「他社製品の2倍の吸水力」「A社より月額3,000円お得」。比較広告は日本では控えめに使われてきましたが、法律上禁止されているわけではありません。公正取引委員会の「比較広告に関する景品表示法上の考え方」(昭和62年)は、3つの要件を満たす限り比較広告は適法であると明言しています。
適法な比較広告の3要件
①比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること、②実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること、③比較の方法が公正であること。この3つを同時に満たさなければ、優良誤認又は有利誤認表示となります。
要件①:客観的な実証
主張の根拠は、確立された方法による試験・調査、または専門家・専門機関の見解でなければなりません。自社内の非公式な試験でも、方法が業界の標準的な手法に沿っていれば実証となり得ますが、第三者機関による試験の方が説得力は格段に高くなります。比較対象の他社商品は、市場で実際に販売されている製品を、通常の使用条件で試験する必要があります。
要件②:正確かつ適正な引用
実証された事実の一部だけを取り出す、調査時点と異なる時点の表示に使う、調査対象の範囲を広げて表示する、といった引用は「不適正」です。他社が公表している数値を引用する場合も、その数値の前提条件(測定方法・期間)を無視して自社の数値と並べれば、公正な比較になりません。
要件③:公正な比較方法
比較する項目の選び方も問われます。自社に有利な項目だけを取り出して「総合的に優れている」と印象づける、比較対象の商品として市場で主流ではない低グレード品をあえて選ぶ、価格比較で自社はキャンペーン価格・他社は通常価格を用いる、といった手法は不公正です。また、比較の結果を短所の指摘に用いる場合、その短所が商品の全体評価に影響しない些細な点なのに、それが決定的であるかのように強調することも問題となります。
比較広告に潜む「もう一つのリスク」 ― 不正競争防止法
景品表示法は消費者保護のための行政規制ですが、比較広告では比較された他社が直接の当事者になります。他社は、①虚偽の事実の告知・流布による信用毀損(不正競争防止法2条1項21号)、②品質等誤認表示(同項20号)を理由に、差止請求(同法3条)・損害賠償請求(同法4条)を行うことができます。「A社製品は発がん性がある」といった事実の摘示はもちろん、「A社製品は時代遅れ」といった評価的表現でも、事実の摘示を含むと判断されれば信用毀損に当たり得ます。さらに、他社の商標・ロゴを比較広告の中で使用することは、商標法上の「使用」に当たるかが争われ、商標権侵害とされないよう慎重な設計が必要です。
実務上の対応
比較広告を出す際は、①試験報告書・調査データを、表示の各主張と対応づけて保存する、②比較対象商品のロット・購入日・購入先を記録する、③他社の指摘に備え、法務が「反論資料一式」を事前に用意する、④他社名を出す比較は必要最小限にし、社名や商標の使用は極力避ける、という運用が必要です。
実務ポイント
・比較広告は「客観的実証・正確な引用・公正な比較方法」の3要件で適法になる。
・行政(景品表示法)より先に、比較された他社が不正競争防止法で動く。
・他社商標の使用は別途商標法の問題。比較広告は「反論資料一式」を準備してから出す。
作成日付:2026年9月13日