少数株主の現実 ― 配当なし、売り先なし、発言力なし
ここからは視点を変え、少数株主の側から非上場株式を見ていきます。非上場会社の少数株主の多くは、①配当はゼロか僅少、②役員報酬という果実にもあずかれず、③譲渡制限のため売却先も見つからない、という「塩漬け」状態に置かれています。他方で、その株式の実質価値は、会社の成長とともに確実に膨らんでいる。この価値を現実の金銭に換える適法なルートは、大きく5つあります。
図解:換価5ルートの全体像
会社の任意の自己株式取得・スクイーズアウトへの対応
会社側から排除を仕掛けられた場合に、価格決定申立てで増額を狙う
解散の訴え・その他の圧力手段(833条)+交渉
デッドロック等の限定場面。認容例は少ないが交渉材料にはなる
どのルートを選ぶかは「持株比率×会社の状況×時間軸」
ルート選択は、①持株比率(3%あれば帳簿閲覧で情報収集が可能。第7講)、②会社の財務状況(分配可能額がなければ会社は買い取れません)、③相続・組織再編等のイベントの有無、④かけられる時間とコスト(第25講)で決まります。
見落とされがちですが、情報収集が全ルートの出発点です。決算書すら持っていない少数株主は、まず定時総会での計算書類の閲覧(442条3項)や会計帳簿閲覧請求(433条)で会社の実力を把握するところから始めます。株式の価値が分からないまま交渉のテーブルに着くことは、値札のない店で買い物をするのと同じです。
買取業者への売却という「6つ目のルート」の危うさ
なお、近時は「あなたの非上場株式を買い取ります」と謳う業者への売却という選択肢が宣伝されています。しかし、大阪高裁令和6年7月12日判決(判タ1530号86頁)は、そのようなビジネスモデルの一類型について弁護士法73条違反により売買契約自体を無効と判断しました。売ったはずの株主の地位が復活し、代金の清算問題まで生じかねないこのルートの危険性は、第26講で1回分を使って詳述します。