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『スポーツ・エンタメ団体紛争32講 ― 選手・団体・事務所がもめた日の教科書 ―』【第17講】

未成年者・学生アスリートの契約と保護者の関与

子役、ジュニアアイドル、ユース年代の有望選手、学生アスリート。若年の選手・実演家の契約には、未成年者保護の法律と、保護者自身の利害という二つの層が重なります。とりわけ、保護者が事務所の経営者やマネージャーを兼ねる場合、子どもの利益と保護者の利益が衝突することがあります。

未成年者の契約の基本

令和4年(2022年)4月から成年年齢は18歳です。18歳未満の者が法律行為をするには、原則として法定代理人(通常は親権者)の同意が必要で、同意のない契約は取り消すことができます(民法5条)。したがって、18歳未満の実演家・選手とのマネジメント契約や選手契約は、親権者の同意を得て、あるいは親権者が法定代理人として締結します。18歳・19歳の者は成年として単独で契約でき、未成年者取消権は使えなくなりました。事務所側は18歳で契約を見直す機会を、本人側は成年に達した時点で契約内容を改めて確認する機会を持つことが望まれます。

労働法の保護

未成年者が労働者として働く場合、労働基準法の年少者保護規定が適用されます。①原則として満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでは使用できませんが、映画の製作・演劇の事業については労働基準監督署長の許可を得て使用できるなどの例外があります(56条)。②親権者や後見人が未成年者に代わって労働契約を締結することは禁止され(58条1項)、③未成年者は独立して賃金を請求でき、親権者が代わりに受け取ることはできません(59条)。④深夜業も原則として禁止されています(61条、演劇の事業に使用される児童等について特例あり)。マネジメント契約が雇用と評価されるか否かにかかわらず、これらの規定の趣旨は実務上の指針になります。

保護者と子の利益相反

保護者が事務所の経営者である場合、事務所と子どもの間の契約は、親権者が一方で子を代理し、他方で自ら(または自社)が相手方となる構造になり得ます。親権者と子の利益が相反する行為については、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければならず(民法826条)、これを欠いた行為は無権代理となり得ます。形式的に判断すべきとされる点にも注意が必要です。また、子の報酬を保護者が管理する場合、財産管理に関する注意義務(827条)が問題となり、成年に達した後に報酬の使途をめぐって親子間で紛争になる例もあります。

学生アスリートに特有の問題

学生アスリートは、学校・部活動・学生競技団体の規則の下にあります。特待生・奨学金制度と退部時の返還義務、学生競技団体の登録規程と転学時の出場制限、プロ・実業団との接触に関するルール(例:日本学生野球憲章)、SNSでの発信や肖像の利用などが問題となります。部活動の地域移行が進む中、学校とクラブ・地域団体のいずれが責任主体となるのかも、事故やハラスメントの場面で重要な問題になっています。

事務所・団体側の配慮

①契約締結時に親権者の同意を書面で取得し、本人にも年齢に応じた説明を行う、②報酬の支払先と管理方法を明確にする、③学業との両立、就労時間、深夜の活動を管理する、④保護者と事務所の利益相反がある場合は特別代理人や第三者の関与を検討する、⑤18歳到達時に契約内容を本人と確認する。これらは、将来の紛争を防ぐとともに、子どもの権利を守るための基本です。

実務ポイント

・18歳未満の契約は親権者の同意が原則。同意のない契約は取消し可能(民法5条)。18歳到達時に契約を見直す。

・親権者が代わって労働契約を結ぶことは禁止、未成年者は賃金を独立して請求できる(労基法58条・59条)。

・保護者が事務所を経営する場合は利益相反(民法826条)に注意し、特別代理人等の関与を検討する。

作成日付:2026年9月28日

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