「うちの商品は化粧品なので薬機法だけ気を付ければよい」「サプリメントだから健康増進法ですね」というご相談をよく受けます。しかし、この三法は対象・禁止の仕方・執行機関・制裁のすべてが異なり、一つの広告に同時にかかります。違いを押さえておかないと、確認したつもりが穴になります。
景品表示法 ― 「誤認」を問う横断法
景品表示法は、事業者が「自己の供給する商品又は役務」について行う表示を対象とし、業種を問いません。禁止の基準は一般消費者の誤認です。表示が客観的に真実かどうかではなく、「一般消費者が受ける印象」と「実際」との間に著しい乖離があるかで判断されます。つまり、一文一文は正しくても、全体の印象が実際を超えていれば優良誤認となり得ます。
執行は消費者庁(表示対策課)と都道府県(同法38条11項による権限委任)。制裁は措置命令(7条)、課徴金(8条)、直罰(48条)で、さらに適格消費者団体の差止請求(34条)が用意されています。
薬機法 ― 「承認の枠」を守らせる縦割り法
薬機法66条は医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器等について虚偽・誇大な広告を禁止し、68条は承認を受けていない医薬品・医療機器等の広告そのものを禁止します。健康食品や雑貨であっても、「血圧を下げる」「シミが消える」といった医薬品的な効能効果を標榜する場合、成分本質、形状、効能効果、用法用量、販売方法等を総合的に考慮して医薬品に該当すると判断されることがあり、無承認医薬品の広告として68条違反となるおそれがあります(いわゆる「46通知」=昭和46年薬発第476号の考え方)。この判断では、表示した効能効果が実際に得られるか否かとは別に、医薬品的な効能効果の標榜自体が重要な要素になります。制裁は刑事罰(2年以下の懲役等・85条)のほか、令和3年8月から課徴金制度(75条の5の2、対象商品の売上額の4.5%)が導入されています。化粧品については、広告基準として「医薬品等適正広告基準」があり、表現できる効能効果が定型化されています(第12講)。
健康増進法 ― 「健康保持増進効果」の誇大表示を禁じる
健康増進法65条1項は、食品として販売するものについて、健康の保持増進の効果等に関し著しく事実に相違する、または著しく人を誤認させる表示を禁止します。対象は「食品」に限られ、執行は消費者庁と都道府県です。消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月改正)で、両法を一体的に運用する考え方を示しています(第11講)。
三法の「重なり方」を具体例で見る
たとえば「飲むだけで内臓脂肪が減るサプリ」という広告は、①医薬品的効能効果の標榜として薬機法68条、②健康保持増進効果の誇大表示として健康増進法65条、③根拠なき優良誤認表示として景品表示法5条1号の三つが同時に問題となります。どの法律で処分するかは行政側の選択ですが、これまでに扱ったケースにおいては、健康増進法に基づく行政指導と共に景品表示法(不実証広告規制)に基づく措置命令が行われたというケースもあります。
| 景品表示法 | 薬機法 | 健康増進法 | |
| 対象 | 全商品・役務 | 医薬品・化粧品・医療機器等(+みなし医薬品) | 食品 |
| 基準 | 一般消費者の誤認 | 承認の枠・広告基準 | 事実相違・誤認 |
| 執行 | 消費者庁・都道府県 | 厚労省・都道府県 | 消費者庁・都道府県 |
| 制裁 | 措置命令・課徴金3%・直罰 | 刑事罰・課徴金4.5% | 勧告・命令・罰則 |
実務ポイント
・薬機法68条は「効くかどうか」と無関係に、効能効果を「うたったこと」自体を問う。
・健康食品・化粧品の広告は、景品表示法の根拠資料と薬機法の表現ルールの両方を同時に満たす必要がある。
作成日付:2026年9月11日