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『スポーツ・エンタメ団体紛争32講 ― 選手・団体・事務所がもめた日の教科書 ―』【第18講】

肖像権・パブリシティ権は誰のものか

選手やタレントの顔写真・氏名・サイン・声は、グッズ、広告、ゲーム、トレーディングカードなど、大きな経済的価値を生みます。その価値をコントロールする権利は、本人に帰属するのが原則ですが、契約によって団体・球団・事務所に利用権限が与えられていることが多く、その範囲をめぐって紛争が生じます。

肖像権とパブリシティ権

肖像権は、みだりに自己の容ぼう等を撮影・公表されない人格的な利益です。パブリシティ権は、肖像等が持つ顧客吸引力を排他的に利用する権利で、最高裁は、肖像等を無断で使用する行為がパブリシティ権を侵害するのは、①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、③肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とする場合であるとしました(最判平成24年2月2日・ピンク・レディー事件)。パブリシティ権は人格権に由来する権利とされ、その譲渡性や相続性については議論があります。

契約による利用権限の付与

本人に帰属する権利であっても、契約によって第三者に利用を許諾することはできます。プロ野球では、統一契約書の条項に基づき、球団が選手の氏名・肖像の商業的利用について第三者に許諾する権限を有するかが争われ、知財高裁は、この条項が球団に選手の氏名・肖像の使用許諾権限を与えるものであると解釈しました(知財高判平成20年2月25日、上告不受理により確定)。芸能事務所との契約でも、在籍中の肖像等の利用権限を事務所に帰属させる条項が一般的です。

争点となる場面

(1)利用範囲:「球団の宣伝目的」に限るのか、第三者への商品化許諾まで含むのか。契約の文言と、当事者の合理的意思解釈が争点となります。

(2)対価の配分:肖像の商業利用から得られる収入の配分(第20講)。

(3)契約終了後:退団・退所後に、在籍中に撮影された写真・映像を使い続けることができるか。在籍中の作品(番組・写真集・CD)の販売継続は一般に認められやすい一方、新たな広告や商品化への利用には、改めて本人の許諾が必要と考えるのが自然です。芸能指針も、実演家自身の過去の実演の利用について配慮を求めています。

(4)団体と個人スポンサーの競合:代表チームの公式スポンサーと、選手個人のスポンサーの競合。オリンピック憲章規則40(大会期間中の選手の肖像等の広告利用に関する規律)や各国内オリンピック委員会のガイドラインが問題となります。

(5)SNS・生成AI:ファンによる写真の無断転載、選手・実演家の顔や声を模した生成AIコンテンツ。パブリシティ権・肖像権・名誉権の侵害として対応することになりますが、侵害の成否は使用の態様によります。

権利の帰属を契約で整理する

選手・実演家、団体・事務所の双方にとって、①利用主体(誰が使えるか)、②利用目的(宣伝・商品化・広告)、③利用媒体、④第三者への許諾の可否、⑤対価と配分、⑥契約終了後の扱い(既存作品の販売継続、新規利用の禁止)、を契約で明確にしておくことが、紛争予防の要です。

実務ポイント

・パブリシティ権侵害は「専ら顧客吸引力の利用を目的とする場合」(ピンク・レディー事件の3類型)。

・契約で球団・事務所に利用権限が与えられていることが多い(プロ野球肖像権事件)。範囲は契約の文言次第。

・利用主体・目的・媒体・再許諾・対価・終了後の扱いの六点を契約で明記する。

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