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『立ち退き20講 ― 立退料の教科書 ―』【第4講】

立退料は「もらえる権利」ではなく、天秤の重り ― 法的性質を知ると、なぜ金額が最後まで動くのかが分かる ―

第4講第Ⅰ部 基礎編――立ち退き要求の正体を知る

立退料は「もらえる権利」ではなく、天秤の重り

法的性質を知ると、なぜ金額が最後まで動くのかが分かる

『立ち退き20講――立退料の教科書』執筆者 坂本龍亮(明徳法律事務所 弁護士)お問い合わせ先:info@meitoku-law.jp読了目安 18分

公開日 2026年8月9日改訂日 2026年9月23日

この講の結論

立退料とは、貸主が建物の明渡しの条件として、または明渡しと引換えに借主へ支払う財産上の給付であり、借地借家法28条は、その申出を正当事由の判断で考慮すべき事情の一つとして定めています。借主の側から「立退料を支払え」と請求できる独立した権利は、法律上存在しません。この構造から、三つの帰結が導かれます。第一に、貸主側に建物を必要とする事情が乏しければ、立退料をいくら積んでも明渡しは認められません。第二に、裁判所が明渡しを認めるときは「立退料の支払と引換えに明け渡せ」という引換給付判決になり、金銭の受領と明渡しが同時履行の関係に立ちます。第三に、立退料の申出や増額は訴訟の最終盤まで考慮されるため、金額は最後まで動きます。初回の提示額は、上限ではなく起点です。

立退料に、独立した請求権はない

「立退料は、いくらもらえる権利があるのですか」。相談で最初に受ける質問の一つです。答えは、意外に思われるかもしれませんが、「権利としては、ありません」です。

借地借家法28条は、正当事由の判断で考慮する事情の一つとして、「建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出」を挙げています。立退料は、この「財産上の給付の申出」の実務上の呼び名です。条文の主語は貸主であり、立退料は、貸主が正当事由を補完するために自らの判断で申し出るものとして位置づけられています。借主の側から貸主に対して支払いを求める独立の請求権を定めた条文は、借地借家法にも民法にもありません。

この出発点を正確に押さえておくことが、立ち退き交渉のすべての土台になります。「権利がない」と聞くと弱い立場のように感じられますが、実務上の帰結は逆です。立退料が貸主の申出である以上、借主は応じる義務を負わず、応じるかどうか、どの条件で応じるかを選ぶ側に立つからです。

第一の帰結――積んでも動かない天秤がある

立退料が正当事由の「補完要素」であるということは、正当事由の中核である双方の使用の必要性の比較で貸主側の皿がほとんど空であれば、立退料という重りをいくら載せても天秤は動かない、ということを意味します。

最判昭和46年11月25日(民集25巻8号1343頁)が述べたとおり、立退料などの金員の提供は「それのみで正当事由の根拠となるものではなく、他の諸般の事情と綜合考慮され、相互に補充しあつて正当事由の判断の基礎となるもの」です。貸主側に建物を必要とする具体的な事情がなく、借主側には生活や営業の本拠としての必要性がある事案では、金額の多寡にかかわらず正当事由は認められません。

この帰結は、借主側の交渉の立ち位置を決めます。「正当事由なし」の主張を維持できる限り、交渉の主導権は借主側にあります。貸主側の提示が失うものに見合わないなら、応じないという選択が法律上そのまま通用する領域です(第3講の領域A)。逆に言えば、この領域にいる借主が「相場だから」と言われて応じてしまうことが、最も損失の大きい失敗です。

第二の帰結――引換給付判決という守り

交渉がまとまらず、貸主が明渡訴訟を起こし、裁判所が正当事由を認めた場合、判決はどのような形になるでしょうか。裁判所は通常、「被告は、原告から金○○円の支払を受けるのと引換えに、本件建物を明け渡せ」という判決を書きます。これを引換給付判決といいます。

図1 引換給付判決の仕組み

  1. 1判決の主文「被告は、原告から金○○円の支払を受けるのと引換えに、別紙物件目録記載の建物を明け渡せ」立退料の支払と明渡しが、判決の中で結びつけられる。
  2. 2強制執行の開始要件債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合、強制執行は、債権者が反対給付またはその提供のあったことを証明したときに限り開始できる(民事執行法31条1項)。貸主が立退料を実際に支払うか、借主が受領を拒んだときは供託するなどして提供したことを証明しなければ、明渡しの執行は始まらない。
  3. 3借主側の守り「先に出たのに払われない」という事態は、判決の構造上、起きない。ただし、これは判決で解決する場合の話。交渉で合意する場合には、合意書の中で支払と明渡しの順序を自分たちで設計する必要がある(第17講)。

