「※個人の感想です」「※効果には個人差があります」「※写真はイメージです」。広告の隅に小さく置かれるこれらの注記は「打消し表示」と呼ばれます。消費者庁は平成29年から30年にかけて三つの実態調査報告書を公表し、打消し表示は、消費者が実際に認識できる態様でなければ「なかったもの」として扱われることを明らかにしました。
打消し表示の基本原理
景品表示法上の「表示」は、広告全体から一般消費者が受ける印象で判断されます。目立つ「強調表示」(「1か月でマイナス5kg!」)に対し、小さな「打消し表示」(「※個人の感想です」)を置いても、消費者が打消し表示を認識できなければ、強調表示の印象がそのまま「表示の内容」となり、実際がそれに及ばなければ優良誤認です。打消し表示は免罪符ではなく、あくまで強調表示の意味を限定する「補足」にすぎません。
認識できる「態様」の基準
報告書は、打消し表示について次の点を問題にしています。①文字の大きさ:強調表示との対比で、消費者が読める大きさか。②配置:強調表示から離れた場所や、スクロールしないと見えない場所にないか。③表示のタイミング:動画広告で、強調表示の直後に短時間しか表示されないものは認識できない。④色・背景:背景と同系色で目立たなくしていないか。⑤スマートフォン:小さい画面で、打消し表示だけがさらに小さく折り畳まれていないか。
体験談広告の特殊ルール
消費者庁の「打消し表示に関する実態調査報告書」(平成29年7月)は、体験談について重要な考え方を示しています。体験談によって一般消費者が「自分も同様の効果を得られる」と受け取る場合があり、単に「個人の感想です」と表示するだけでは、その印象を十分に打ち消せないことがあります。体験談が典型的な効果であるかのような印象を与える場合には、体験者全体における効果の分布や、同様の効果が得られた者の割合等の実態を踏まえ、必要な情報を一般消費者が認識できる形で示すことが重要です。例えば、「30人中2人が体験談のような効果を得た」という実態であるのに、その2人の体験談だけを典型例のように示せば、優良誤認表示となる可能性があります。
「効果には個人差があります」の限界
この注記も同様です。「効果には個人差がある」ことは事実ですが、それは「大多数に効果がある」という前提の上での注記と消費者に受け取られます。効果が科学的に実証されていない商品で、この注記を付けて効果を示唆する体験談を並べれば、注記は意味をなしません。
「写真はイメージです」「編集しています」
ビフォーアフター写真に「イメージです」と付しても、写真が効果の実証として受け取られる限り、実際の効果を証明する根拠が必要です(第14講)。動画の「演出を含みます」も同じです。
実務上の対応
①打消し表示に頼る前に、強調表示自体を実態に合わせて弱める、②打消し表示を置くなら、強調表示と同一画面内・近接位置・読める大きさで表示する、③体験談は、表示が与える印象と実態に応じて、必要な実証データや割合等の情報を併記する、④スマートフォン表示でも確認する、⑤動画では認識に必要な表示時間を確保する。「小さく書けば大丈夫」という発想を避けることが、重要な予防策です。
実務ポイント
・打消し表示は、消費者が認識できなければ存在しないものとして扱われる。
・体験談は「個人の感想です」だけでは十分でない場合がある。体験談が典型例と誤認されないよう、実態に応じた情報提供を検討する。
・打消し表示で守るより、強調表示を実態に合わせる方が確実。
作成日付:2026年9月13日