「使用前」「使用後」を並べた写真は、言葉よりも強い「効果の主張」です。それゆえ、景品表示法・薬機法・医療法のいずれも、ビフォーアフター写真を厳しく扱います。結論は分野によって異なりますが、共通するのは「写真が示す効果を証明できるか」という一点です。
景品表示法 ― 写真は「表示」であり、根拠が要る
ビフォーアフター写真は、それ自体が「この商品を使えばこう変わる」という優良性の表示です。したがって、①写真が示す変化が商品の効果によるものであること、②同様の変化が一般消費者にも生じること、を合理的根拠で実証できなければ優良誤認です。不実証広告規制(第10講)の資料提出要求は、写真についても及びます。実務上の落とし穴は、①ビフォーとアフターで撮影条件(照明・角度・化粧・表情・姿勢・服装)が異なる、②画像加工・レタッチをしている、③商品以外の要因(食事制限・運動・施術)が介在している、④特別に効果の出た一例をあたかも典型例のように示している、といったケースです。「※画像はイメージです」「※個人の感想です」の注記では、写真の効果主張は打ち消せません(第9講)。
化粧品 ― 原則として使えない
医薬品等適正広告基準は、化粧品について、使用前後の写真・図面等を用いて効能効果や安全性を保証する表現を原則として認めていません。化粧品が表現できる効能効果は56項目に限られ(第12講)、写真で示せるのは「メーキャップ効果」の範囲や、承認・許容された効能効果の範囲内に限られます。たとえばファンデーションの塗布前後で「シミがカバーされる」ことを示す写真は可能ですが、スキンケア化粧品の使用前後で「シミが薄くなった」ように見える写真は、承認範囲を超える効能効果の保証表現として原則不可です。
健康食品 ― リスクが高い
「飲む前」「飲んで3か月後」といった体型写真は、健康食品広告で問題となりやすい表示です。写真が示す痩身効果を、食事制限・運動なしで一般に生じるものとして実証できない場合には、景品表示法上の優良誤認表示や健康増進法65条の誇大表示に該当するおそれがあります。
医療 ― 「詳細な説明」があれば可能
医療広告では、治療前後の写真は「患者を誤認させるおそれがある」場合に禁止されます(医療法施行規則1条の9第2号)。医療広告ガイドラインは、写真に治療内容・費用・治療期間・回数・主なリスク・副作用等の詳細な説明を付した場合、誤認のおそれはないとして掲載を認めています。逆に、症例写真だけをSNSに投稿する行為は、限定解除の要件も詳細説明の要件も満たさず、違反となります。また、症例写真の加工、他院の症例の流用、患者の同意なき使用は、医療法とは別に肖像権・個人情報保護法の問題を生じます。
実務上の対応
実務上のリスクを抑える観点から、①撮影条件(日時・場所・照明・カメラ・距離・角度・化粧の有無)を記録し、可能な限り同一条件で撮影する、②画像加工の有無と内容を管理する、③写真が典型的な効果であるかを確認するためのデータを保存する、④商品以外の要因(食事・運動・施術)があれば明示する、⑤被写体から利用目的・媒体・期間等を明確にした同意を取得する、といった対応を推奨します。これらはすべての広告について一律に要求される法定要件ではなく、商品・媒体・表示内容・根拠資料に応じて必要な対応を判断する必要があります。
実務ポイント
・ビフォーアフター写真は「言葉より強い効果の主張」。写真が示す効果の根拠が要る。
・化粧品は原則不可、健康食品は極めて高リスク、医療は詳細説明を付せば可。
・撮影条件、加工の有無、典型性を示すデータ、商品以外の要因、被写体の同意は、ビフォーアフター写真を利用する際の重要な確認事項。
作成日付:2026年9月14日