「タワーマンションを買えば相続税が下がる」――この常識は、二段階で塗り替えられました。
第一撃:最高裁令和4年4月19日判決(総則6項)
相続直前の借入で高額マンション2棟を購入し、通達評価により相続税額を0円として申告した事案で、最高裁は、通達評価額と実勢価格の著しい乖離など「実質的な租税負担の公平に反するというべき事情」がある場合に、評価通達によらず鑑定評価額で課税する(財産評価基本通達6項)ことを適法と判断しました(最高裁令和4年4月19日第三小法廷判決・民集76巻4号411頁)。露骨な相続税対策は、通達どおりに評価しても否認され得ることが最高裁レベルで確定したのです。
第二撃:令和6年からのマンション新評価ルール
国税庁は令和5年9月28日付で法令解釈通達「居住用の区分所有財産の評価について」を発出し、令和6年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した分譲マンション(居住用の区分所有財産)について、築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度から算出する評価乖離率に基づく区分所有補正率を乗じる新方式を導入しました(国税庁タックスアンサーNo.4667)。評価水準(1÷評価乖離率)が0.6未満の場合は「評価乖離率×0.6」を乗じて評価額を引き上げる――つまり市場価格のおおむね6割水準まで評価が是正されます。タワマン高層階の「評価3割」時代は終わりました。
それでも残るもの
不動産の相続税評価が時価を下回る構造自体は残っており、適正な範囲の資産組換えまで否定されたわけではありません。分水嶺は「経済合理性のある投資か、租税回避のための駆け込みか」。この線引きを誤ると、追徴は数億円になり得ます。