遺産分割が終わるまで、株は「みんなのもの」
オーナー社長が遺言なく亡くなると、保有株式は相続人全員の準共有(民法898条、264条)になります。ここで極めて重要なのは、法定相続分に応じて当然に分割されるのではない、ということです。相続人が妻と子2人なら、株式の1株1株が「妻2分の1・子各4分の1」の持分による共有状態になります。
準共有株式の議決権は誰が行使するのか
会社法106条本文は、共有株式について権利を行使するには、権利行使者1名を定めて会社に通知しなければならないと定めます。そして判例上、権利行使者の指定は共有持分の過半数で決定できるとされています。つまり、法定相続分で過半数を押さえた相続人グループが、株式全部の議決権を掌握し得るのです。
さらに最高裁平成27年2月19日判決(民集69巻1号25頁)は、権利行使者の指定・通知を欠いたまま共有者の一人がした議決権行使について、会社が同意(106条ただし書)しても、その行使が民法の共有規定(持分過半数の決定)に従っていない限り適法にならないと判断しました。会社が「都合のよい相続人」の議決権行使を認めて総会を乗り切ろうとしても、決議取消し(831条1項1号)のリスクを免れないということです。
図解:オーナー死亡後に起こること
全株式が相続人の準共有に
民法898条・264条
会社側・後継者側の備え
この事態を避ける最善策は、遺言と生前の株式移転です。遺言で後継者に株式を集中させれば準共有は生じません(遺留分の問題は残ります。第19講参照)。また、経営承継円滑化法の遺留分特例(除外合意・固定合意)や、種類株式・属人的株式の活用(第9講)も有力な選択肢です。
すでに準共有が生じてしまった場合、会社運営を止めないためには、権利行使者の指定をめぐる相続人間の調整、場合によっては遺産分割前の一部分割や調停の活用が必要になります。ここは会社法と相続法が正面から交錯する領域であり、どちらか一方の知見だけでは対応できません。両分野を日常的に扱う弁護士の関与が不可欠です。