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『広告規制24講 ― 「その表示、大丈夫ですか」の教科書 ―』【第5講】

「日本一」「No.1」はどこまで書けるのか

「売上No.1」「顧客満足度第1位」「おすすめしたい◯◯No.1」。効果が高いだけに、消費者庁が近年もっとも集中的に取り締まっている表示類型です。消費者庁は令和6年9月に「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表し、同時期に多数の措置命令を出しました。No.1表示は「書き方」の問題ではなく「調査の中身」の問題です。

適法なNo.1表示の2要件

公正取引委員会の「No.1表示に関する実態調査報告書」(平成20年)以来、適法なNo.1表示の要件は次の2点とされています。①客観的な調査に基づいていること、②調査結果を正確かつ適正に引用していること。どちらか一方でも欠ければ、優良誤認表示(景品表示法5条1号)または有利誤認表示(同条2号)となります。

「客観的な調査」とは

調査が客観的といえるためには、調査対象者の抽出方法・質問方法が、統計上または社会通念上妥当なものでなければなりません。とくに問題となるのは次の三つです。

第一に、イメージ調査。実際にその商品を利用したことのない回答者に、複数の商品のサイトやロゴを見せて「どれが最も信頼できそうか」と尋ねる手法は、令和6年の一連の措置命令で「客観的な調査とはいえない」と明確に否定されました。「使ったことのない人の印象」を「顧客満足度」と表示すれば優良誤認です。

第二に、比較対象の恣意的な設定。比較する競合を自社に有利になるよう限定すれば、「業界No.1」とはいえません。

第三に、調査会社任せ。No.1表示を「調査会社が保証する」ビジネスが存在しますが、責任を負うのは広告主です。調査会社の名前が付いていても、調査設計が不適切なら広告主が処分されます。

「正確かつ適正な引用」とは

調査結果が客観的でも、引用の仕方で違反になります。「◯◯地域における2023年度の店舗数No.1」を単に「業界No.1」と表示する(範囲の拡張)、5年前の調査を現在も使い続ける(時点のずれ)、「満足度」が実は「認知度」だった(指標のすり替え)などが典型です。したがって、No.1表示には調査機関名・調査時期・調査対象範囲・指標を、消費者が容易に認識できる近接位置に明記することが求められます。脚注に小さく書いただけでは、打消し表示として不十分と判断されるおそれがあります(第9講)。

「日本一」「最高」「最先端」などの最上級表現

「No.1」以外の最上級表現も同じです。「日本一の品揃え」「業界最安値」「最先端の技術」は、いずれも他社との比較を含意する表示であり、客観的根拠がなければ優良誤認・有利誤認となります。「業界最安値」については、比較時点でわずかでも安い競合が存在すれば違反となるため、実務上はきわめてリスクの高い表現です。「最高級」「最上の」といった主観的表現も、消費者が客観的な等級を想起する文脈では同様に扱われます。

実務上の対応

No.1表示を使うのであれば、①調査設計の段階で法務が関与する、②調査票・回答データ・集計結果を保存する、③表示に調査概要を併記する、④調査時点が古くなっていないかを定期的に確認し、必要に応じて更新又は取り下げる、という運用を当事務所では推奨します。更新頻度について一律の法定期間があるわけではないため、表示内容、市場の変動、調査対象等に応じて適切な確認周期を設定することが重要です。これらを維持するコストに見合わないのであれば、「◯◯年連続で△△賞受賞」「累計販売数◯◯個」といった、自社データで客観的に証明できる表示に置き換える方が安全です。

実務ポイント

・No.1表示は「調査の客観性」と「引用の正確性」の両方が必要。イメージ調査は根拠にならない。

・調査会社の名前は広告主を守らない。調査設計に法務が関与する。

・調査機関・時期・範囲・指標を表示に近接して明記し、調査結果が現在の表示の根拠として有効かを定期的に確認する。

作成日付:2026年9月12日

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