ホーム連載コラム非上場株式27講 ─ 第12講

『非上場株式27講 ― 売れない株の教科書 ―』【第12講】

株式を買い集める技術 ― 任意交渉・自己株式取得の実務と落とし穴

集約の基本は「任意の買取り」

分散した株式を集約する王道は、少数株主から任意に買い取ることです。強制的な手法(第14講のスクイーズアウト)に比べ、手続コストが低く、感情的対立も残りにくい。問題は、①誰が買うか、②いくらで買うか、③どう交渉するか、です。

誰が買うか ― 3つの受け皿

買主の選択肢は、(a) オーナー個人・後継者、(b) 会社自身(自己株式取得)、(c) 持株会社・資産管理会社の3つです。それぞれ手続と税務が大きく異なります。

受け皿 手続 税務上の主なポイント
(a) オーナー個人 譲渡承認(会社法136条以下)+売買契約 売主に譲渡所得課税(申告分離20.315%)。時価と乖離した価格だと贈与税・みなし譲渡の問題(所基通59-6等)
(b) 会社(自己株式) 特定の株主からの取得は総会特別決議+他の株主の売主追加請求権に注意(会社法156条・160条・309条2項2号)、財源規制(461条) 売主にみなし配当課税(総合課税・最高約55%)が生じ得る。ただし相続取得株式の特例(租税特別措置法9条の7)あり
(c) 持株会社等 譲渡承認+売買契約 買主法人の取得価額・時価の乖離に法人税課税リスク

自己株式取得は便利に見えますが、①分配可能額の範囲でしか取得できない(461条)、②特定の株主から買う場合、他の株主が「自分も売主に加えろ」と請求できる(160条3項。定款で排除可能〔164条〕)、③売主側にみなし配当課税が生じ手取りが激減し得る、という三重の制約があります。「会社が買えばいい」という安易な設計は、税負担の説明を怠ったとして売主との紛争を再燃させることすらあります。

いくらで買うか ― 「安すぎる買取り」の代償

会社側には1円でも安く買いたい誘惑がありますが、著しく低廉な価格での買取りは、①売主側が後に錯誤・詐欺等を主張するリスク、②税務上のみなし贈与(相続税法7条)・受贈益課税のリスク、③他の株主への説明がつかなくなるリスクを生みます。逆に高すぎれば、買主側の贈与税・寄附金課税の問題が生じます。

実務では、税務評価(財産評価基本通達ベース)と実質価値(DCF等)の間のどこに着地させるかを、当事者の属性・課税関係・交渉力を踏まえて設計します。価格の設計は法務と税務の複合問題であり、弁護士と税理士が連携して初めて安全に完結します。当事務所は、税理士・公認会計士との協働による株式集約スキームの設計・交渉代理を数多く手がけています。

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