措置命令(景品表示法7条1項)は、広告規制における最も典型的な制裁です。命令自体に金銭的負担はありませんが、社名・商品名・違反内容が消費者庁のウェブサイトで公表され、報道され、検索結果に長期間残ります。この講では、端緒から命令、そしてその後までの流れを追います。
端緒 ― どこから発覚するか
調査の端緒は、①一般消費者や競合他社からの申告(消費者庁のウェブフォーム、都道府県の窓口)、②消費者庁・都道府県による広告監視(ネット監視の外部委託を含む)、③国民生活センター・消費生活センターへの相談情報、④他の事件の調査過程での発見、⑤報道やSNSでの炎上、などです。近年は、競合他社が申告書を提出する例が見られますので、「誰かに見られている」前提で広告を出す必要があります。
調査 ― 任意調査から報告命令へ
まず前述のとおり任意の報告書の提出と事情聴取から始まり、調査が進んだ段階で優良誤認が問題となる事案では、7条2項の資料提出要求が出されます(第10講)。調査期間は事案により数か月から1年以上で、この間、事業者側は根拠資料の提出、表示の経緯説明、社内体制の説明、是正措置の報告などを行います。
弁明の機会の付与
措置命令は不利益処分ですので、行政手続法に基づき、事前に弁明の機会が付与されます。消費者庁から予定される措置命令の内容と理由等が示され、期限までに弁明書と証拠を提出することができます。弁明により結論が変更されるかは事案によりますが、少なくとも①違反とされる表示の範囲、②対象商品・期間、③表示の意味内容の認定、④命令の文言等について争点を整理し、反論・立証すべき点を明確にすることが重要です。後に取消訴訟等で争う可能性がある場合にも、この段階から事実関係と法的主張を整理しておく必要があります。
措置命令の内容
措置命令で命じられるのは、典型的には、①当該表示が優良誤認・有利誤認表示であったことを一般消費者に周知徹底すること(新聞広告や自社サイトでの掲載)、②再発防止策を講じ、役員・従業員に周知すること、③今後同様の表示を行わないこと、④命令に基づく措置の実施を消費者庁に報告すること、です。
公表とその影響
措置命令は、消費者庁のウェブサイトで事業者名・商品名・違反内容等が公表されるのが通常であり、報道や取引先・ECモールの対応に波及することがあります。なお、課徴金の算定率が4.5%に加算されるかどうかは、措置命令を受けたこと自体で決まるものではありません。法8条5項・6項により、基準日から遡って10年以内に確定した課徴金納付命令を受け、かつ、その課徴金納付命令の日以後に課徴金対象行為をしていた場合など、所定の要件を満たすときに4.5%が適用されます。他方、確約手続については、調査開始通知等の最も早い日から遡って10年以内に確定した法的措置(措置命令又は課徴金納付命令)を受けたことがある場合など、運用基準上、対象外となる場合があります。
争う場合 ― 取消訴訟と執行停止
措置命令に不服がある場合、審査請求(行政不服審査法)または取消訴訟(行政事件訴訟法、処分を知った日から6か月以内)を提起できます。ただし、訴訟提起によって命令の効力は当然には停止しないため(執行不停止の原則)、必要に応じて執行停止の申立てを検討します。表示の意味内容の認定や不実証広告規制の適用前提自体が争点となることもあります。糖質カット炊飯器「LOCABO」の表示をめぐるforty-four事件では、東京地裁令和7年7月25日判決に続き、東京高裁令和8年6月10日判決も国の主張を認めず、消費者庁が上訴しなかったため判決が確定しました。この事例は、不実証広告規制の適用においても、前提となる「表示」の意味内容の認定自体を争い得ることを示すものです。
実務ポイント
・措置命令の実質的制裁は「公表」。金銭より信用の毀損が大きい。
・弁明の機会は命令の撤回よりも、対象表示・商品・期間の限定に使う。それが課徴金額に直結する。
・取消訴訟を提起しても命令の効力・公表は止まらない。争うかどうかは公表後の実益で判断する。
作成日付:2026年9月15日