更地に賃貸アパートを建てると、土地は貸家建付地として、建物は貸家として評価が下がり、借入は債務控除(相続税法13条)の対象になる――計算上の節税効果は事実です。
しかし「節税額」より「損失」が大きくなる典型例
空室が想定を下回れば、評価減の前提(賃貸割合)も収支も崩れます。人口減少地域での供給過剰、修繕費の過小見積り、出口(売却)価格の下落。節税で浮く額より、30年の事業リスクで失う額の方が大きい――弁護士が紛争処理の現場で繰り返し見る構図です。
サブリース「30年一括借上げ」の法的現実
「家賃保証」をうたうサブリースでも、賃料減額請求の規定(借地借家法32条1項)は強行法規であり、サブリース契約にも適用されることが最高裁で確定しています(最高裁平成15年10月21日第一小法廷判決・民集57巻9号1213頁)。「30年保証」の賃料は、法律上、減額され得る賃料です。勧誘の不当性については賃貸住宅管理業法(令和2年法律第60号)が誇大広告・不当勧誘を規制していますが、契約してしまった後の救済は容易ではありません。
相続直前の借入建築は二重に危ない
第10講の総則6項リスクに加え、遺産分割の場面では「誰がこの借金付きアパートを引き受けるのか」という紛争の火種になります(第13講)。建築の是非は、税理士の節税試算だけでなく、事業収支と家族の分割設計を含めた三面で判断すべきものです。