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『病院・クリニック経営150講 ― ステージ別・頻出過去問集 ―』【第30講】

開業後も売上の○%を払い続ける契約 ― 継続コンサルを切れるか

病院・クリニック経営150講 ― 院長が困る日の教科書 ―

第30講 開業後も売上の○%を払い続ける契約― 継続コンサル契約の落とし穴

第Ⅲ部 不動産・開業コンサル・取引業者

開業までの支援が無料でも、開業後に月額の報酬や売上の一定割合を払い続ける契約が組まれていれば、支援会社の収益はそこで確保されます。そして継続的な契約は、毎月の金額が小さく見え、総額が意識されないという性質を持っています。

この講は第Ⅲ部の締めくくりとして、継続契約の見方——総額の計算、抜けるための条件、そして「何に対して払っているのか」の検証——を扱います。あわせて、第Ⅲ部で見てきた業者との関係を、一枚のチェックリストにまとめます。

例えば、次のような場面を考えてみてください。契約書には「事務長業務一式」と書かれていました。人事、労務、経理、総務、経営管理、広報。月額の報酬は、開業前の説明では「これだけの業務を自前でやろうとすれば、人を雇うより安い」と説明され、納得もしていました。
開業から2年。実際に来てもらえるのは月に数回で、経理は結局こちらでやっています。解約したいと申し出ると、担当者はこう答えました。
「更新拒絶は6か月前までにお申し出いただく必要がありまして。次の更新は来年です」

1 まず総額を計算する

継続契約を評価する最初の作業は、単純な掛け算です。月額に、契約期間の月数を掛ける。

例えば、月額40万円を10年間、同じ条件で払い続けると4800万円です。月商800万円に5%を掛ける場合も月40万円ですが、売上が変われば総額も変わります。これは税抜額・消費税を別とした単純計算です。課税対象の報酬には消費税等も考慮し、売上の定義、最低報酬、追加費用、改定条項を確認してください。

同じ業務を内製した場合や、税理士・社会保険労務士等へ個別に依頼した場合と比較します。雇用なら給与だけでなく社会保険、採用・教育費等も含めます。差額には業務範囲、担当者の経験、対応時間、統括の負担などが反映されるため、価格だけではなく実際に受けられるサービスをそろえて判断します。

2 何に対して払っているのかを確かめる

「経営管理業務一式」「広報支援」だけでは、期待と実際の業務がずれやすくなります。契約書のほか、提案書や説明の記録も合意内容の判断資料になりますが、提供業務、頻度、成果物、対象外の業務を具体的に決めておく方が明確です。

誰が、いつ、何をするか。成果物と報告は何か。連絡窓口と対応時間はどうなっているか。これらを確認し、支払の対象と業務の達成状況を記録します。契約書が曖昧なら、双方が合意する覚書等で明確にしてください。税務申告や社会保険手続など資格者の関与が必要な業務は、担当者と適法な提供体制も確認します。

売上連動報酬は、売上が減れば通常は報酬も減りますが、利益率の低下や原価上昇があっても同じ割合を払うため、利益を圧迫する場合があります。最低報酬があるかも確認します。固定報酬は見通しを立てやすい一方、売上が減っても原則として額は変わりません。売上・費用・利益の複数の想定で比較してください。

集患支援では、通常の広告・広報業務の対価と、患者紹介の対価を区別します。療養担当規則2条の4の2第2項は、事業者等へ紹介の対価として金品等を提供し、患者を自院の受診へ誘引する行為を規制しています。売上連動という形式だけで適法・違法は決まりません。紹介人数や診療報酬と支払の結び付き、実際の業務内容を確認してください。薬局への誘導を扱う第24講とは、規制の場面が異なります。

3 抜けるための条件

継続契約でいちばん重要なのは、やめ方です。次の三点を、契約書で確認してください。

確認事項見るべきポイント
期間と自動更新期間、自動更新、更新拒絶の期限と方法を確認する。更新拒絶と中途解約は別なので、期限を過ぎた場合も解約条項や法的根拠を検討する。
中途解約途中解約の可否、予告期間、違約金、既履行分の精算を確認する。委任・準委任には原則として解除の自由があるが、特約の効力や解除に伴う賠償を別に検討する(民法651・656条)。
他の契約との連動自動的に他の契約も終わるのか、解約できる権利が生じるのかを区別する。対象契約、相手方、通知、違約金・残債、診療継続への影響まで確認する。

連動条項は、支援全体から離れる手段になる一方、必要な賃貸借やシステムまで終了させるリスクもあります。相手方が別会社なら、それぞれの契約に根拠があるかも確認します(第22講)。

