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『スポーツ・エンタメ団体紛争32講 ― 選手・団体・事務所がもめた日の教科書 ―』【第4講】

定款・規約・ガイドライン ― どれが「団体の法」として効くのか

団体の紛争では、「規程違反だ」「いや、その規程は無効だ」「上位団体のガイドラインに反する」といった主張が飛び交います。団体には、定款、各種規程、細則、内規、ガイドライン、上位団体や国際団体の規則と、多層的なルールが存在します。どのルールが、誰に対して、どのような効力を持つのかを整理しておかないと、議論がかみ合いません。

ルールの階層

法的な効力関係は、各ルールの根拠や制定主体、定款・加盟規程への取り込み方によって異なりますが、団体内部のルールを整理する際には、概ね、①法令(特に強行規定)、②定款、③権限ある機関が制定する規程、④細則・内規、⑤ガイドライン・通知という層を意識すると理解しやすくなります。下位のルールが上位の法令・定款等に反する場合には、その効力が否定される可能性があります。一般社団法人の場合、社員総会決議の内容が法令に違反すれば決議無効確認(一般法人法265条2項)、定款に違反すれば決議取消し(266条1項2号)の対象となります。

規程は誰を拘束するのか

団体の役員・社員は、定款と規程に拘束されます。問題は、社員ではない登録選手・指導者・加盟団体です。これらの者が規程に拘束される根拠は、多くの場合、登録や加盟の申込みの際に、規程を遵守することに同意したという合意にあります。したがって、登録時に規程の遵守が明示されているか、規程の内容を知り得る状態にあったかが重要です。多数の登録者に一律に適用される登録規程については、民法の定型約款(548条の2以下)に当たり得るとする見解もあり、その場合には、相手方の利益を一方的に害する条項の効力や、規程変更の合理性・周知が問われる可能性があります。

「公表されていない内規」で処分できるか

懲戒処分の根拠が、選手に周知されていない内規や、処分の直前に制定された規程である場合、処分の有効性には重大な疑義が生じます。処分の根拠となるルールは、行為の時点で存在し、対象者が知り得る状態にあったことが求められると考えるのが、適正手続の観点から自然です。JSAAの仲裁判断でも、団体の決定が規則に違反していないか、手続に瑕疵がないかが審査の中心となっています(第27講)。

ガイドラインの位置づけ ― ソフトローの効き方

スポーツ庁のガバナンスコードや、統括団体のガイドラインは、それ自体が法的拘束力を持つものではありません。しかし、統括団体による適合性審査、補助金・助成の交付、スポンサーの判断などを通じて、事実上強い影響力を持ちます。また、団体が自らの規程でガバナンスコードの遵守を定めていれば、その限りで団体内部の拘束力を持ちます。紛争の場面では、ガバナンスコードに沿った運営がされていたかが、団体の判断の合理性を評価する材料として用いられることがあります。エンタメ分野の芸能指針も、独禁法の解釈を示すものとして、同様に実務上の基準となっていくと考えられます。

国際ルールの取り込み

国際競技連盟の規則や世界アンチ・ドーピング規程などは、国内団体の定款・規程で「これに従う」と定めることで、国内の選手にも適用されます。国内規程と国際規則が矛盾する場合、どちらが優先するかは国内規程の定め方次第であり、紛争になりやすい点です。

実務上の確認手順

紛争に関わる規程を確認する際は、①制定・改正の手続(どの機関が決議したか、定款上の権限があるか)、②施行日と経過措置(遡及適用になっていないか)、③周知の方法(ウェブ公開・登録時の同意)、④上位規範との整合、⑤版の管理(処分時点で有効だった版はどれか)を順に確認します。規程集が最新版しか残っておらず、処分時点の版が分からないという事態は、団体側にとって大きな弱点になります。

実務ポイント

・ルールの序列は、法令>定款>規程>細則・内規>ガイドライン。上位に反する下位ルールは効力を否定され得る。

・登録選手等に規程が適用される根拠は、登録・加盟時の同意や定款・規程への組入れ等によることが多い。規程の周知と同意・登録の記録が重要。

・処分の根拠規程は、行為時点で存在し周知されていたものであることが求められる。版の管理を徹底する。

作成日付:2026年9月28日

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