「通常価格10,000円→今だけ5,000円」。二重価格表示は、有利誤認表示(景品表示法5条2号)が最も多く問題になる場面です。消費者庁の「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(価格表示ガイドライン)は、比較対照価格の種類ごとに詳細なルールを定めています。半額の表示自体は問題ではなく、「10,000円」の部分が本当かどうかが問題なのです。
比較対照価格には6つの類型がある
価格表示ガイドラインは、比較対照価格を①過去の販売価格、②将来の販売価格、③タイムサービス等の他の時期の価格、④希望小売価格、⑤競争事業者の販売価格、⑥自社の他の顧客向け販売価格に整理しています。それぞれに「不当とならない条件」があり、実務で最も頻出するのは①と④です。
過去の販売価格 ― 「最近相当期間」ルール
「通常価格」「当店通常価格」を比較対照とする場合、その価格で最近相当期間にわたって販売された実績が必要です。ガイドラインは、セール開始前8週間のうち過半の期間(販売期間が8週間未満なら、その期間の過半かつ2週間以上)その価格で販売されており、かつ、その価格での最後の販売日からセール開始まで2週間を超えていないことを目安としています。
典型的な違反は、①発売当初から一度も「通常価格」で売ったことがない、②「通常価格」での販売はごく短期間で、ほぼ常時セール価格である、③セールを繰り返して「通常価格」が形骸化している、というものです。ECサイトで「◯%OFF」を常設している場合、その多くがこのパターンに該当します。
将来の販売価格 ― 「セール終了後に値上げする」は本当か
「キャンペーン終了後は10,000円になります」と表示して比較対照価格とする場合、ガイドラインは、将来の販売価格を比較対照価格とすることは将来の価格を確実に設定できる場合以外は認められないという厳しい立場です。「終了後は通常価格に戻る」と書いたのに、実際にはセールを延長し続けた、という事案は措置命令の常連です。
希望小売価格 ― 比較対照価格としての実態が必要
「メーカー希望小売価格20,000円のところ12,000円」と表示する場合、比較対照価格は、製造業者・輸入業者等が小売業者の販売価格を拘束することなく、一般に周知される方法であらかじめ設定・公表した価格であるなど、価格表示ガイドライン上の考え方に照らして実態を備えている必要があります。小売業者が自ら作った価格や、小売業者の意向を受けて形式的に設定された価格を「希望小売価格」として用いることは問題となり得ます。プライベートブランド商品であることだけで直ちに希望小売価格表示が禁止されるわけではありませんが、その価格が客観的な比較対照価格として実態を備えているかを個別に確認する必要があります。
「参考価格」「◯%OFF」も同じ
比較対照価格の名称は問いません。「参考価格」「定価」「市価」「他店価格」と書いても、その価格に実態がなければ違反です。また、比較対照価格を明示せず「◯%OFF」とだけ書く場合も、何に対する◯%なのかが問われます。
実務上の対応
①「通常価格」での販売実績(日付・価格)を記録し、セール前に確認する、②常時セールになっている商品は「通常価格」表示を止め、セール価格を単独表示する、③セール期間の延長を繰り返さない、④希望小売価格はメーカーの公表資料を保存する。ECモールでは、参考価格の入力欄に根拠のない数字を入れないよう、運用ルールで縛る必要があります。
実務ポイント
・二重価格の適法性は「安い方」ではなく「高い方」の実態で決まる。
・過去価格は「8週間の過半・2週間以内」の目安を満たすか、販売記録で確認する。
・希望小売価格は、製造業者等が設定・公表した実態のある価格かを確認する。常時セールは「通常価格」の表示自体を止める。
作成日付:2026年9月12日