第19講第Ⅴ部 実戦編――相手を知り、味方を選ぶ
貸主・ディベロッパーは何を考えているか――相手の手の内から逆算する交渉術
予算、時間、稟議。求める側の実務を知る者が、求められる側の守り方を知る
この講の結論
当事務所は、借主側の代理と並んで、ディベロッパーや不動産事業者側の代理人として建替え・再開発に伴う立ち退き案件に多数関与してきました。その経験から見える事業者側の意思決定には、構造があります。立退関連費用は事業収支の中に予算枠として組まれ、初回提示はその下方から始まり、増額の権限は段階的に設定されています。時間の価値は双方で非対称で、事業者にとってテナント一件の未解決は着工遅延という金融コストと機会損失に直結します。事業者は借主を「紛争の解像度」で分類しており、法的に的確な主張をする借主に対して提示が変わるのは、担当者の感情ではなく訴訟リスクの再計算の結果です。そして、事業者の多くは適正な補償による円満な合意を望んでいます。借主側が失うものを的確に言語化し、事業者側の予算とスケジュールの中で合理的な着地点を示すこと。両側を知る代理人の仕事は、対立を煽ることではなく、この「翻訳」によって適正条件での解決を早めることだと考えています。
当事務所が「両側」をやってきた理由
この連載は、立ち退きを求められた方のために書いています。ただ、当事務所は、借主側の代理と並んで、ディベロッパー・不動産事業者側の代理人として、建替えや再開発に伴う立ち退き案件に多数関与してきました。利益相反のない範囲で両側の実務を経験していることは、借主側で戦うときの最大の武器です。相手の意思決定の構造が分かるからです。
事業者側の代理人として立ち退き案件に関わると、借主側からは見えないものが見えます。事業収支の中で立退費用がどう予算化されているか、増額の判断が誰のどのような稟議で決まるか、どの時点で訴訟に切り替える判断がされるか、そして担当者が借主のどのような言動を見て社内に何を報告しているか。この講では、守秘義務に反しない一般的な範囲で、その構造を開示します。
事業収支の中の「立退費用」
建替えや再開発の事業計画には、事業収支表があります。土地建物の取得費、既存建物の解体費、設計・建設費、金融コスト、販売・賃貸の収入見込み。その中に、既存のテナントや入居者を退去させるための費用――立退料、移転先の手当て、交渉に要する費用、そして訴訟になった場合の費用と遅延コスト――が、予算枠として組み込まれています。
第18講で見たとおり、事業者が土地建物を取得する際にそこを使用していた者に支払う立退料は、税務上、土地建物の取得費または取得価額になります。つまり事業者にとって立退料は、事業用地を「空の状態で」取得するための原価の一部です。予算枠は、テナントの数、業種、営業年数、賃料水準などから、過去の案件の経験値をもとに見積もられます。
ここから、借主側にとって重要なことが分かります。立退料は、事業者にとって想定外の支出ではなく、最初から予算化された費目であるということです。「そんな金額は払えない」という担当者の言葉は、多くの場合、「その金額は現在の稟議の枠を超えている」という意味であって、事業として支払えないという意味ではありません。
提示額には「上げ代」が織り込まれている
初回提示は、予算枠の下方から始まるのが通常です。担当者は、初回提示で合意できればそれが最も低コストであることを知っています。そして、交渉の進展や訴訟リスクの顕在化に応じて増額できるよう、担当者、上司、役員会といった段階ごとに増額の権限が設定されています。
表は横にスクロールできます。
| 段階 | 提示の性格 | 増額の判断者(典型) | 借主側の見方 |
|---|---|---|---|
| 初回提示 | 「引越費用相当」「賃料○か月分」など、予算枠の下限に近い額。内訳は示されないことが多い | 担当者レベル | この額で決めることは、ほぼ常に早すぎる。回答を保留し、内訳と根拠を求める |
| 第二次提示 | 借主の反応を見て、担当者の裁量の範囲で増額。「特別に」「今回限り」という言葉が添えられる | 担当者・課長レベル | まだ裁量の範囲内。借主側の積算(第5講〜第7講)を示し始める段階 |
