「うちの株主が誰か分からない」という現実
少数株主対策のご相談で最初に確認するのは、意外にも株主名簿(会社法121条)です。そして相当数の中小企業で、①株主名簿がそもそも作成されていない、②名義株(他人名義を借りた株式)が残っている、③相続が発生したのに名義書換がされず死者名義のまま、④株券発行会社なのに株券を発行していない、といった問題が見つかります。
平成2年商法改正前は株式会社の設立に発起人7名が必要だったため、この時代に設立された会社には、頭数合わせの名義株が高確率で眠っています。設立から30年以上が経過し、名義人の相続が2代進んでいるケースも珍しくありません。
株主管理を怠るとどうなるか
株主名簿・株主構成の不備は、平時には表面化しませんが、①事業承継・M&Aの局面(買主のデューデリジェンスで必ず指摘され、価格減額・取引中止の原因になります)、②株主総会決議の効力が争われる局面(招集通知漏れは決議取消事由になります。会社法831条1項1号)、③相続発生の局面で一気に爆発します。
とりわけ、名義株の名義人側の相続人が「自分は真実の株主だ」と主張し始めると、株主権確認訴訟という重い紛争に発展します。名義株の帰属は、出資金の拠出者・配当の受領状況・経営への関与等の実質で判断されるのが判例実務ですが、時間の経過とともに証拠は散逸し、立証は年々困難になります。
図表:株主管理・健康診断チェックリスト
| チェック項目 | 放置した場合のリスク |
|---|---|
| 株主名簿は作成・更新されているか(会社法121条) | 過料の制裁(会社法976条)、M&A時の指摘事項 |
| 名義株・所在不明株主はいないか | 株主権確認訴訟、総会決議の瑕疵、承継の障害 |
| 死亡株主の相続処理は完了しているか | 準共有状態の放置(第16講参照)、議決権の凍結 |
| 株券発行会社のままになっていないか | 株券不発行への定款変更を検討(214条参照) |
| 定款の譲渡制限・売渡請求条項は最新か | 相続クーデター等への備え不足(第17講参照) |
| 過去の増資・譲渡の書類は保存されているか | 株式の帰属・変遷の立証不能 |
まず「守りを固める」のが少数株主対策の第一歩
少数株主対策というと、スクイーズアウト(第14講)のような「攻め」の手法が注目されがちです。しかし、株主構成の現状を正確に確定できていない会社が攻めの手法を使うことは、瑕疵ある手続として無効を招くリスクと隣り合わせです。株主名簿の整備・名義株の解消・相続処理の完了という地味な作業こそが、すべての少数株主対策の土台になります。
当事務所では、株主構成の法的監査(株主デューデリジェンス)から、名義株の解消交渉、株主権確認訴訟の対応まで、一貫してお引き受けしています。