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『不動産オーナーの相続24講 ― 地主と大家の教科書 ―』【第15講】

「とりあえず共有」で本当に大丈夫? ― 管理と出口の決まらない不動産を残さない

第15講不動産オーナーの相続24講

「とりあえず共有」で本当に大丈夫? ― 管理と出口の決まらない不動産を残さない

地主と大家の教科書 | 明徳法律事務所

掲載ページ | 改訂日:2026年9月18日

「兄弟で半分ずつなら公平」「売るかどうかは後で決めよう」。共有という結論は、目の前の対立をいったん収めやすい一方で、修繕・賃貸・売却のたびに次の協議を必要とします。

この講の要点共有が常に失敗というわけではありません。ただ、意思決定と共有を終える方法が決まっていない共有は、問題を次世代へ持ち越しやすい形です。 持分だけを決めて完了にしないことが大切です。

一人でできること、過半数で決めること、全員で決めること

行為 原則的な判断の仕組み
現状を維持する保存行為 各共有者が単独でできる
管理、形状・効用の著しい変更を伴わない軽微変更 持分価格の過半数で決める
不動産全体の売却、重大な変更を伴う建替え等 原則として共有者全員の同意が必要

「過半数」は人数ではありません。兄弟2人が各2分の1なら、一方だけでは過半数に達しません。また、共有者間の決定に基づいて使用している共有者へ特別の影響を与える管理決定には、その人の承諾が必要です。修繕という名称だけで保存行為と決まるわけでもなく、工事の内容・規模で判断します。民法251条・252条

「3年以内の建物賃貸なら多数決」の落とし穴

民法252条4項は、建物3年以内、原則として土地5年以内などの短期の賃借権等について、管理のルールによる設定を認めています。

ただし、契約書に「2年」と書けば、普通借家契約を必ず過半数だけで締結できる、という意味ではありません。 借地借家法の更新・存続保障によって実質的な拘束が長期化する場合は、短期賃貸として処理できるか別途検討が必要です。定期借家にも書面・事前説明等の要件があります。「空室を埋めたい」という理由だけで、権限確認を飛ばして契約してはいけません。民法252条4項、借地借家法26条・28条・38条

設例:家賃は折半、修繕は相手任せ

※説明のための架空事例です。実際の受任実績ではありません。

姉弟がアパートを2分の1ずつ取得。毎月の家賃を折半してきましたが、外壁修繕800万円の見積りが出ると、弟は支払に応じず、姉は管理をやめたいと言い始めました。

ここで必要なのは「家賃は平等なのに」という議論だけではありません。工事の緊急性・必要性、修繕積立て、過去の収支、意思決定権限を確認し、当面の管理と、持分買取り・全体売却等の出口を分けて協議します。共有の開始時点で積立てと退出のルールを用意していれば、争点を減らせた可能性があります。

遺産共有と、分割後の共有は、解消の手続が違う

相続が始まり分割前の状態にある「遺産共有」は、基本的に遺産分割で解消します。協議で「各2分の1ずつ取得する」と分割を終えた後の通常の共有は、共有物分割の問題になります。

また、「10年たてば自動的に通常の共有に変わる」という制度ではありません。10年経過後の具体的相続分の扱いと、遺産共有持分が混在する物件に関する共有物分割の特則は、別の制度です。例外・経過措置もあり、どの相続がいつ発生し、何を分割済みかの確認が先になります。民法258条の2・904条の3

共有を選ぶなら、最低限ここまで決める

  • 管理担当者、報告頻度、契約・工事の承認方法。
  • 家賃の分配前に確保する固定資産税・修繕・空室対応の資金。
  • 誰かが持分を手放したくなった場合の価格評価と買取り協議。
  • 売却を検討する時期、判断が一致しない場合の協議手順。

合意を作れば法定の共有物分割請求を無期限に封じられるわけではありません。分割禁止の合意にも期間制限があります。

よくあるご質問

Q.自分の持分だけなら売れますか。
原則として可能ですが、不動産全体の価格に持分割合を掛けた金額で売れるとは限りません。購入者が共有物分割を求めることもあるため、家族内買取りや全体売却と比較します。

Q.一人が反対し続ければ、共有は一生続きますか。
通常の共有では、協議が調わなければ裁判による共有物分割を検討できます。ただし、希望どおりの方法で終わる保証はなく、遺産共有ならまず手続の選別が必要です。

明徳法律事務所への相談で整理すること

共有前なら、単独取得や換価分割との比較を行います。既に共有している場合は、管理上の急ぎの問題と、持分買取り・売却・裁判による解消を整理します。登記簿に加え、過去の分割協議書、収支、修繕見積りがあると、手続と交渉の見通しを立てやすくなります。

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