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『非上場株式27講 ― 売れない株の教科書 ―』【第22講】

【少数株主側】会社が動いた瞬間がチャンス ― 反対株主の株式買取請求権

「公正な価格」での退出保障

会社が合併・会社分割・株式交換等の組織再編(会社法785条・797条・806条)、事業譲渡(469条)、譲渡制限を新設する定款変更(116条1項1号・2号)、株式併合(182条の4)といった重要な変更を行うとき、これに反対する株主には、自己の株式を**「公正な価格」で買い取ることを会社に請求する権利**が与えられます。

少数株主にとってこの制度が重要なのは、第4講で解説したとおり、買取請求ルートの「公正な価格」では非流動性ディスカウントが許されない(最決平成27年3月26日民集69巻2号365頁)からです。同じ株式でも、譲渡承認請求ルート(144条)よりも2〜3割高い価格が期待できる場面があるということです。

行使の手順と注意点

買取請求権の行使には厳格な手順があります。①総会に先立って会社に反対の意思を通知し、②総会で現に反対の議決権を行使した上で(議決権を有する場合)、③効力発生日の20日前から前日までの間に買取請求を行う(785条2項・5項、116条5項等)。この三段構えを一つでも欠くと権利を失います。また、買取請求後は会社の承諾がない限り撤回できません(785条7項等)。

価格協議が30日以内に調わなければ、その後30日以内に裁判所へ価格決定の申立てをします(786条2項、117条2項、182条の5第2項)。

「イベント待ち」の受動性をどう克服するか

このルートの弱点は、会社側が組織再編等のアクションを起こさない限り使えない受動性にあります。しかし実務では、①事業承継に伴う持株会社化・グループ再編、②スクイーズアウト目的の株式併合、③M&Aに伴う株式交換など、非上場会社でも買取請求のトリガーとなるイベントは相当な頻度で発生しています。

少数株主側の実務対応は、株主総会の招集通知を絶対に読み飛ばさないことに尽きます。「定款一部変更の件」「株式併合の件」といった議案の中に、買取請求権のトリガーが潜んでいます。招集通知が届いたら、総会前に専門家に持ち込む。それだけで、選べる手続の幅がまるで変わります。

会社側から見れば、組織再編の設計時に「反対株主が買取請求をしてきたら、いくらの支払リスクがあるか」を織り込んでおくことが必須です。買取請求リスクの見積もりを欠いた組織再編は、想定外のキャッシュアウトで計画全体を頓挫させかねません。

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