ホーム連載コラム非上場株式27講 ─ 第6講

『非上場株式27講 ― 売れない株の教科書 ―』【第6講】

その株、本当にあなたのものですか ― 名義株の解消と株主権確認訴訟

昭和の設立が残した時限爆弾

平成2年商法改正前、株式会社の設立には発起人7名が必要でした。この時代に設立された会社の多くには、親族・知人から名前だけを借りた名義株が残っています。株主名簿上の株主と、実際に出資した真の株主が食い違っている状態です。

名義株の帰属について、判例は一貫して実質説を採ります。最高裁昭和42年11月17日判決(民集21巻9号2448頁)は、他人の承諾を得てその名義を用いて株式の引受けがされた場合、名義貸与者ではなく実質上の引受人が株主となると判示しました。名簿の記載は真実の権利を決めません。だからこそ、「名簿上は叔父名義の株」の真の帰属をめぐって、数十年後に紛争が噴き出すのです。

帰属はどう判断されるか

実質上の株主が誰かは、①株式取得資金を誰が拠出したか(最重要)、②配当を誰が受領し、誰が課税申告してきたか、③株主総会での議決権行使など株主権を誰が行使してきたか、④株券・関係書類を誰が管理してきたか、⑤名義借りの経緯・合意の内容、といった事情の総合判断です。裁判例も取得資金の出捐者を重視する傾向にあります。

図解:名義株を放置した場合の紛争シナリオ

設立時:オーナーが出資、親族7名の名義を借用

名義人の相続人「名簿に載っている以上、私は株主だ。買い取れ」

30〜50年経過。名義人が死亡し、相続が2代進む

会社側が拒否

株主権確認訴訟・地位確認の争い

※時間の経過で名義借りの証拠(払込資料・合意書)は散逸

※立証に失敗すれば「本物の少数株主」が誕生してしまう

M&A・事業承継の局面で発覚

買主が株式の帰属リスクを指摘

価格減額・表明保証・最悪は破談

解消の実務 ― 「証拠が残っているうちに」がすべて

名義株の解消方法は、①名義人(またはその相続人)から名義株であることの確認書を取得して名簿を訂正する、②確認が得られない場合は株式譲渡の形式で買い取る、③争いになれば株主権確認訴訟で決着させる、の三段構えです。②の「買い取る」処理は簡便ですが、真実は最初から自社(オーナー)の株式であるものに対価を払う形になるため、税務上の整理(贈与認定のリスク等)を含めた設計が必要です。

強調したいのは時間の残酷さです。名義借りを直接知る世代が存命のうちなら、確認書1枚で解決できたはずの問題が、相続を経るごとに、証人も証拠も失われた重い訴訟に変わっていきます。株主名簿と実態の突合(第5講)で名義株の疑いが見つかったら、今期中に着手する。それが実務家としての率直な助言です。当事務所では、名義株の調査・確認書の取得交渉から株主権確認訴訟まで一貫して対応しています。

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