| 第三次提示以降 | 借主側に専門家が就き、法的に的確な主張が出てきた段階で、上位の稟議を経た増額 | 部長・役員レベル | 訴訟リスクの再計算が反映される。金額以外の条件(明渡時期、原状回復免除)も動き始める |
| 訴訟提起前後の最終提示 | 訴訟コストと遅延コスト、正当事由が否定されるリスクを織り込んだ額。和解案として示されることもある | 役員会・事業部門の最終判断 | 「最終」と言われても、判例上、立退料は事実審の口頭弁論終結時まで動く(第4講) |
この構造は、借主を欺くためのものではありません。企業として支出を管理するための、通常の意思決定の仕組みです。だからこそ、借主側は、この仕組みを前提にして、初回提示で決めない、増額の根拠になる材料(積算と法的主張)を段階的に示す、という進め方が合理的になります。
時間の価値は双方で非対称である
事業者にとって、テナント一件の未解決は、着工の遅延に直結します。着工が遅れれば、土地の取得のために借り入れた資金の金利負担が続き、建設費の上昇リスクを負い、竣工後の賃貸・販売収入の開始が遅れます。先に合意して退去した他のテナントへの約束、金融機関との約定、場合によっては行政との協議のスケジュールも動きます。事業規模が大きければ、一か月の遅延が数百万円から数千万円のコストになることもあります。
借主にとっての時間は、これと非対称です。契約が継続している以上、借主は従前どおり住み、営業を続けることができます。時間が経つこと自体に大きなコストはありません。この非対称が、借主側の「急がない」という選択に経済的価値を与えます。事業者側は、遅延コストと立退料の増額を比較し、増額のほうが安ければ増額を選びます。
ただし、時間の価値の使い方には技術が要ります。引き延ばし自体を目的化して、合理的な提示にも応じない態度を続ければ、事業者側は「交渉では解決しない」と判断し、訴訟に切り替えます。訴訟になれば、事業者側の遅延コストは訴訟期間分だけ増えますが、借主側も、正当事由が認められる事案では判決による明渡しのリスクを負います。時間の価値は、「合理的な条件であれば応じる用意がある」という姿勢と組み合わせたときに、最も大きく働きます。
事業者側の意思決定のタイムライン
図1 事業者側から見た立ち退き案件の進行
- 1用地取得・事業計画の策定既存テナントの状況を調査し、立退費用の予算枠と着工までのスケジュールを組む。この時点で、各テナントの契約タイプ(普通借家か定期借家か)と営業年数が把握され、「難航しそうなテナント」が見立てられている。
- 2通知と初回交渉更新拒絶または解約申入れの通知を送り、担当者が個別に訪問して初回提示を行う。ここで即答するテナントが一定数いることを、事業者側は経験的に知っている。
- 3交渉の進行と分類各テナントの反応を「合意見込み」「条件交渉中」「難航」に分類し、難航案件について増額稟議と法的対応の検討を始める。借主側に専門家が就いたテナントは、この段階で別枠の扱いになる。
- 4増額判断と訴訟判断の分岐遅延コストと増額コストを比較。合意の見込みがあれば増額、なければ訴訟提起の判断。訴訟は事業者側にとっても時間と費用と敗訴リスクを伴う重い選択。安易には選ばれない。
- 5訴訟中の和解模索訴訟の進行と裁判所の心証を見ながら、和解案を検討。着工スケジュールとの関係で、和解の期限が事業者側に生じる。訴訟上の和解は、事業者側にとっても「確定的に明渡しを得る」手段として合理的。
- 6全テナント退去・解体着工最後のテナントの退去で、事業は次の段階に進む。最後まで残ったテナントの条件が、先に合意したテナントより良くなることは、この構造上、現実に起きる。
③と④が、借主側の主張が事業者側の意思決定に最も強く影響する局面。
「最後の1軒」の力学
複数テナント案件では、早期に応じたテナントと粘ったテナントで条件が異なることが現実に起こります。理由は前節までで述べたとおり、時間の価値が事業者側で大きく、最後に残ったテナントの未解決が事業全体を止めるからです。