引換給付判決は、立退料と明渡しを同時履行の関係に置く。

引換給付判決の構造は、借主にとって重要な安全装置です。判決が確定しても、貸主が立退料を支払うか、少なくとも支払の提供をしなければ、明渡しの強制執行は開始されません。逆に、貸主が立退料を支払ったのに借主が明け渡さなければ、貸主はその支払いを証明して執行に進むことができます。判決による解決には、こうした相互の履行を確保する仕組みが組み込まれています。

交渉で合意する場合には、この安全装置は自動的には働きません。合意書の中で、立退料の支払期日と明渡しの期日の関係を、借主側が不利にならないように定める必要があります。先渡しか、同時履行か、一部前払いか。この設計は第17講で扱います。

裁判所は、貸主の申出額を超えて認定できる

引換給付判決の立退料の額は、誰が決めるのでしょうか。貸主が申し出た額に裁判所が縛られるわけではありません。

前掲の最判昭和46年11月25日の事案では、貸主は、立退料として300万円「もしくはこれと格段の相違のない一定の範囲内で裁判所の決定する金員」を支払う旨の意思を表明し、その支払と引換えに店舗の明渡しを求めていました。最高裁は、このような申出がある場合には、裁判所が申出額を上回る額(この事案では500万円)の支払と引換えに明渡しを命じることができるとしました。貸主が「裁判所が相当と認める額」という含みを持たせて申し出ている限り、裁判所は、双方の事情を踏まえて申出額を超える立退料を認定できるのです。

実務では、貸主側の訴状や準備書面に「金○○円又はこれと格段の相違のない範囲内で裁判所が相当と認める金額」という定型的な表現が用いられます。この一文があることで、裁判所は貸主の申出額に縛られずに額を認定でき、借主側は、申出額を超える立退料を主張立証によって引き出す余地を持ちます。

第三の帰結――金額は最後まで動く

立退料をめぐる紛争の最大の特徴は、金額が訴訟の最終盤まで動き続けることです。その根拠が、最判平成3年3月22日(民集45巻3号293頁)です。最高裁は、貸主が解約申入れの後に立退料の提供を申し出た場合や、当初申し出ていた金額を増額した場合でも、その提供や増額に係る金員を考慮して、当初の解約申入れの正当事由を判断できると判示しました。借地についても、最判平成6年10月25日(民集48巻7号1303頁)が、正当事由を補完する立退料等の提供や増額の申出は、事実審の口頭弁論終結時までにされたものであれば原則として考慮できるとしています。

この判例法理の帰結として、貸主側は、訴訟の進行と裁判所の心証を見ながら、提示額を段階的に引き上げて正当事由を積み増していくことができます。裁判所は、双方の主張立証を踏まえたうえで、正当事由を補完するに足りる額を認定します。

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局面貸主側の動き借主側の対応
通知・初回面談「引越費用相当」「賃料○か月分」など、予算の下限から提示する回答を保留し、提示額と説明を記録する。応じる義務はない
交渉借主の反応と主張の内容を見て、増額の稟議を上げる失うものを資料で示し、正当事由の弱点を指摘する。金額以外の条件も並べる
訴訟提起訴状で「金○○円又はこれと格段の相違のない範囲内で裁判所が相当と認める額」と記載する答弁書で正当事由を争い、立退料の算定資料を提出する
争点整理・鑑定裁判所の心証を探りながら増額を申し出る営業補償や借家権価格の主張立証を尽くす。和解案の水準を見極める
和解・判決和解では金額以外の条件(明渡時期、原状回復免除)を組み合わせる判決の不確実性と和解の条件を比較して選ぶ

初回の提示額は、文字どおり「初回の」金額です。適切な主張立証を尽くした事案では、初回提示額と最終解決額が大きく離れることは珍しくありません。第13講で紹介する事案では、当初「0円」だった貸主側の提示が8,000万円で解決しています。この差は、借主の交渉が上手だったからではなく、立退料の法的性質――申出であり、補完要素であり、最後まで動くもの――に由来しています。

