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『不動産オーナーの相続24講 ― 地主と大家の教科書 ―』【第11講】

アパート建築とサブリース――「節税になる」提案を契約前に点検する

第11講不動産オーナーの相続24講

アパート建築とサブリース――「節税になる」提案を契約前に点検する

地主と大家の教科書 | 明徳法律事務所

掲載ページ | 改訂日:2026年9月18日

「更地のままでは相続税が高い。アパートを建てれば家賃も保証される」。魅力的に聞こえる提案ですが、建築後に始まるのは長期の賃貸事業です。相続税の軽減があっても、運営赤字や大きな修繕負担が続けば、家族に残る資産は減ってしまいます。

この講の要点建てるかどうかは、税額・事業収支・契約条件・承継先の四つを同じ資料の上で判断します。

「借りれば節税」では計算が足りない

賃貸物件には、貸家・貸家建付地としての評価上の取扱いがあり、一定の債務は相続税計算で控除されます。ただし、借りた現金がそのまま残っていれば資産も増えるため、借入れ自体が自動的に節税を生むわけではありません。建築後の利用状況や賃貸割合などを含めて評価します。

空室が想定より増える、家賃が下がる、修繕時期が重なる。こうした変化は、事業収支と税務上の前提の双方に影響し得ます。一時的な空室の評価には個別の取扱いがあるため、「一室空けば必ず同じ割合だけ評価減が消える」とも限りません。国税庁「貸家建付地の評価」

将来の相続を見据える場合は、2026年度税制改正大綱に示された貸付用不動産の評価見直しも確認します。第10講で述べた適用時期・対象・経過措置を踏まえ、提案書の節税額をそのまま将来へ延長しないことが重要です。

サブリースの「期間」と「金額」を分ける

サブリースでは、事業者がオーナーから建物を借り、入居者へ転貸します。「30年一括借上げ」という説明でも、30年間ずっと同じ賃料が支払われるとは限りません。

普通建物賃貸借では、借地借家法32条に基づく賃料減額請求が問題となり得ます。ただし、事業者が通知すれば希望どおりの減額が自動的に成立するわけではありません。賃料が不相当になったといえるか、契約の経緯や経済事情などを踏まえて判断します。最高裁平成15年10月21日判決・裁判所原文

他方、定期建物賃貸借では、賃料改定に関する特約がある場合に同条が適用されない例外があります。契約の種類を確認せず、「サブリースだから減額は拒めない」と答えることも適切ではありません。借地借家法32条・38条

契約書で確認する六つの項目

項目 確認する内容
賃料改定 時期、計算方法、協議手順、減額の条件
免責期間 新築時や入退去時に家賃が入らない期間
修繕 負担者、発注先の指定、見積りを比較できるか
中途解約 誰が、何か月前に、どの条件で解約できるか
売却・相続 契約の承継、承諾、通知、手数料
契約終了 入居者・敷金・賃料債権・書類の引継ぎ

サブリースに関する誇大広告や不当勧誘等は法律で規制されています。契約前の説明書だけでなく、営業資料、メール、収支表も保存してください。説明と契約書の不一致を確認するための資料になります。国土交通省「サブリース事業の適正化のための措置」

架空の設例――家賃が1割下がると、手残りはどうなるか

年間の受取家賃1,200万円、借入返済800万円、税・保険・修繕積立等250万円なら、年間の手残りは150万円です。受取家賃が1割下がって1,080万円になり、ほかの支出が変わらなければ、手残りは30万円になります。

収入の1割減が、手残りでは8割減になる計算です。税額の軽減見込みがあっても、この状態で大規模修繕や金利上昇に耐えられるかを確認します。数字は説明用の架空の設例であり、特定物件の収益予測ではありません。

家族の引継ぎまで確認する

経営する本人が納得していても、相続人が同じ事業を続けたいとは限りません。誰が物件を取得するか、誰が借入債務を負うか、銀行が承継をどう扱うか、管理を誰に任せるかを事前に確認します。建築後は現金に戻すにも費用と時間がかかるため、契約前の検討が重要です。

よくある質問

Q.減額の通知が来ました。署名してはいけませんか。
A.変更合意書へ署名する前に、請求の根拠、契約条項、収支への影響を確認してください。通知の意味と合意の効果は分けて考えます。

Q.契約前に弁護士へ見せる資料は何ですか。
A.建築請負契約案、借入条件、サブリース契約案、重要事項説明書、収支計画です。どれか一つだけでは、契約全体の負担を捉えにくくなります。

明徳法律事務所への相談で整理すること

複数の契約を横断して、賃料が下がる場合、事業者が撤退する場合、相続や売却が生じる場合の負担を確認します。すでに問題が起きている場合も、通知への回答、契約交渉、証拠の確保から検討できます。

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