他方、事業者側にも「最後の1軒」に安易な突出条件を出せない事情があります。第一に、先に合意したテナントに条件が知られれば、不公平感から紛争が再燃する危険があります。第二に、突出条件を出した事実が業界内で知られれば、同社の他の案件でテナントの期待水準が上がります。第三に、社内の稟議として、他のテナントとの整合性を説明できない増額は通りにくい。したがって、事業者側は、最後の1軒に対しても「説明可能な範囲」での増額と、金額以外の条件(明渡時期の猶予、原状回復免除、移転先の手当て)の組合せで着地を探ります。
借主側から見ると、「最後まで残れば必ず得をする」わけではなく、「最後まで残ったテナントには、説明可能な範囲で最大限の条件が示される傾向がある」ということです。案件内の交渉状況を読み、事業者側が説明可能な範囲の上限を見立てることが、適正な着地点の発見につながります。
事業者は借主を「紛争の解像度」で分類している
事業者側の担当者は、借主との面談のたびに社内に報告を上げます。その報告の中で、借主は、おおむね次のように分類されています。
表は横にスクロールできます。
| 事業者側の分類 | 借主の言動 | 事業者側の対応 |
|---|---|---|
| 即応型 | 初回提示で応じる、または退去の意向を示す | 速やかに合意書を締結する。条件は初回提示のまま |
| 感情的拒絶型 | 「絶対に出ない」「話も聞かない」。法的な主張はなく、感情的な反発が中心 | 「交渉不能」として報告される。増額の稟議は通りにくく、早期の訴訟移行が検討される |
| 条件交渉型(根拠なし) | 「もっと出せ」と言うが、金額の根拠を示せない | 担当者裁量の範囲で少額の増額をし、それで応じなければ訴訟を検討 |
| 条件交渉型(根拠あり) | 正当事由の弱点を指摘し、営業補償を積算し、裁判例を引いて相当額を示す。専門家が就いている | 訴訟リスクを再計算し、上位の稟議で増額。金額以外の条件も検討。和解の可能性を最優先で探る |
専門家を立てた借主に対して提示が変わるのは、担当者の感情ではなく、訴訟リスクの再計算の結果です。感情的拒絶型の借主は、事業者側に「訴訟で勝てる」と見込まれ、条件交渉型(根拠あり)の借主は、「訴訟になれば正当事由が否定されるか、高額の立退料が認定されるかもしれない」と見込まれる。この見込みの差が、社内の増額稟議の通り方の差になります。
事業者が最も避けたい三つの事態
事業者側の意思決定を逆算するには、事業者が何を最も避けたいかを知ることが近道です。
第一に、正当事由が否定されて計画そのものが頓挫することです。第8講で見た東京地判令和4年10月14日のように、建替えの必要性が認められても提示額の不足で請求が棄却されれば、事業は止まります。この事態を避けるために、事業者は、訴訟になった場合に裁判所が認定しそうな額を見積もり、それを下回る提示で訴訟に突入することを恐れます。借主側が相当額の積算を示すことは、事業者のこの恐れに直接働きかけます。
第二に、着工の大幅な遅延です。訴訟が第一審で1年半から2年、控訴審でさらに1年かかれば(第16講)、事業収支は大きく崩れます。事業者側が訴訟を選ぶのは、それでも交渉より安いと判断したときだけです。
第三に、コンプライアンス上の問題と評判の悪化です。弁護士でない業者を使った強引な交渉が弁護士法72条の問題を指摘される(第15講)、高齢の借主への圧力が報道される、行政や金融機関の目に触れる。上場企業や大手事業者ほど、この種のリスクに敏感です。借主側が法的に的確で冷静な主張をすることは、事業者側にとって「この借主とは適正な条件で円満に解決したほうがよい」という判断を促します。
個人の大家の思考は別である
ここまで述べた構造は、事業者(法人)を相手にする場合のものです。貸主が個人の大家である場合、思考の構造は異なります。事業収支表も稟議もなく、意思決定は本人(と家族)の判断です。動機は、老朽化した建物の維持費と修繕負担、相続税の納付、子への承継、賃貸経営からの引退など、生活に密着したものが多く、時間の価値も事業者ほど大きくありません。
個人の大家との交渉では、予算枠の「上げ代」を読むより、大家自身が何を必要としているかを理解することが着地点の発見につながります。売却が目的なら賃借人付きでの売却や借主側の買取りの可能性、建替えが目的なら新建物への再入居や明渡時期の調整、相続が背景なら相続人全員の意向の確認。事業者相手の「訴訟リスクの再計算」を促す進め方は、個人の大家に対しては、感情的な対立を招いて逆効果になることもあります。相手が誰かによって、同じ法律の下でも交渉の組み立ては変わります。