立退料は何の対価か

立退料は損害賠償ではありません。貸主に違法行為があるわけではなく、正当事由を補完するための任意の給付です。それでは、何の対価なのでしょうか。裁判例と実務は、立退料の中身を、おおむね次の三つの性質の組合せとして捉えてきました。

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性質中身算定の手がかり
借家権の消滅の対価借主が持っていた「その建物を使い続けられる地位」という財産的価値の補償借家権価格。不動産鑑定の手法や、財産評価上の借家権割合が参照される
移転に伴う損失の補償引越費用、新規契約の費用、賃料差額、内装・設備の損失、事業者なら休業損害と得意先の喪失移転実費と営業補償。公共用地の取得に伴う損失補償基準の構成が参照される
正当事由の不足を埋める調整双方の必要性の差を埋めるために裁判所が加算・調整する部分算定根拠を明示せず総合考慮で決められることが多い

令和7年に公表された法務省の調査研究報告書も、現在の裁判例における立退料の算定要素を、借家権価格、移転費用等(引越し、内装工事、賃料差額)、営業補償、賃料の何か月分、と整理し、その組み合わせ方は事案ごとに多様であると述べています。三つの性質のどれに重心が置かれるかは、住居か店舗か、借家権に取引上の価値が認められる地域か、貸主側の必要性がどの程度強いかによって変わります。この中身の分解は第5講で、住居と店舗の違いは第6講・第7講で扱います。なお、立退料の内訳は、受け取る側の税務上の所得区分にも影響します(第18講)。

「相場」という言葉の正体

インターネット上には「立退料の相場は賃料の6か月から12か月分」といった記述があふれています。この数字には一面の真実があります。特段の事情のない住居の簡易な事案が、その程度の水準で合意されることは確かに多いからです。しかし、それを「相場」と呼ぶことには二つの問題があります。

第一に、法律上そのような基準はどこにも存在しません。令和7年報告書が分析した裁判例137件で認定された立退料は、最低額27万円(賃料6か月分)から最高額8億3000万円(借家権価格、移転費用等、営業補償の合計額)まで幅があり、報告書自身が、立退料は諸事情の総合考慮によるものであって立退料の目安や算定基準・方法等を示すことには「そもそもなじまない」と述べています。

第二に、「賃料の何か月分」という表現は、算定の結果を賃料で割り戻した数字にすぎず、算定の根拠ではありません。同じ1,000万円という実額でも、賃料が安く借家権価格や営業補償が積み上がった事案では「賃料100か月分」と表示され、賃料の高い大型店舗の事案では「数か月分」と表示されます。月数表示は、事案の比較を分かりやすくする便宜であって、金額を決める基準ではないのです。

「相場だから」という貸主側の説明を聞いたら、「その相場の根拠は何か」を問い返してください。多くの場合、答えは「一般的にそう言われている」にとどまります。金額は、相場からではなく、事案の中身と証拠から生まれます。

借家権割合という計算式の使い方と限界

立退料の算定で「借家権価格」を求めるとき、実務でしばしば持ち出されるのが、相続税の財産評価で用いられる借家権割合です。国税庁の財産評価基準では、借家権割合は現在すべての地域で30%とされており、これを用いて「更地価格×借地権割合×借家権割合×借家部分の面積割合」といった式で借家権価格を求める方法が、鑑定や裁判例で参照されることがあります。

この方法は、根拠が明快で説明しやすい反面、限界もあります。相続税の評価基準は課税のための画一的な割合であって、個別の借家の交渉力や営業価値を反映したものではありません。裁判例の中には、借家権価格をそのまま採用したものもあれば、その2分の1や3分の2に調整したもの、借家権価格は補償の対象にならないとして移転実費と営業補償だけで算定したものもあります。借家権割合による計算は、金額を組み立てる一つの材料であって、それだけで結論が出るものではないと理解しておくのが安全です。第5講と第8講で、この計算式が裁判例の中でどのように使われているかを見ていきます。

法的性質が交渉に与える意味

立退料の法的性質から、交渉の場面で意味を持つ点をいくつか挙げておきます。

受け取った立退料の使途は自由です。損害賠償ではないため、実際に引越費用がいくらかかったかの精算を求められる筋合いのものではありません。内訳を積み上げて総額を最大化する交渉技術は、この点で生きてきます。もっとも、内訳は税務上の所得区分に影響するので、合意書での書き方には設計が必要です(第18講)。