更新拒絶の期限はカレンダーに記録し、通知が相手に届くべき日と方法を確認します。解約時には、会計データ、求人・広告のアカウント、契約書類、個人情報の返却・移管・削除、業務引継ぎも取り決めてください。

4 第Ⅲ部のまとめ ― 業者と付き合うための十の確認

第Ⅲ部では、開業支援会社、貸主、内装業者、リース会社、人材紹介会社との関係を見てきました。提案の利点を生かすためにも、収益の仕組み、義務の範囲、途中で条件が変わる場合の対応を知ることが大切です。確認事項を十項目に整理します。

保存版 業者と付き合うための十の確認

  1. この会社は、どこから収益を得ているか。紹介手数料か、自ら貸主・リース会社になることによる継続収入か(第21講)。
  2. 契約相手と役割は誰か。貸主の直接賃貸と宅建業者の媒介を区別する。定期借家の事前説明義務は別に確認する(第21・23講)。
  3. 署名済みの契約だけでなく、口頭・メール・行動による合意や、発注済みの取引も把握しているか(第22講)。
  4. 金額または算定方法、報酬・費用負担の根拠を確認したか。別紙がないことや具体額が未記載であることだけで、契約未成立・支払不要とは判断しない(第22講)。
  5. 普通借家か定期借家か。定期借家なら、別個の事前説明書面または適法な電子提供、説明の記録を確認したか(第23講)。
  6. 契約満了時の残債、投資の回収、撤去・移転費用を試算したか。税務上の償却期間だけで判断しない(第23・26・28講)。
  7. 撤退の値段を知っているか。違約金、原状回復、リースの規定損害金、融資の残債(第25・26・28講)。
  8. 継続契約の総額と、更新拒絶の期限を把握しているか。(本講)
  9. 提案する人と、それをチェックする人は別か。収益が発注額に連動しない立場の専門家に見てもらっているか(第21講)。
  10. やり取り、見積り、説明・承諾の日時を残しているか。記録がないだけで主張できなくなるわけではないが、立証が難しくなる(第21・22講)。

※ 十項目のうち答えられないものがあれば、そこが次に手をつけるべき場所です。

5 今日やること・やってはいけないこと

今日やること

  • 継続契約の月額に契約期間を掛けて、総額を出す
  • 更新拒絶の期限を、いま手帳とカレンダーに書き込む
  • 業務の範囲(誰が・月に何回・何を)が契約書に書かれているか確認する
  • 他の契約との連動を定めた条項がないか、契約書を最後まで読む

やってはいけないこと

  • 月額だけを見て、総額を計算しない
  • 業務の範囲が抽象的なまま、更新を重ねる
  • 更新拒絶の期限を放置する、または期限を過ぎたら一切解約できないと思い込む
  • 契約の種類・通知方法・精算条件を確認せず、「もう結構です」とだけ伝える

6 よくある質問

成果が出ていないのに、報酬を払い続けなければなりませんか。
売上等の成果を保証する契約か、適切な助言・事務処理を提供する契約かを確認します。成果が出ないだけで直ちに債務不履行とは限りませんが、約束した業務をしない場合等は、履行請求、損害賠償、解除を検討します。業務範囲が抽象的でも提案書や説明の記録が判断資料になるため、一律に諦めず、支払停止の可否も含めて相談してください。
売上の一定割合という報酬は、問題がありますか。
売上連動だけで直ちに違法とはいえません。ただし、実際には患者紹介の対価でないか、提供業務に見合う内容か、医療機関の診療・経営判断が不当に拘束されないかを確認します。保険医療機関による紹介対価の支払は療養担当規則の問題になるため、契約と実際の運用を合わせて検討します。
解約を申し出たら、「他の契約も全部終わる」と言われました。
自動終了の条項か、解約権を与える条項か、相手に解除権が生じる条項かを確認します。連動は有利とは限らず、診療場所やシステムが使えなくなる可能性もあります。契約ごとの通知、違約金、原状回復、リース残額を整理してから方針を決めてください。
いま契約している支援会社と、関係を壊さずに条件だけ見直せますか。
業務範囲・報酬・引継ぎの条件を整理し、見直しを提案できます。ただし、相手が合意する保証はありません。更新期限に余裕を持ち、変更案と、合意できない場合の継続・終了の選択肢を比較して協議します。

作成日:2026年7月1日
改訂日:2026年9月17日

主な法令・参考資料

  1. 民法

    契約、委任、責任、相続・財産分与。768条の改正を含む。

    https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

  2. e-Gov法令検索:保険医療機関及び保険医療養担当規則

    2条の4の2第2項。患者紹介の対価としての金品等の提供による誘引の禁止。

    https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50000100015

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