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『広告規制24講 ― 「その表示、大丈夫ですか」の教科書 ―』【第10講】

行政から「根拠資料を出してください」と言われた日 ― 不実証広告規制

景品表示法7条2項は、消費者庁が優良誤認表示に該当するか否かを判断するため、事業者に対し「表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」の提出を求めることができ、期限内に提出がなければ、その表示は優良誤認表示と「みなす」と定めています。これが不実証広告規制です。行政側は「効果がない」ことを立証する必要がなく、事業者が「効果がある」ことを立証しなければ負ける仕組みです。

提出期限は原則15日

資料の提出期限は、消費者庁の要求書が交付された日から15日(景品表示法施行規則7条2項)です。正当な事由がある場合は延長されることがありますが、事業者の都合による延長は容易には認められません。この15日で、表示の各主張について対応する資料を整理・提出しなければならず、掲載前に根拠資料が整理されていなければ、実質的に対応不可能です。

「合理的な根拠」の2要件

消費者庁の「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針」は、合理的な根拠を次の2要件で判断します。

第一に、提出資料が客観的に実証された内容のものであること。具体的には、①試験・調査によって得られた結果、または②専門家・専門家団体・専門機関の見解や学術文献です。試験・調査は、学術界・産業界で一般的に認められた方法、またはそれがない場合は社会通念上・経験則上妥当と認められる方法で実施されている必要があります。専門家の見解は、当該分野の専門家が客観的に評価したものでなければならず、社内の担当者の見解や、自社と利害関係のある者の意見は「専門家の見解」になりません。

第二に、表示された効果・性能と提出資料の内容が適切に対応していること。これが実務上の落とし穴です。たとえば、成分Aについて有効性を示す学術論文があっても、①商品に含まれるAの量が論文の試験量より少ない、②論文が動物実験や試験管内試験で、人での効果を示していない、③論文がAの単体効果を示すが、商品は複合成分でAの効果を確認していない、④論文の対象が特定の疾患患者で、一般消費者ではない、といった場合、「対応していない」とされます。「成分の効果」と「商品の効果」は別物です。

提出後に何が起きるか

提出した資料が合理的な根拠と認められれば、優良誤認表示とはみなされません。認められなければ、措置命令との関係では優良誤認表示とみなされ、措置命令(第17講)の手続に進み得ます。課徴金については、8条3項が同様の資料提出制度を置いていますが、その法的効果は「みなし」ではなく「推定」です。そのため、課徴金納付命令との関係では、事業者が反証する余地が残されています。

掲載前の「根拠ファイル」の作り方

この規制の下では、広告の適法性は掲載前に決まります。①広告の主張を一文ずつ分解する、②各主張に対応する根拠資料(試験報告書・論文・専門家意見書)を対応表にして保存する、③商品の配合量・使用条件が資料の試験条件と一致しているかを確認する、④資料の作成者・日付・原本の所在を記録する。これが「15日で出せる」状態です。

実務ポイント

・不実証広告規制は「事業者側に立証責任がある」制度。15日で出せない根拠は「ない」のと同じ。

・「成分の効果」を示す論文では、「商品の効果」の根拠にならない(配合量・試験対象・複合成分に注意)。

・広告の主張を分解し、主張と根拠の対応表を掲載前に作る。

作成日付:2026年9月13日

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