立退料が「申出」である以上、合意に至るまでは貸主側もいつでも撤回できます。逆に、合意書を締結すれば、立退料は合意に基づく債権となり、借主は貸主に対して支払いを請求できる立場になります。「請求権がない」立退料が「請求権のある」金銭債権に変わる瞬間が、合意書の締結です。だからこそ、合意書の内容――金額、支払期日、明渡しとの順序、条件――は、署名の前に細部まで確認する必要があります(第15講・第17講)。

定期建物賃貸借では、期間満了で契約が終了し、正当事由が要求されないため、立退料を申し出る法律上の必要が貸主側にありません(第2講)。それでも、早期退去への協力金や、再契約をしない代わりの一時金が任意に支払われることはあります。これは正当事由を補完する立退料とは性質が異なり、純粋に双方の経済合理性で決まる金銭です。

PRACTICE NOTE

提示額を読むための六つの問い

貸主側から金額が提示されたとき、その数字を受け取るかどうかを判断する前に、次の六つを確かめてください。答えが出ない問いがあれば、それが交渉で相手に開示を求めるべき点です。

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問いなぜ確かめるのか
①提示額の内訳は示されているか「一式」の提示は、算定根拠がないか、根拠を見せたくないかのどちらか。内訳を求めることで、抜けている項目(営業補償、賃料差額、内装の損失)が見える
②その額は、貸主の必要性の強さに見合っているか正当事由が弱いほど、補完に必要な立退料は高くなる。貸主の計画が抽象的なまま低額の提示をしているなら、天秤の読みが甘い
③自分が失うものを、金額で言えるか引越費用、新規契約費用、賃料差額(何年分か)、内装の残存価値、休業損害、得意先の喪失。自分の数字がなければ、相手の数字を評価できない
④「相場」「基準」と言われたら、その根拠は何か法律上の基準は存在しない。賃料の月数は結果の表示にすぎない
⑤金額以外の条件はどうなっているか明渡時期の猶予、原状回復の免除、敷金の全額返還、移転先の紹介。金額の低さを条件で補える場合と、条件の悪さが金額を食う場合がある
⑥この提示は「初回」か、「最終」か立退料の額は判例上、最後まで動く。相手が「最終提示」と言っても、法的にそう扱われるわけではない。応じる期限を切られても、その期限に法律上の意味はない

六つの問いに答えられる状態になってから返事をする。それだけで、交渉の組み立ては変わります。

実務チェック

  • 立退料は貸主の申出であり、応じる義務はないことを前提に、提示に対して回答を保留した。
  • 提示額の内訳と算定根拠の開示を、書面で求めた。
  • 貸主側の必要性の強さ(第3講の領域A・B・C)と、提示額の水準が釣り合っているかを検討した。
  • 自分が失うものを項目ごとに金額化する作業を始めた(第5講以下)。
  • 金額以外の条件(明渡時期、原状回復、敷金、移転先)を、金額と一緒に検討する表を作った。
  • 提示額と説明の変遷を、日付とともに記録している。

よくある質問

立退料を請求する権利がないなら、交渉で「請求」するのはおかしいのですか。

おかしくありません。法律上の請求権がないというのは、裁判所に「立退料○○円を支払え」という判決を求める訴えを借主側から起こすことができない、という意味です。交渉の場面では、貸主が明渡しを求めている以上、借主は「この条件でなければ応じない」と条件を示すことができ、その条件の中心が立退料です。貸主側にとっても、正当事由を補完するために立退料を申し出ることは、明渡しを実現する唯一の現実的な手段であることが多いのです。交渉で金額を主張することは、権利の行使ではなく、条件の提示です。

貸主が「これが最終提示。期限までに応じなければ訴訟にする」と言っています。

「最終」かどうかを決めるのは貸主の一方的な宣言ではありません。判例上、立退料の申出や増額は事実審の口頭弁論終結時まで考慮されるため、訴訟になっても金額は動き得ますし、実際に訴訟の中で提示額が引き上げられることは珍しくありません。また、訴訟になったからといって直ちに明渡し義務が生じるわけではなく、判決または和解まで従前どおり建物を使用できます(第16講)。期限を切られたことに法律上の意味はありませんので、内容を検討してから回答してください。

