「これは広告ではなく情報提供です」「お客様が勝手に投稿したものです」。広告規制の相談で多い反論ですが、法律上の「広告」「表示」の範囲は、事業者の主観よりはるかに広いことをまず押さえてください。
景品表示法の「表示」は媒体を問わない
景品表示法2条4項は「表示」を、顧客を誘引するための手段として事業者が商品・役務の内容や取引条件について行う広告その他の表示であって、内閣総理大臣が指定するものと定義し、指定告示(昭和37年公正取引委員会告示第3号)は、商品の容器・包装、チラシ、新聞・雑誌、テレビ、インターネット上の表示、口頭による表示まで含めています。したがって、自社サイトの商品ページ、ECモールの商品説明、SNSの公式アカウント投稿、LINEの配信、店頭POP、営業担当者のセールストーク、さらにはプレスリリースまで、顧客誘引の目的があれば「表示」です。
薬機法の「広告」は3要件
薬機法の広告該当性は、厚生労働省の通知(平成10年医薬監第148号)により、①顧客を誘引する意図が明確であること、②特定の商品名が明らかにされていること、③一般人が認知できる状態であること、の3要件で判断されます。実務上とくに注意が必要なのは、「商品名を出さなければ広告ではない」という誤解です。商品ページへのリンクを貼った成分解説記事や、商品名を伏せていても写真で特定できる投稿は、①②を満たすと判断され得ます。
「口コミ」「体験談」は誰の表示か
第三者の投稿であっても、事業者がその内容の決定に関与していれば事業者の表示になります。ステルスマーケティング告示(令和5年内閣府告示第19号)とその運用基準は、事業者が第三者に依頼・指示して投稿させた場合はもちろん、報酬の有無にかかわらず事業者と第三者の関係性から表示内容の決定に関与したと認められる場合も、事業者の表示に当たるとしています(第8講)。また、自社サイトに顧客の体験談を「選んで掲載」する行為は、掲載の時点で事業者自身の表示です。
「広告」に当たるかを判断する三つの問い
実務では、次の三つの問いで整理します。①その情報は、事業者の商品・サービスの購入に結びつくよう設計されているか(誘引性)。②事業者はその内容を書いた、選んだ、依頼した、承認した、あるいは報酬を払ったか(関与性)。③一般消費者がそれを見ることができるか(公開性)。三つとも「はい」であれば、名称が何であれ規制の対象として扱うのが安全です。
グレーゾーンの具体例
・社長のブログ・SNS個人アカウント:会社の商品を紹介していれば表示。役員の個人的発信という抗弁は通りにくい。
・アフィリエイトサイト:アフィリエイターの記事であっても、広告主が成果報酬を支払い、内容を確認・指示していれば広告主の表示(消費者庁「アフィリエイト広告等に関する検討会報告書」令和4年2月)。
・採用広告・BtoB広告:景品表示法は「一般消費者」向け表示を対象とするため、純然たる事業者間取引の広告は対象外。ただし、不正競争防止法や民事責任は別途問題になる。
・取扱説明書・FAQ:購入後の情報でも、購入前に閲覧可能でありその内容が誘引に働くなら表示。
実務ポイント
・「広告」というラベルの有無で判断しない。誘引性・関与性・公開性で判断する。
・第三者の投稿は、事業者が「選ぶ」「依頼する」「払う」いずれかをした時点で自社の表示と扱う。
・薬機法では商品名を伏せても、商品が特定できれば広告。
作成日付:2026年9月11日