最初に確認すべきは「賃貸借契約書」
立ち退き要求への対応は、契約のタイプ判定から始まります。同じ「借りて住んでいる・営業している」でも、法的な守られ方がまったく違うからです。
図表:契約タイプ別・立ち退きへの耐性
| タイプ | 見分け方 | 期間満了時 | 立退料の位置づけ |
|---|---|---|---|
| 普通建物賃貸借 | 通常の賃貸借契約書。更新条項あり | 貸主が更新を拒むには正当事由が必要(借地借家法28条)。なければ法定更新(26条) | 正当事由を補完する中心的要素。本シリーズの主戦場 |
| 定期建物賃貸借(借地借家法38条) | 「更新がなく、期間満了により終了」と明記+契約書とは別個の事前説明書面 | 正当事由不要で終了(再契約は貸主の自由) | 法律上の支払義務は生じないのが原則(任意の引越協力金はあり得る) |
| 使用貸借(民法593条) | 賃料を払っていない(親族間の無償使用など) | 借地借家法の適用なし。契約・目的に従い終了(民法597条・598条) | 法律上の立退料請求権はない |
| 一時使用目的(借地借家法40条) | 明らかに一時使用(工事期間中の仮店舗等) | 借地借家法第3章の適用なし | 原則なし |
「定期借家」と言われても、あきらめるのはまだ早い
貸主から「これは定期借家だから無条件で出て行ってもらう」と言われるケースがありますが、定期建物賃貸借の成立要件は厳格です。①公正証書等の書面(または電磁的記録)による契約であること(38条1項・2項)、②契約書とは別に、あらかじめ「更新がなく期間満了により終了する」旨を記載した書面を交付(借主の承諾があれば電磁的方法も可)して説明すること(38条3項)が必要で、この事前説明を欠くと、更新がない旨の定めは無効となり(38条5項)、普通借家として扱われます。
実際、「定期借家のつもりだった」契約が、事前説明書面の不存在や説明の不備により普通借家と判断される例は少なくありません。契約書の題名だけで判断せず、締結時の書面一式を必ず精査してください。ここがひっくり返れば、正当事由と立退料の土俵(第3講以降)に戻れます。
契約書がない・古すぎる場合
契約書が見当たらない長期の賃貸借も、賃料の支払いが続いていれば賃貸借契約は有効に存在し、原則として普通借家として借地借家法の保護を受けます。むしろ書面がないことは、定期借家の要件を満たさないことを意味するため、借主にとって不利には働きません。まずは賃料の支払記録(振込明細・領収書)を確保しましょう。