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『広告規制24講 ― 「その表示、大丈夫ですか」の教科書 ―』【第15講】

インフルエンサーに商品を紹介してもらうときの契約実務

ステルスマーケティング規制(第8講)の下では、インフルエンサーの投稿ミスの責任を負うのは広告主です。しかも、投稿されるのは広告主のサーバーではなく、インフルエンサーの個人アカウントです。広告主が自ら管理できない場所に、自らが責任を負う表示が置かれる。この構造を埋めるのが契約書の役割です。

契約の当事者構造を確認する

インフルエンサー起用には、①広告主とインフルエンサーの直接契約、②広告主・キャスティング会社(またはMCN・事務所)・インフルエンサーの三者構造、③広告代理店が間に入る四者構造があります。三者以上の場合、広告主の指示がインフルエンサーまで契約上届いているか(キャスティング会社との契約にインフルエンサーへの義務履行の確保条項があるか)を確認しなければ、いざというときに「その義務はうちの契約にはない」と言われます。

契約書に入れるべき条項

(1)広告であることの明示義務:「広告」「PR」等の表記方法、位置、大きさ、動画の場合の表示タイミング、プラットフォームのタイアップ機能の使用を具体的に定めます。「#PR」を付けるとだけ書く契約書は不十分です。

(2)表現の制限:薬機法・健康増進法・景品表示法上使用できない表現(効能効果の断定、最上級表現、他社比較、ビフォーアフター)を別紙で列挙し、遵守を義務づけます。「関係法令を遵守する」という一般条項だけでは、インフルエンサーは何を守ればよいか分かりません。

(3)事前確認(承認)権:投稿前に広告主が原稿・動画を確認し、修正を求める権利。投稿後の確認では手遅れです。ただし、事前承認をした投稿については広告主が内容決定に関与したことになりますので、承認の記録は「事業者の表示」であることの証拠にもなります。ステマ規制の下では、承認の有無にかかわらず広告主の表示となることを前提に、承認は「違法表現を出さない」ためのプロセスと位置づけます。

(4)投稿の保存・削除・修正:投稿の保存期間、広告主の求めに応じた修正・削除義務、契約終了後の取扱い。

(5)二次利用:投稿コンテンツを広告主が自社サイトや広告で利用する場合の許諾(著作権)、インフルエンサーの氏名・肖像の利用(パブリシティ権)、利用期間・媒体・対価。

(6)違反時の措置:措置命令・課徴金・返金対応等が生じた場合の損害賠償、契約解除、投稿の即時削除。ただし、インフルエンサー個人からの回収可能性は限られるため、実効的な予防は事前承認にあります。

(7)炎上・不祥事条項:インフルエンサーの不祥事や、投稿への批判が集中した場合の対応(削除権限、費用負担、契約解除)。

(8)競合排他:一定期間、競合商品の紹介を行わない義務。

取適法・フリーランス法という「もう一つの法律」

インフルエンサーが従業員を使用しない個人事業主等の「特定受託事業者」に該当し、発注者側も所定の要件を満たす場合には、令和6年11月施行のフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が適用され、取引条件の明示や原則60日以内の報酬支払等の義務が生じます。また、令和8年1月に下請法から改正された取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)も、情報成果物作成委託等に該当し、かつ委託事業者・中小受託事業者の資本金又は従業員基準等を満たす場合には適用され得ます。したがって、インフルエンサーへの発注が常に両法の対象になるわけではなく、当事者の属性と委託内容を個別に確認する必要があります。

実務ポイント

・広告主が管理できない場所(個人アカウント)に、広告主が責任を負う表示が置かれる。契約と事前承認でしか埋められない。

・PR表記の方法・禁止表現の別紙・事前承認権・二次利用・違反時措置の5点は必須条項。

・個人インフルエンサーへの発注では、フリーランス法・取適法の適用要件を個別に確認し、適用がある場合は取引条件の明示・支払期日等を遵守する。

作成日付:2026年9月15日

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