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『不動産オーナーの相続24講 ― 地主と大家の教科書 ―』【第14講】

実家は残し、取り分も守る ― 不動産の分け方を組み合わせる

第14講不動産オーナーの相続24講

実家は残し、取り分も守る ― 不動産の分け方を組み合わせる

地主と大家の教科書 | 明徳法律事務所

掲載ページ | 改訂日:2026年9月18日

「売れば平等。でも、母が住んでいる」「兄が継ぎたいと言うが、現金を持っていない」。不動産の相続では、法律上の取り分が分かっても、家族が実行できる分け方が見つからないことがあります。

この講の要点分割方法は一つに決めなくて構いません。残す物件・売る物件・生活資金を組み合わせ、各人の取得額と支払能力を合わせることが解決の入口です。

代表的な4つの方法を、道具として使う

方法 具体的な分け方 先に確認すること
現物分割 長女が自宅、次女が駐車場を取得 価格差、収益差、土地を分けた後の接道
代償分割 一人が不動産を取得し、他の人へ金銭を払う 支払原資、融資、支払時期、担保
換価分割 不動産を売り、売却代金を分配 売却権限、価格、税金、諸費用の負担
共有とする分割 各人が一定の持分を取得 管理・費用・収益分配と、将来共有を終える方法

これは代表的な整理であり、法律上の選択肢がこの4つの単純形に尽きるわけではありません。自宅を代償分割、遊休地を換価分割とする組合せや、合意による一部分割も考えられます。分割は財産の種類・性質、各人の職業や生活状況なども考慮して行います。民法906条・907条

「坪数を半分にする」現物分割は、必ずしも公平ではありません。奥の土地が接道を失う、駐車場の出入口が狭くなるなど、分けたために全体の価値が下がることもあります。

最初に決めるのは、誰が何を必要としているか

検討の順序は、①住まいと事業を続けるため残す必要のある物件、②各人が必要とする現金、③借入れ・税金・修繕費、④売却可能な物件です。

その上で、複数案について「取得する不動産」「受け取る現金」「支払う金額」「今後の負担」を同じ表に並べます。額面の評価額が等しくても、空室の多いアパートと現金では、流動性も管理負担も違います。ただし、その違いをどう価格や配分に反映するかは、資料に基づく合意が必要です。

設例:自宅を売らずに、現金の取り分を作る

※説明のための架空事例です。実際の受任実績ではありません。

相続人は姉弟2人。自宅4,000万円、遊休地3,000万円、預金1,000万円があり、特別受益等はないとします。姉は自宅を希望し、弟は現金を希望しています。

単純化すれば、姉が自宅、弟が遊休地と預金を取得する案があります。しかし弟が遊休地の売却を望むなら、売却後の税・費用を含めた換価分割案も比較すべきです。「同じ4,000万円」と記載する前に、手取りと換金までの期間を確認します。

配偶者居住権は「住む」と「所有する」を分ける方法

配偶者居住権を使い、配偶者が自宅に住む権利を取得し、子がその負担付きの所有権を取得する設計もあります。自宅所有権をすべて配偶者へ渡す場合より、配偶者が現預金を取得する余地を作れることがあります。

ただし、法律上の配偶者が相続開始時に被相続人の建物に居住していたことなどが必要です。被相続人がその建物を配偶者以外の者と共有していた場合は設定できません。遺産分割や遺贈等による取得が必要で、住んでいたから自動的に長期の権利が発生するわけでもありません。民法1028条以下

譲渡できない権利なので、施設入所後の資金需要や将来の売却にも注意します。居住権の評価額、修繕負担、登記、権利を解消する際の税務まで含めて採否を決めます。

分け方を決める前の実務チェック

  • 各案について、納税後に残る生活資金を確認したか。
  • 代償金を払う人は、金額だけでなく支払原資を示せるか。
  • 売却する場合の最低価格、値下げ、費用負担、入金先を決めたか。
  • 共有にするなら、終える時期や買取り・売却のルールを検討したか。

よくあるご質問

Q.住みたい人がいると、必ずその人が取得できますか。
居住の必要性は考慮されますが、それだけでは決まりません。他の相続人の取得分、代償金の支払可能性なども問題になります。

Q.税金を払うため、土地一つだけ先に売れますか。
権利関係と必要な同意を確認して進める余地があります。ただし、一部を先に処分すると残った財産の分割に不利益を生じる場合があるため、代金の帰属と残余財産の扱いも決めます。

明徳法律事務所への相談で整理すること

「売るか、残すか」の二択で止まった話を、実行できる複数案へ組み直します。物件一覧と、各人の希望・必要資金をご用意ください。評価、代償金、居住、債務、税務確認をつなぎ、合意後の登記・支払・引渡しまで見通した分割案を検討します。

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