合への対応です。典型的な契約ではリース会社の契約不適合責任を制限し、販売会社への請求権を移すなどして借主が対応する仕組みになっています。その間もリース料を払う条項があるため、自己判断で支払を止めず、リース会社と販売会社へ通知してください。メーカーへの請求は保証内容等によるもので、常に販売会社と同じ責任を負うとは限りません。

支援会社自身がリースの主体になる形

開業支援会社が、自ら購入した機器を貸す場合もあります。この契約が、通常の賃貸借なのか、ファイナンス・リースと同様の負担を定めたものかを確認します。さらに、次の点を整理してください。

価格の決め方。月額と総額、保守・保険等の内訳を確認し、同等の機器を買う場合や他社のリースと比較します。支援会社の仕入原価や利益率を当然に開示させられるとは限りませんが、自院が何にいくら払うかは明確にします。

期間満了後の扱い。返却、再リース、買取りのどれが選べるか、通知期限と追加費用を確認します。満了後も所有権が移らない契約はあります。再リース料がいくらになるか、自動更新されるかを把握してください。

転リースと所有者。転リースとは、例えば支援会社がリース会社から借りた機器を、先生に又貸しする形です。支援会社が自ら購入して貸す形とは区別します。元のリース契約に基づく承諾、支援会社の支払が止まった場合の利用継続、返却先を確認してください。

機器の発注前に、これらの条件を確認してください。後から説明された場合は、その時期と承諾の経緯を記録します。契約書へ署名していなくても口頭・メール等で合意が成立することがあるため、購入や銀行借入れへ切り替えられるかは、既存の義務と取消費用を調べて判断します。

納品前や検査未了の段階で、受領・検収を完了したとする借受証へ署名しないことも重要です。型番、数量、動作、付属品を確認し、不具合や未納品があれば記録して関係者へ伝えます。

2 契約前に確認する六点

項目確認すること
①総支払額月額×回数に、初期費用、保守・保険、返却・満了時費用等を加えて比較する。購入との差額がすべて金利とは限らず、上乗せ率と実質的な年利も別。
②期間機器の使用可能期間、陳腐化、融資の返済期間と比較する。期間を延ばすと月額が下がる場合もあるが、支払総額と拘束期間も確認する。
③中途終了の条件規定損害金の計算方法。閉院・承継・移転の場合にどうなるかを、契約前に確認しておく。
④保守は別契約かリース料に保守が含まれるのか、別に保守契約を結ぶのか。含まれない場合、保守費用は毎年いくらかかるのか。
⑤満了時の扱い返還するのか、再リースか、買い取れるのか。再リース料の水準と、返還時の原状(付属品、消耗部品)についての定め。
⑥保証個人保証を求められているか。医療法人の契約でも理事長個人の保証が付くことがある(第5講)。

中途終了の条件は、閉院や承継の資金計画に直結します。残期間だけでなく、返却費用、規定損害金、保険金や物件処分額の精算方法を、契約前に確認してください。

3 閉院・承継のときに何が起きるか

閉院しても、リース契約は当然には終わりません。契約を続ける場合と、中途終了の合意をする場合の費用を比較します。規定損害金が定められていると、一括精算が必要になることがあります。各機器の契約と残額を一覧にし、融資や原状回復の負担と合わせて資金を確保します。

事業を別の医師・法人へ譲る場合には、契約上の地位の移転についてリース会社の承諾を得る方法があります。信用審査、保証、引継ぎ前の債務を確認し、元の契約者・保証人の責任が解除されるかも書面化します。一方、同じ医療法人の代表者が交代するだけなら契約者は変わりませんが、通知・承諾や保証変更が必要かを確認します。

4 過剰なリースを避ける

機器は複数まとめて提案されることがあります。診療に不可欠なものと、追加できると便利なものを分け、機器ごとの需要と費用を検討します。

診療計画に不可欠な設備は確保し、追加設備は患者層、収益見込み、導入の所要期間を比較します。後からの設置に改修が必要な機器や、行政手続に影響する設備もあるため、単に購入を先送りすればよいわけではありません。

提案してくる側が、機器の販売で収益を得る立場にあるかどうかも見てください(第21・22講)。開業支援業者経由で機器を導入する場合、機種の選定と価格の妥当性を、別の目で確認する価値があります。相見積りを取ること自体を嫌がられるなら、そこが判断材料になります。

5 今日やること・やってはいけないこと

今日やること

  • リース契約書を集め、機器ごとに「月額・残期間・中途終了時の負担額」を一覧にする
  • 保守が別契約かどうかと、その年間費用を確認する
  • 満了時期をカレンダーに入れる(再リースか、返還か、入替えかを事前に決められます)
  • 個人保証の有無を確認する

やってはいけないこと

  • 月額だけを見て、総支払額を確認しない
  • 「使わなくなったら解約すればいい」と考える
  • 契約の種類や不具合への対応条項を確認せず、自己判断でリース料の支払を止める
  • 閉院・承継を検討し始めてから、初めてリース会社に条件を聞く

6 よくある質問

機器が故障して使えません。リース料を止められませんか。
典型的なファイナンス・リースでは、不具合があってもリース料を払う契約になっています。ただし、契約の種類、責任分担、納品・検収の状態、不具合の原因によって検討は変わります。リース会社と販売会社へ連絡し、保守契約や保証を確認してください。
解約したいのですが、規定損害金が高額です。減額できませんか。
まず、条項の適用条件、残額、保険金や機器処分額の精算を確認します。分割払い、返却、後継者への引継ぎ等を協議する余地はありますが、転売できるから当然に減額されるわけではありません。違約金の性質や過大性も、契約と具体的事情に即して検討します。
買った方が得だったのでしょうか。
購入・銀行借入れ・各種リースを、資金繰り、総支払額、保守、途中終了、満了時の所有権までそろえて比較します。税務・会計上の扱いは契約類型等によるため、税理士等にも確認してください。ファイナンス・リースの長期拘束も、比較する条件の一つです。
リース会社から契約書の写しをもらっていません。
契約先へ、契約書・約款・別表・借受証・保証書類の写しを求めてください。電子契約ならダウンロード方法も確認します。写しが手元にないだけで支払義務が消えるわけではありません。取得できなければ申込記録や請求明細も集め、契約内容を整理します。

作成日:2026年7月1日
改訂日:2026年9月17日

主な法令・参考資料

  1. 民法

    契約、委任、責任、相続・財産分与。768条の改正を含む。

    https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

  2. リース事業協会:リース契約の仕組みと契約条項

    参考契約条項。実際の契約条件は個別に確認。

    https://www.leasing.or.jp/information/joukou.html
  3. リース事業協会:リースの種類

    ファイナンス・リース等の区分。

    https://www.leasing.or.jp/information/kind.html

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