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『非上場株式27講 ― 売れない株の教科書 ―』【第24講】

50対50で会社が止まった ― デッドロックと解散の訴えという最終兵器

「平等」が生む最悪の機能不全

共同創業者2人で50%ずつ。兄弟で半分ずつ相続。――美しい平等に見えるこの資本構成は、会社法上、最悪の紛争構造です。株主総会の普通決議には議決権の過半数が必要(309条1項)ですから、50対50で対立すれば、取締役の選任すら決議できません。取締役会も2対2で割れれば同じです。役員の任期が満了しても後任を選べず、退任役員が権利義務者として居残り(346条1項)、意思決定が凍結されたまま会社だけが時を刻む。これがデッドロックです。

打開策の序列 ― 交渉、買取り、そして解散

第1段階:交渉による資本関係の解消。 一方が他方の株式を買い取って50対50を解消するのが本筋です。ここでも争点は結局「1株いくらか」(第Ⅰ部)に帰着します。株主間契約にデッドロック解消条項(一方が価格を提示し、他方がその価格で「売るか買うか」を選べるオプション等)があれば、それが最優先で機能します(第10講)。

第2段階:法的手続による圧力。 帳簿閲覧(433条)、検査役選任(358条)、役員の責任追及(847条)、職務執行停止・職務代行者選任の仮処分など、相手の経営継続コストを高める手続を組み合わせ、交渉テーブルに引き戻します。

第3段階:会社解散の訴え(833条1項)。 議決権(または発行済株式)の10%以上を有する株主は、①会社が業務執行上著しく困難な状況に至り回復できない損害が生じるおそれがある等の事情があり、かつ②**「やむを得ない事由」**があるときに、裁判所に会社の解散を請求できます。長期にわたる株主間・役員間の対立で会社の意思決定が不能となり、打開手段が尽きた場合が典型です。

図解:デッドロック打開のロードマップ

50対50の対立発生

SHAにデッドロック条項あり

条項に従い強制的に解消第10講

条項なし

  • ①任意交渉(一方による買取り。価格算定が核心)
  • ②法的手続で圧力(閲覧・検査役・仮処分・責任追及)
③解散の訴え(833条)を提起 or 予告

認容 → 会社は清算へ

双方が事業価値を失う

実務の多数 → 「共倒れ」回避のため、審理の過程で株式買取り・会社分割等による和解的解決が成立

解散請求は「使うため」ではなく「終わらせるため」の武器

解散の訴えの認容例は多くありません。しかしこの手続の実務的な意味は、判決を取ることよりも、「このままなら双方が会社の価値を失う」という現実を相手に突きつけ、買取り・分社化などの出口合意を成立させるところにあります。核兵器は使わないことに意味がある、という比喩がしっくりくる制度です。

もっとも、脅しとして中途半端に振り回せば関係修復の余地を焼き払うだけです。解散請求を「いつ、どの温度で」持ち出すかは、事案全体の出口設計の中で慎重に決めるべき、高度に戦略的な判断です。デッドロック案件こそ、株主間紛争の全手続を知る弁護士の腕の見せどころだと考えています。

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