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『広告規制24講 ― 「その表示、大丈夫ですか」の教科書 ―』【第19講】

自主申告・返金措置はどこまで使えるか

「表示に問題があることに気づいた。行政が動く前にどうすべきか」。景品表示法には、事業者が自ら是正に動くことを促す三つの制度があります。自主申告による課徴金減額(9条)、返金措置による課徴金控除(10条〜)、そして令和6年に導入された確約手続(26条〜)です。それぞれの使いどころと限界を整理します。

自主申告 ― 50%減額の条件

消費者庁が調査に着手する前に、事業者が違反の事実を自ら消費者庁に報告した場合、課徴金額の50%が減額されます(9条)。条件は、①課徴金対象行為に該当する事実を報告すること、②消費者庁の調査開始(報告命令・立入検査等)の前であること、③その事業者が「調査があったことにより課徴金納付命令があるべきことを予知して」した報告でないこと、です。すなわち、行政が動いたことを察知してから慌てて報告しても減額されません。

自主報告制度を利用した場合の法定効果は、所定の要件を満たすと課徴金額が50%減額されることです。自主報告をしたこと自体から、措置命令・公表が必ず行われる、あるいは課徴金納付命令が必ず出ると決まるわけではなく、それぞれの要件は別途判断されます。したがって、違反の可能性、調査着手の有無、対象売上、根拠資料、是正状況等を踏まえて、報告の要否と時期を速やかに検討する必要があります。課徴金額が大きくなり得る事案では、50%減額の実益が大きい場合があります。

返金措置 ― 消費者への返金で課徴金を減らす

課徴金対象期間中に対象商品を購入した一般消費者に対し、購入額の3%以上を返金する計画(返金措置計画)を作成し、消費者庁の認定を受けて実施した場合、返金した額が課徴金額から控除されます(10条〜11条)。返金総額が課徴金額以上であれば、課徴金は課されません。令和6年改正で、返金の方法として金銭だけでなく電子マネー等の第三者型前払式支払手段も認められました。

返金措置の実務上の課題は、①購入者の特定(EC販売なら顧客データがあるが、店頭販売では困難)、②通知・返金の事務コスト、③返金することで「違反を認めた」と受け取られる風評、です。他方、返金は顧客との関係修復の機会にもなり、課徴金として国庫に納めるより顧客に返す方が事業上合理的という判断もあり得ます。

確約手続 ― 処分を受けずに終結する新制度

令和6年10月1日施行の確約手続は、独占禁止法にならって導入されたもので、消費者庁が違反の疑いがあると認めた事業者に通知を行い、事業者が60日以内に是正措置計画を申請し、消費者庁が「措置の内容が十分で、確実に実施される」と認定すれば、措置命令・課徴金納付命令を受けないという制度です(26条〜33条)。

確約手続の制度上の効果は、認定された違反被疑行為について、原則として措置命令・課徴金納付命令が行われないことです。ただし、①認定を受けた事業者名や確約計画の概要等が公表されることがある、②調査開始通知等の最も早い日から遡って10年以内に確定した法的措置(措置命令又は課徴金納付命令)を受けたことがある場合や、根拠がないことを当初から認識しながらあえて表示したなど悪質かつ重大な事案は、運用基準上、確約手続の対象外となる、③確約計画には周知・再発防止策・返金等が含まれ得る、④計画を履行しなければ認定が取り消され、通常の調査手続が再開され得る、といった点に注意が必要です。

三つの制度の使い分け

行政の調査が始まる前に問題に気づいた場合には、自主報告や返金措置の利用可能性を検討します。調査を受けている段階でも、確約手続通知が行われる前に、調査対象行為が確約手続の対象となるかの確認や、確約手続に付すことを希望する旨を消費者庁に相談することができます。ただし、確約手続は、消費者庁が当該事案を確約手続に付すことが適当と判断して通知することにより開始するため、事業者が一方的に移行を選択できる制度ではありません。いずれの制度でも、表示の是正、再発防止、必要に応じた返金等の実効性ある対応を具体的に示せるかが重要です。

実務ポイント

・自主報告は、調査開始前であることに加え、「課徴金納付命令があるべきことを予知して」行った報告でないことなど、9条所定の要件を満たす必要がある。

・返金措置は課徴金を消費者への返金に置き換える制度。購入者の特定可能性が成否を分ける。

・確約手続は、消費者庁が適当と判断して通知した場合に利用できる制度。調査中でも、通知前に対象可能性や利用希望について相談することができる。

作成日付:2026年9月15日

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