医療機関の広告は、医療法6条の5と「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」(医療広告等ガイドライン)が規律します。同ガイドラインは平成30年に策定され、その後も改正されており、2026年3月30日に最終改正されています。医療広告では、広告できる事項が法令上限定されていることに加え、虚偽広告・比較優良広告・誇大広告等の禁止規定が適用されます。平成29年の法改正により、一定のウェブサイト等も広告規制の対象となっています。
「広告可能事項」の限定列挙
医療法6条の5第3項は、医療機関が広告できる事項を、診療科名、医師の氏名・経歴、診療日・時間、提供する医療の内容、施設・設備など、法定の項目に限定しています。ここに列挙されていない事項は原則として広告できません。したがって、医療広告の審査は「禁止事項に当たるか」の前に「広告可能事項に当たるか」から始まります。
「限定解除」の4要件
もっとも、ウェブサイトのように患者が自ら求めて閲覧する媒体では、一定の要件を満たせば広告可能事項の限定が解除されます(医療法施行規則1条の9の2)。要件は、①患者が自ら求めて入手する情報(ウェブサイト、パンフレット等)であること、②問い合わせ先が明記されていること、③自由診療については、通常必要とされる治療内容・費用・治療期間・回数が記載されていること、④自由診療については、主なリスク・副作用等が記載されていること、の4つです。美容医療クリニックのウェブサイトの多くは、③④の記載が不十分なために、限定解除の要件を満たしていません。
禁止される広告の類型
限定解除の要件を満たしても、次の広告は禁止です(医療法6条の5第1項・2項、施行規則1条の9)。①虚偽広告、②比較優良広告(「県内No.1」「最高の医療」「日本有数」など他の医療機関との比較・最上級表現)、③誇大広告(「◯◯を即日完治」「99%の患者が満足」など)、④公序良俗に反する広告、⑤治療内容・効果に関する患者等の主観的な体験談、⑥治療前後の写真で誤認させるおそれのあるもの(第14講)。医療の分野では、とくに治療内容・効果に関する主観的な体験談が、限定解除の要件を満たしても広告できない点に注意が必要です。
美容医療に特有の問題
美容医療は自由診療が中心であり、「◯◯円〜」という最低価格の強調、「今だけモニター価格」といった二重価格、「切らない」「ダウンタイムなし」といった安全性の保証表現、SNSでの症例写真の投稿、インフルエンサーによる「体験レポート」など、医療法・景品表示法・薬機法(医薬品・医療機器の未承認広告)が重なる論点が集中します。厚生労働省は美容医療に関する広告監視(ネットパトロール事業)を継続しており、令和6年以降、美容医療の適正化に向けた制度検討も進んでいます。
2026年3月30日の医療広告等ガイドライン改正では、医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)によるオンライン診療関係の見直しを踏まえ、オンライン診療受診施設に関する広告の考え方等が追加・整理されました。同日、厚生労働省は「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」も公表しています。美容医療を含むウェブ広告を審査する際は、現行のガイドライン、Q&A及び事例解説書を確認する必要があります。
景品表示法も同時に適用される
医療機関は医療法だけでなく景品表示法の名宛人でもあります。令和6年6月のステルスマーケティング規制による初の措置命令は、医療法人が患者にGoogleマップの口コミ投稿を依頼した事案でした。医療広告ガイドライン違反は都道府県の指導・命令、景品表示法違反は消費者庁の措置命令という二本立てで執行されます。
実務ポイント
・医療広告は「広告できる事項」が限定列挙。ウェブサイトは限定解除4要件(費用・リスク等の記載)を満たすことが前提。
・治療内容・効果に関する患者等の主観的な体験談は、限定解除の要件を満たしても広告できない。比較優良広告も禁止される。
・美容医療は医療法・景品表示法・薬機法の三重規制。口コミ依頼はステマ規制で措置命令の実例あり。
作成日付:2026年9月14日