「敵を知る」ことは、円満解決への近道でもある
誤解を恐れずに言えば、事業者側の多くは、適正な補償による円満な合意を望んでいます。強引な手法は、非弁の問題、訴訟リスク、評判のリスクを伴い、事業者自身にとって合理的ではないからです。事業者側の担当者が借主に対して強い言葉を使うことがあるとしても、それは多くの場合、担当者個人の交渉技術の問題であって、会社としての方針ではありません。
借主側が失うものを的確に言語化し、事業者側の予算とスケジュールの中で合理的な着地点を示すこと。両側を知る代理人の仕事は、対立を煽ることではなく、この「翻訳」によって適正条件での解決を早めることだと、当事務所は考えています。借主側にとっての最善の結果は、多くの場合、訴訟で勝つことではなく、失うものを正しく補償され、十分な準備期間をとって、円満に移ることです。事業者側の意思決定の構造を知ることは、その結果に最短で到達するための地図です。
PRACTICE NOTE
攻めどきと引きどきの判断表
表は横にスクロールできます。
| 事業者側の状況 | 読み取り方 | 借主側の対応 |
|---|---|---|
| 着工予定が近い。他のテナントの多くが退去済み | 時間の価値が最大化している。事業者側の遅延コストが大きい | 攻めどき。相当額の積算と金額以外の条件を揃えて示す。ただし合理的な範囲を超えた要求は訴訟移行を招く |
| 計画が抽象的で、資金や時期が未定 | 事業者側に急ぐ動機が乏しい。正当事由も弱い | 急ぐ必要がない。正当事由の弱さを指摘し、資料の開示を求めつつ、時間を味方にする |
| 担当者から上司・役員が交渉に出てきた | 上位の稟議が動いている。増額の準備がある | 積算の根拠を丁寧に示す。金額以外の条件をこの段階で組み込む |
| 弁護士が代理人として就いた | 訴訟を視野に入れている。法的な主張への応答が始まる | 感情ではなく法律で応じる。借主側も代理人を立て、代理人同士の交渉に移す |
| 「最終提示」と明言し、期限を切ってきた | 訴訟判断の直前。ただし判例上、金額は最後まで動く | 期限に法律上の意味はないが、訴訟になった場合の見通し(領域A・B・C)を冷静に見立てて応じるか判断する |
| 訴訟提起後、裁判所が和解を勧めた | 事業者側にも和解の期限(着工)がある。裁判所の心証が示される | 判決の見通しと和解案の全体の価値を比較。金額以外の条件を最大限組み込む(第16講) |
| 相手が個人の大家である | 事業収支や稟議の構造はない。動機は生活に密着 | 大家の必要性を理解し、売却・建替え・相続の背景に応じた着地点(買取り、再入居、時期調整)を探る |
攻めどきと引きどきの判断は、相手の状況を読むことと、自分の事案の見立て(第3講の領域A・B・C)を組み合わせて行います。相手の弱みだけを見て自分の事案の弱みを見ない交渉は、訴訟で裏目に出ます。
実務チェック
- 相手が事業者(法人)か個人の大家かを確認し、交渉の組み立てを分けて考えた。
- 事業者の場合、着工予定、他のテナントの状況、資金計画から、時間の価値の大きさを見立てた。
- 初回提示を「予算枠の下限」として受け止め、内訳と根拠を求めた。
- 自分の主張を「根拠のある条件交渉型」として組み立てた(積算、正当事由の指摘、裁判例)。
- 交渉に出てくる相手の役職の変化、弁護士の関与、「最終提示」の宣言を、事業者側の意思決定の段階として記録した。
- 引き延ばし自体を目的化せず、「合理的な条件であれば応じる用意がある」姿勢を維持している。
- 金額以外の条件(明渡時期、原状回復免除、移転先の手当て)を、増額と組み合わせて提示できる状態にした。
よくある質問
担当者が「これ以上は会社として出せない」と言っています。本当ですか。
多くの場合、「現在の稟議の枠を超えている」という意味です。事業者の立退費用は事業収支の中に予算化されており、増額の権限は段階的に設定されています。担当者の裁量を超える増額には上位の稟議が必要で、その稟議を通すには、訴訟リスクの再計算を正当化する材料(借主側の積算、正当事由の弱点、裁判例)が要ります。借主側がその材料を示すことが、担当者に稟議を上げさせる方法です。
