景品表示法8条の課徴金制度は、平成28年に導入され、令和6年10月の改正で強化されました。措置命令が「信用の制裁」であるのに対し、課徴金は「金銭の制裁」です。金額は交渉ではなく計算で決まりますが、計算の前提となる「対象商品」「対象期間」「売上額」には、事業者が主張すべき論点が含まれています。
基本の計算式
課徴金額=課徴金対象期間における、対象商品・役務の売上額×3%(景品表示法8条1項)。対象となるのは優良誤認表示(5条1号)と有利誤認表示(同条2号)のみで、指定告示違反(ステマ、おとり広告など)は課徴金の対象外です。
対象期間 ― 最長3年
課徴金対象期間は、不当表示をした期間(表示の開始から終了まで)です。表示をやめた後も、その表示によって商品が購入され続ける場合は、表示をやめた日から最長6か月まで期間が延び、表示をやめたことを一般消費者に周知する措置を講じた場合はその日で終わります。全体で最長3年です(8条2項)。掲載開始日・終了日の記録が、期間の主張の基礎になります。
売上額 ― 「課徴金対象行為に係る商品・役務」の売上
売上額は、課徴金対象期間中に取引をした「課徴金対象行為に係る商品又は役務」の売上額を基礎として算定します。複数の商品・役務を扱っている場合には、問題となった表示がどの商品・役務に係るものかを個別に特定する必要があります。表示が特定のキャンペーンページだけに掲載されていたとしても、そのページからの流入売上だけに当然に限定されるわけではありません。課徴金対象行為に係る商品・役務の範囲と取引実態に即して算定し、売上額が把握できない場合には法令に基づく推計が行われることがあります(8条4項)。
課されない場合
①法8条により算定した課徴金額が150万円未満の場合は、課徴金の納付を命じることができません(8条1項ただし書)。通常の算定率3%の場合には対象売上額5,000万円未満が一つの目安となりますが、4.5%の割増算定率が適用される場合には、この換算額は異なります。②事業者が、表示が課徴金対象となる不当表示であることを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められる場合も課徴金は課されません。「代理店に任せていた」「メーカーの情報を信じた」という事情だけで直ちにこの要件を満たすわけではないため、表示の根拠確認プロセス(第21講)が実際に機能していたことを示せるようにしておくことが重要です。
令和6年改正 ― 再違反の割増と推計規定
令和6年10月1日施行の改正で、基準日から遡って10年以内に確定した課徴金納付命令を受けたことがあり、かつ、その命令日以後に課徴金対象行為をしていた場合など、法8条5項・6項の要件を満たすときは、算定率が3%から4.5%に引き上げられます。また、売上額の推計規定が整備され、所定の場合には把握できない期間の売上額を合理的な方法により推計できるようになりました。
減額 ― 自主申告と返金
課徴金には二つの減額制度があります。①自主申告(9条):消費者庁の調査開始前に違反を自ら報告した場合、課徴金額が50%減額されます。②返金措置(10条〜):一般消費者に対し購入額の3%以上を返金する計画を実施した場合、返金相当額が課徴金から控除されます(第19講)。
課徴金納付命令の手続と争い方
課徴金納付命令の前にも弁明の機会が付与されます(13条)。争点は主に、①対象商品の範囲、②対象期間、③売上額の算定、④相当の注意の有無です。命令には除斥期間があり、違反行為がなくなった日から5年を経過すると課すことができません(12条7項)。
薬機法の課徴金との関係
薬機法66条違反の課徴金(75条の5の2、売上額の4.5%)と景品表示法の課徴金が同一の表示について競合する場合、薬機法上の課徴金額から景品表示法の課徴金相当額が控除される調整規定があります(薬機法75条の5の3)。両方が満額課されるわけではありませんが、合計で4.5%となる可能性はあります。
実務ポイント
・課徴金=対象売上×3%(再違反4.5%)、期間最長3年、150万円未満は不賦課。
・争点は「対象商品」「対象期間」「売上額」「相当の注意」。掲載記録と根拠確認プロセスの記録が武器になる。
・自主報告で50%減額、返金措置で控除。自主報告には調査開始前等の要件があり、返金措置には別途、計画の認定・実施等の要件がある。
作成日付:2026年9月15日