判決で立退料が決まった場合、その金額を受け取らずに居続けることはできますか。

引換給付判決が確定した場合、貸主が立退料を支払うか、受領を拒んだ借主のために供託するなどして提供したことを証明すれば、明渡しの強制執行を開始できます(民事執行法31条1項)。したがって、受領を拒めば居続けられるというものではありません。判決で明渡しが命じられる見通しであれば、判決前の和解で明渡時期の猶予や金額以外の条件を確保するほうが、借主側にとって有利な結果になることが多いのが実情です。

立退料は「賃料の何か月分」で決まると聞きました。

賃料の月数は、算定された金額を賃料で割り戻して表示したものにすぎず、金額を決める基準ではありません。法務省が公表した調査研究報告書でも、立退料の算定要素は借家権価格、移転費用等、営業補償など多様であり、立退料の目安や算定基準・方法等を示すことには「そもそもなじまない」とされています。同じ実額でも、賃料が安ければ月数は大きく、高ければ小さく表示されます。月数ではなく、内訳で考えてください。

受け取った立退料の使い方に制限はありますか。

ありません。立退料は損害賠償ではなく、正当事由を補完するための給付ですので、実際の引越費用との精算を求められることもありません。ただし、立退料の内訳は、受け取る側の所得税や法人税の取扱いに影響します。個人の借主の場合、借家権の消滅の対価に当たる部分は譲渡所得、収入や必要経費の補填に当たる部分は事業所得等、それ以外は一時所得として扱われるのが基本です(第18講)。合意書の内訳の書き方は、税務の観点からも設計しておくべき事項です。

この講の主な根拠条文・裁判例・資料

  • 借地借家法〔e-Gov法令検索〕28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)、38条(定期建物賃貸借)
  • 民事執行法〔e-Gov法令検索〕31条1項(反対給付との引換えにすべき給付についての強制執行の開始要件)
  • 最判昭和46年11月25日民集25巻8号1343頁立退料等の金員の提供は、それのみで正当事由の根拠となるものではなく、他の諸般の事情と総合考慮され、相互に補充し合って正当事由の判断の基礎となるとした判例。貸主が300万円またはこれと格段の相違のない範囲内で裁判所が決定する金員の支払を申し出ていた事案で、申出額を超える立退料の支払と引換えに明渡しを命じることができるとした
  • 最判平成3年3月22日民集45巻3号293頁解約申入れ後の立退料の申出や増額も考慮して、当初の解約申入れの正当事由を判断できるとした判例
  • 最判平成6年10月25日民集48巻7号1303頁借地について、立退料等の提供・増額の申出は事実審の口頭弁論終結時までにされたものであれば原則として考慮できるとした判例
  • 法務省「借地借家法の更新拒絶等要件に関する調査研究報告書」(令和7年3月、公益社団法人商事法務研究会、令和7年10月公表)認定立退料の最低額27万円(賃料6か月分)、最高額8億3000万円(借家権価格、移転費用等、営業補償の合計額)。立退料の算定要素と算定方法の多様性についての整理
  • 国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」借地権割合・借家権割合の確認先

条文のリンクは法令本文へ移動します。記載の条番号から各規定をご覧ください。裁判例の原文は、裁判所ウェブサイトの裁判例検索や判例集で裁判年月日から確認できます。本講の記載は執筆時点の法令・裁判例に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。解決実績に関する記載は個別事案の結果であり、同種事案の結果を保証するものではありません。

執筆者 坂本龍亮(さかもと りょうすけ)

明徳法律事務所 代表弁護士(大阪弁護士会所属)。不動産法務(立ち退き・建物明渡し・賃料紛争・再開発対応)と企業法務・事業承継を中心に取り扱う。立ち退き分野では、債務不履行解除を理由に「0円退去」を求められていた中華料理店の代理人として8,000万円の立退料を獲得した実績を持つほか、ディベロッパー側の代理人として建替え・再開発に伴う立ち退き案件にも多数関与し、貸主・借主双方の実務に精通する。大阪公立大学法学部非常勤講師。

立ち退き・立退料・建物明渡しに関するご相談は、明徳法律事務所(大阪市西区江戸堀)まで。お問い合わせ先:info@meitoku-law.jp

公開日 2026年8月9日/改訂日 2026年9月23日  執筆者 坂本龍亮、お問い合わせ先:info@meitoku-law.jp

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