最後まで残れば、条件は必ず良くなりますか。
必ずではありません。事業者側の時間の価値が大きいため、最後まで残ったテナントに説明可能な範囲で最大限の条件が示される傾向はありますが、事業者側には先に合意したテナントとの整合性や社内の稟議という制約があり、突出した条件は出せません。また、合理的な提示にも応じない態度を続ければ、訴訟に切り替えられ、正当事由が認められる事案では判決による明渡しのリスクを負います。「最後まで残る」ことではなく、「合理的な条件を根拠とともに示し続ける」ことが、良い条件につながります。
他のテナントはいくらで合意したのか、聞き出せますか。
事業者側は各テナントとの条件を秘密にするのが通常で、合意書に秘密保持条項を入れることも多いため、事業者から直接聞き出すことは難しいでしょう。テナント同士で情報を共有することは可能ですが、それぞれの業種・営業年数・失うものが異なるため、他のテナントの金額がそのまま自分の事案の基準になるわけではありません。他のテナントの状況は、事業者側の姿勢と建替えの実現可能性を読むための情報として使い、自分の条件は自分の事案の積算で組み立ててください。
先生は貸主側もやっているのに、借主側で本当に戦ってくれるのですか。
同一の案件で貸主側と借主側の双方を代理することは、利益相反として弁護士法と弁護士職務基本規程で禁じられており、当事務所も当然に行いません。別々の案件で両側の代理を経験していることは、相手の意思決定の構造を知っているという意味で、ご依頼者の利益になります。ご依頼を受けた案件では、ご依頼者の側で最善を尽くすことに何の留保もありません。ご相談の際には、相手方との関係の有無を最初に確認いたします。
大家が個人で、高齢です。事業者のような交渉は通用しますか。
通用しにくいことが多いでしょう。個人の大家には事業収支表も稟議もなく、動機は建物の維持費、相続、承継、賃貸経営からの引退といった生活に密着したものです。時間の価値も事業者ほど大きくありません。個人の大家との交渉では、大家自身が何を必要としているかを理解し、売却なら賃借人付きの売却や買取り、建替えなら再入居や時期の調整、相続なら相続人の意向の確認といった、背景に応じた着地点を探るほうが結果につながります。法律上の権利(正当事由、立退料)は同じですが、その主張の仕方は相手によって変わります。
この講の主な根拠条文・裁判例・資料
- 借地借家法〔e-Gov法令検索〕28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
- 弁護士法〔e-Gov法令検索〕25条(職務を行い得ない事件)、72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
- 弁護士職務基本規程27条・28条(職務を行い得ない事件)
- 最判平成3年3月22日民集45巻3号293頁立退料の申出・増額は当初の解約申入れの正当事由の判断で考慮できるとした判例(第4講参照)
- 東京地判令和4年10月14日建替えの必要性を認めつつ、貸主の申出額が相当額に遠く及ばないとして請求を全部棄却した裁判例(第8講参照)
- 最決平成22年7月20日刑集64巻5号793頁不動産業者による立ち退き交渉の代行について弁護士法72条違反の罪の成立を認めた決定(第15講参照)
- 国税庁タックスアンサーNo.1382「立退料を支払ったとき」土地建物等を取得する際に支払う立退料は取得費または取得価額になる(第18講参照)
条文のリンクは法令本文へ移動します。記載の条番号から各規定をご覧ください。本講に記載した事業者側の意思決定の構造は、当事務所の経験に基づく一般的な傾向であり、すべての事業者・案件に当てはまるものではありません。本講の記載は執筆時点の法令・裁判例に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。
公開日 2026年8月9日/改訂日 2026年9月23日 執筆者 坂本龍亮、お問い合わせ先:info@meitoku-law.jp