健康食品の広告は、景品表示法・健康増進法・薬機法の三法が最も密に重なる領域です。医薬品的な効能効果を標榜すれば薬機法68条との関係が問題となり、「痩せる」などの健康保持増進効果については健康増進法65条、さらに根拠を欠く表示は景品表示法5条1号の問題となり得ます。健康食品の広告で表現できる範囲は、その食品が「どの制度の食品か」を確認した上で検討する必要があります。
食品は4種類に分かれる
第一に、特定保健用食品(トクホ)。消費者庁長官の個別許可を受け、「おなかの調子を整える」「血圧が高めの方に」など許可された表示ができます。第二に、栄養機能食品。ビタミン・ミネラル等の規格基準を満たせば届出なしに「ビタミンCは皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です」といった定型文を表示できます。第三に、機能性表示食品。事業者の責任で科学的根拠を消費者庁に届け出れば、「本品には◯◯が含まれ、△△の機能が報告されています」と表示できます。令和6年の紅麹関連製品の健康被害事案を受け、届出後の健康被害情報の報告義務やGMPによる製造管理など、制度は大きく厳格化されました。
そして第四が、上記のいずれにも該当しない「いわゆる健康食品」です。サプリメントの多くがここに含まれます。この分類の食品では、特定保健用食品・栄養機能食品・機能性表示食品のような制度に基づく機能性表示はできません。また、医薬品的効能効果の標榜は薬機法上問題となり、健康保持増進効果等について著しく事実に相違し、又は著しく人を誤認させる表示は健康増進法上禁止されます。
「いわゆる健康食品」で言えること・言えないこと
薬機法68条との関係では、昭和46年の厚生省通知(いわゆる「46通知」)が、食品が医薬品に該当するかを判断する考え方を示しています。判断に当たっては、成分本質、形状、効能効果、用法用量、販売方法等を総合的に考慮します。医薬品的な効能効果の標榜、すなわち①疾病の治療・予防(「糖尿病に効く」「高血圧を予防」)、②身体の組織機能の一般的増強・増進(「疲労回復」「老化防止」「血液サラサラ」「免疫力向上」「デトックス」)は、医薬品該当性を判断する重要な要素であり、無承認医薬品の広告として68条違反となるおそれがあります。効能効果が実際に得られるかどうかとは別に、どのような効能効果を標榜しているかが問題になります。
一方、「栄養補給」「健康維持」「美容と健康のために」「毎日の食生活をサポート」といった表現は、医薬品的効能効果に当たらないとされています。ただし、これらの表現も、前後の文脈や写真(白衣の人物、医薬品を思わせるパッケージ)と組み合わせれば医薬品的と判断され得ます。
健康増進法65条 ― 「ダイエット」表示の壁
健康増進法65条は、健康の保持増進効果等について「著しく事実に相違する」または「著しく人を誤認させる」表示を禁止します。消費者庁の「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」は、問題となる表示例として、「食事制限や運動をせずに痩せる」「飲むだけで◯kg減」「若返る」「がんに効く」などを挙げています。とくにダイエット関連は、効果の根拠となる試験が食事制限・運動と併用した条件で行われていることが多く、「飲むだけで」という表示との対応関係が崩れやすい領域です(第10講)。
機能性表示食品の落とし穴 ― 届出表示・科学的根拠の範囲を超えない
機能性表示食品は、届出表示とその科学的根拠の範囲を超えないことが重要です。広告上の表現を届出表示と逐語的に同一にしなければ直ちに違反となるわけではありませんが、言い換えやイラスト・体験談・キャッチコピーを含む広告全体から、届出表示より強い効果や別の機能を一般消費者に印象づける場合には、景品表示法上の優良誤認表示等が問題となり得ます。例えば、届出表示が「体脂肪を減らすのを助ける」である場合に、広告全体から単に「痩せる」と受け取られるような表現とならないよう注意が必要です。
実務上の対応
①商品が4分類のどれかをまず確定する、②「いわゆる健康食品」については制度に基づく機能性表示と医薬品的効能効果の標榜を避け、個別の表現を景品表示法・健康増進法・薬機法に照らして確認する、③機能性表示食品は届出表示と科学的根拠の範囲を超えないようにし、可能な限り届出表示との対応が明確な表現を用いる、④「46通知」の医薬品的効能効果の例を社内チェックリストに組み込む(第22講)。
実務ポイント
・健康食品で言える効果の範囲は「トクホ・栄養機能・機能性表示・いわゆる健康食品」の分類で決まる。
・「いわゆる健康食品」は、制度に基づく機能性表示を行うことはできず、医薬品的効能効果の標榜は薬機法上問題となる。
・機能性表示食品は、届出表示と科学的根拠の範囲を超えない。表現の言い換えも、広告全体の印象を確認する。
作成日付:2026年9月14日