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『不動産オーナーの相続24講 ― 地主と大家の教科書 ―』【第12講】

小規模宅地等の特例――「誰が取得するか」と「いつ動くか」で変わる土地の評価

第12講不動産オーナーの相続24講

小規模宅地等の特例――「誰が取得するか」と「いつ動くか」で変わる土地の評価

地主と大家の教科書 | 明徳法律事務所

掲載ページ | 改訂日:2026年9月18日

「自宅なら8割減になる」「賃貸マンションの土地も大きく下がる」。小規模宅地等の特例は大きな効果がありますが、土地の種類だけで決まる制度ではありません。取得者、使い方、保有・事業継続、分割と申告の状況を確認します。

この講の要点特例を使いたい土地は、分け方を決める前、売却を決める前に税理士と確認することが重要です。税金が8割減る制度ではなく、一定の土地の課税価格を減額する制度です。

基本となる四つの類型

類型 主な対象 限度面積 減額割合
特定居住用宅地等 一定の自宅の敷地 330㎡ 80%
特定事業用宅地等 一定の個人事業の敷地 400㎡ 80%
特定同族会社事業用宅地等 一定の同族会社の事業用地 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 一定の賃貸物件・貸付事業の敷地 200㎡ 50%

複数の類型を使う場合は面積の調整があります。特定事業用と特定同族会社事業用には合計400㎡の枠があり、貸付事業用も選ぶ場合には別の調整計算を行います。各欄の面積をそのまま足せるとは限りません。国税庁「小規模宅地等の特例」

自宅を取得する人で要件が変わる

配偶者が取得する場合、取得者についての居住・保有継続要件は設けられていません。一方、一定の同居親族が取得する場合には、原則として相続開始直前から申告期限まで居住し、土地も保有する必要があります。

別居親族のいわゆる「家なき子」の要件は、単に自分名義の家がないことだけではありません。被相続人の配偶者や同居相続人の有無、取得者が過去に住んだ家の所有者、現在の住居の所有歴、申告期限までの保有などを確認します。老人ホームへの入所や二世帯住宅でも結論が変わり得るため、住民票だけで判断しないことが大切です。

賃貸物件は、開始時期と継続の要件を点検する

貸付事業用宅地等では、取得した親族による貸付事業の承継・継続と、申告期限までの保有などが問題になります。相続開始前3年以内に新たに貸付事業に使った土地は原則として対象外です。

ただし、相続開始まで3年を超えて継続して一定の貸付事業を行っていた人が、その事業に新たな土地を加えた場合などには例外があります。「新しい物件が事業的規模だから使える」とだけ考えず、従来からの事業の継続期間を確認します。

分割が終わらない場合も、申告期限は延びない

対象地が未分割のままでは、原則として当初の申告でその土地に特例を適用できません。それでも相続税の申告・納税期限は延びず、通常は死亡を知った日の翌日から10か月以内の対応が必要です。

分割が間に合わない場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付するなどの手続を取り、原則として申告期限から3年以内に分割した上で、更正の請求等により適用を受ける方法があります。更正の請求の期限にも注意が必要です。国税庁「相続財産が分割されていないときの申告」

訴訟など一定のやむを得ない事情がある場合には、3年経過後の適用に関する承認手続もあります。「調停中だから自動で延長される」と考えず、税務上の手続を別に管理します。国税庁「未分割の場合の特例適用手続」

なお、期限後申告で適用できる場合もあり、「期限内申告でなければ絶対に使えない」との理解は正確ではありません。ただし、分割時期や保有・居住等の要件が自由になるわけではなく、期限後申告に伴う負担も別途検討が必要です。租税特別措置法69条の4第7項

架空の設例――代償金を払うための売却が、特例に影響する

父と同居していた長女が、特例適用前の評価額1億円、面積300㎡の自宅敷地を取得する計画です。要件を満たして全体に80%減を適用できれば、課税価格は2,000万円になります。ただし、税額が8,000万円減るわけではありません。

長女が他の相続人へ代償金を払うため申告期限前に土地を売却すると、保有継続要件との関係が問題になります。売却してから気付くのでは遅いため、代償金の支払時期、融資、他の資産の活用まで含め、分割案を作ります。これは要件と資金計画の関係を示す架空の設例です。

相談前に揃えたい情報

  • 誰がどこに住み、土地・建物を誰が所有していたか。
  • 貸付けや事業を、いつから誰が行っていたか。
  • 土地の取得予定者と、申告期限前の売却・転居の予定。
  • 分割の進捗、税理士への依頼状況、納税資金。

よくある質問

Q.特例を使うと相続税がゼロです。申告しなくてもよいですか。
A.この特例の適用を受けるためには、所定の申告と書類の提出が必要です。適用後に税額がゼロでも、申告の要否を税理士に確認してください。

Q.特例のため、とりあえず共有にしてよいですか。
A.税務だけでなく、将来の管理・売却への影響も検討します。共有持分ごとの適用要件や、ほかの分割案を比較することが先です。

明徳法律事務所への相談で整理すること

税理士が確認する適用要件と、相続人の希望・交渉状況をつなぎ、実行できる分割案を考えます。期限が迫っている場合には、協議の論点を絞ることと、未分割申告などの期限対応を並行して整理します。

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