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『広告規制24講 ― 「その表示、大丈夫ですか」の教科書 ―』【第8講】

口コミに報酬を払ったら広告になるのか ― ステマ規制

令和5年10月1日、景品表示法5条3号に基づく告示「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年内閣府告示第19号)が施行されました。いわゆるステルスマーケティング規制です。令和6年6月には、医療法人がGoogleマップの口コミを患者に依頼して投稿させた事案で、初の措置命令が出されました。

ステマ規制の2要件

告示が禁止するのは、①事業者が自己の供給する商品・役務について行う表示であって、②一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難なものです。要件①は「事業者の表示」であること、要件②は「広告であると分からない」ことです。逆にいえば、事業者の表示であっても「広告」「PR」と明示していれば違反にならず、第三者が自主的に投稿した表示は事業者の表示ではないので対象外です。

要件①:どこまでが「事業者の表示」か

消費者庁の運用基準は、事業者が「表示内容の決定に関与した」と認められる場合を広く事業者の表示としています。典型は、①事業者が第三者に依頼・指示して投稿させた場合、②報酬の有無を問わず、事業者と第三者の関係性(取引関係、商品の無償提供、過去の依頼実績など)から、第三者が事業者の意向に沿った投稿をすると認められる場合です。他方、①事業者が商品を無償提供しただけで内容に一切関与せず、第三者が自主的に投稿した場合、②アフィリエイトの仕組みを使っていても内容決定に関与していない場合などは、事業者の表示ではないとされます。ただし、この線引きは事実認定の問題であり、「依頼していない」ことを事業者が証明できるかが鍵になります。

要件②:「判別困難」とはどういう状態か

事業者の表示であることが「明瞭」でなければ違反です。運用基準は、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」等の文言を、一般消費者が認識できる位置・大きさで表示することを求めています。動画では冒頭に表示し、長い動画では途中にも入れること、SNSでは大量のハッシュタグの中に「#PR」を埋没させないこと、プラットフォームの「タイアップ投稿」機能を使うことなどが例示されています。逆に、テレビCMや新聞広告のように、社会通念上広告であることが明らかな媒体では明示は不要です。

名宛人は広告主だけ

ステマ規制の名宛人は、商品・役務を供給する事業者(広告主)です。投稿したインフルエンサーやアフィリエイター、仲介した代理店は処分されません。したがって、広告主は「インフルエンサーが#PRを付け忘れた」ことについて責任を負います。契約で明示義務を課し、投稿前後に確認する体制が必須です(第15講)。なお、5条3号違反は課徴金の対象ではなく、措置命令のみです。

口コミへの対応で問題になる典型例

・口コミ投稿と引き換えの割引・特典:投稿自体を条件とするだけで内容を指定しない場合、直ちに「事業者の表示」となるとは限りません。他方、「星5」や推奨コメント等を条件とする場合は、表示内容の決定への関与が認められやすくなります。

・社員・家族による口コミ:事業者の関係者による投稿というだけで直ちに事業者の表示となるわけではありません。従業員の地位・担当業務・投稿目的・会社の関与等を踏まえて判断されることとなります。

・低評価の削除依頼・高評価の選別掲載:自社サイトに好意的な口コミだけを恣意的に掲載する行為は、ステマ規制又は優良誤認表示の問題を生じ得ます。

実務ポイント

・ステマ規制は「依頼・報酬・関係性」から事業者の関与が認められれば成立し、責任は広告主のみが負う。

・「#PR」は付ければよいのではなく、消費者が認識できる位置・大きさで表示する。

・口コミ特典や社員投稿は、投稿内容への事業者の関与の有無を個別に確認する。高評価を条件とする特典提供や、好意的な口コミの恣意的な選別掲載は避ける。

作成日付:2026年9月13日

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