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『スポーツ・エンタメ団体紛争32講 ― 選手・団体・事務所がもめた日の教科書 ―』【第7講】

社員総会の招集手続と「会員資格」の争い

一般社団法人の紛争で意外に多いのが、「そもそも誰が社員(議決権を持つ会員)なのか」という争いです。会員名簿が整備されていない、会費を滞納した会員の扱いが決まっていない、加盟団体の代表者が交代したのに届出がない――こうした状態で社員総会を開けば、招集通知の宛先と議決権の数そのものが争点になります。

「会員」と「社員」の区別

多くの団体は、正会員・賛助会員・名誉会員・登録会員などの会員区分を設けていますが、一般法人法上の「社員」(社員総会で議決権を持つ者)が誰であるかは定款の定めによります。定款上、社員を正会員に限定している団体では、登録選手や賛助会員は社員ではありません。また、多数の会員を抱える団体では、会員の中から選出された代議員のみを社員とする「代議員制」がとられることがあり、この場合は代議員選挙の公正さが社員総会の正統性を左右します。

招集手続の基本

社員総会は、理事(理事会設置法人では理事会の決定に基づき)が招集し、原則として会日の1週間前(理事会非設置法人では定款で短縮可)までに社員に通知します(一般法人法38条・39条)。総社員の議決権の10分の1以上(定款で引下げ可)を有する社員は、理事に対し社員総会の招集を請求でき、遅滞なく招集されないときは裁判所の許可を得て自ら招集することもできます(37条)。理事会と対立する会員側にとって、この招集請求権は重要な手段です。

会員資格をめぐる典型的な争点

(1)会費滞納による資格喪失:定款に「会費を◯年以上滞納したときは資格を喪失する」と定めがあれば、その要件を満たせば当然に資格を失いますが、要件の充足(滞納期間の起算点、督促の有無)が争われます。定めがない場合、滞納を理由に一方的に議決権を否定することはできません。

(2)入会の承認:入会を理事会の承認事項とする団体で、対立陣営の関係者の入会申込みが承認されない、あるいは社員総会直前に一方の陣営の支持者が大量に入会するといった事態が生じます。入会の承認は団体の裁量に委ねられる部分が大きいものの、定款所定の要件を満たす申込みを合理的な理由なく拒否することや、総会の結果を左右する目的で入会承認を操作することは、決議の公正を害するとして争われる可能性があります。NPO法人では、社員資格の得喪に不当な条件を付さないことが要件とされています(第3講)。

(3)加盟団体の代表者:都道府県協会等が社員となっている場合、誰がその団体を代表して議決権を行使するかが争いになります。加盟団体自体の内部紛争が、上位団体の社員総会に持ち込まれる構図です。

争い方

招集通知の漏れや、社員でない者の議決権行使、社員である者の議決権行使の拒否は、決議取消事由(一般法人法266条1項1号)となり得ます。社員の地位そのものを争う場合は、社員たる地位の確認訴訟を提起し、社員総会が迫っていれば、議決権行使を認めさせる仮処分や、社員総会の開催禁止の仮処分が検討されます。

予防の要は「社員名簿」

一般社団法人は社員名簿を作成し備え置かなければなりません(31条・32条)。社員名簿の正確性が、総会の正統性を支えます。①会員区分と社員の範囲を定款で明確にする、②入会・退会・資格喪失の要件と手続を規程化する、③社員名簿を定期的に更新し、変更の記録を残す、④加盟団体の代表者の届出を義務づける、という基本的な管理が、最大の紛争予防策です。

実務ポイント

・「会員」と一般法人法上の「社員」は別。定款で議決権者の範囲を確認する。

・会員側は招集請求権(議決権10分の1以上)、手続の瑕疵は決議取消しの訴え(3か月以内)で争う。

・社員名簿の正確性が総会の正統性を支える。入退会・資格喪失の要件を規程化する。

作成日付:2026年9月28日

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