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『不動産オーナーの相続24講 ― 地主と大家の教科書 ―』【第16講】

「実家は3,000万円? 5,000万円?」 ― 代償金を左右する評価と支払条件

第16講不動産オーナーの相続24講

「実家は3,000万円? 5,000万円?」 ― 代償金を左右する評価と支払条件

地主と大家の教科書 | 明徳法律事務所

掲載ページ | 改訂日:2026年9月18日

実家を取得する人は「古い家だから安い」と言い、現金を受け取る人は「近所の土地は高く売れた」と言う。両者が別の前提で話している限り、金額の中間を取っても納得は残りません。

この講の要点代償分割では、いつの、どの状態の、どの価格を使うかを合わせた上で、実際に払える条件まで決める必要があります。 価格だけ合意しても、支払が実現しなければ紛争は終わりません。

「税金の評価額」と「家族で分ける価格」を混同しない

遺産分割では、一般に分割時の不動産の時価を基準に評価します。相続税は原則として相続開始時の評価であり、特別受益等の計算でも別の基準時が問題になります。協議で評価額や基準日を合意することは可能ですが、何を合意したかを明確にします。

固定資産税評価額や路線価は、有用な資料でも、そのまま市場価格になるわけではありません。賃貸物件なら契約賃料、空室、修繕、借家関係が価格に影響します。自宅も再建築の可否、接道、越境、借地権等で評価が変わります。

査定額が割れたら、金額より前提を見る

まず複数の査定書を、次の条件で比較します。

  • 査定時点は同じか。売出し希望価格か、成約見込価格か。
  • 現況のままか、更地・空室・境界確定を前提にしているか。
  • 接道、借地借家、修繕、越境を織り込んでいるか。
  • 比較物件や収益計算の根拠が示されているか。

条件をそろえても重要な差が残る場合は、不動産鑑定士による評価を検討します。調停で査定が割れたら直ちに鑑定になるわけではありません。争点、価格差、費用、手続の段階を踏まえます。裁判所も、遺産分割を相続人・財産・評価・取得方法などの問題に分けて進めています。裁判所・遺産分割調停

設例:評価の1,000万円差が、代償金500万円差になる

※説明のための架空事例です。実際の受任実績ではありません。

相続人は兄妹2人。遺産は自宅だけで、兄が取得し、妹に代償金を払うとします。相続分は各2分の1で、債務・特別受益等はないものとします。

自宅4,000万円なら代償金は2,000万円、5,000万円なら2,500万円です。兄が「相続税評価額を使いたい」と考える一方、妹が市場価格を求めると、協議は止まります。まず評価の目的と基準をそろえ、その後に融資や支払期限を検討する順序が必要です。

将来売った場合の譲渡税や仲介手数料を、売らない代償分割でも当然に全額控除できるわけではありません。仮定の費用と、現実に必要となる費用を分けて交渉します。

住んでいる人に、直ちに家賃を請求できるとは限らない

被相続人の許諾を得て同居していた相続人について、特段の事情がなければ、遺産分割が終わるまでの使用貸借が成立していたと推認する判例があります。最高裁平成8年12月17日第三小法廷判決

ただし、すべての居住相続人が無期限・無償で住めるという意味ではありません。相続前の許諾、同居の有無、契約、相続後に入居した事情などで結論が変わります。法律上の配偶者については、配偶者短期居住権や配偶者居住権も別に検討します。「今住めるか」と「最終的に所有権を取得できるか」は分けて考えます。民法593条以下・1028条以下・1037条以下

支払条件まで含めて、代償分割を完成させる

「代償金2,000万円」とだけ書いても、現金は生まれません。融資審査、自己資金、相続税、修繕費を同じ資金計画に入れます。分割払いなら、各回の期限、遅延時の扱い、担保、強制執行を可能にする書面等を検討します。

登記の時期と代償金支払の時期も重要です。先に所有権を移し、代償金が未払いになった場合でも、遺産分割協議を簡単にやり直せるとは限りません。

よくあるご質問

Q.高い査定書を出した人が有利ですか。
査定額の高さだけでは決まりません。実際の物件条件と整合する根拠が必要です。相場より高い売出し価格と、成約の見込みを混同しないことも重要です。

Q.「家賃が入ったら払う」という条件で大丈夫ですか。
空室や修繕で払えなくなる可能性があります。家賃収入を原資とする場合も、支払期限と不足時の対応を決め、受取側が負担するリスクを確認します。

明徳法律事務所への相談で整理すること

査定書の数字を並べるだけでなく、価格差の原因と、法的に考慮すべき事情を整理します。居住を続けたい方も、公平な代償金を受け取りたい方も、査定書・登記簿・居住の経緯・資金計画をご持参ください。評価と支払条件を合わせて検討することで、署名後にも実行できる合意を目指します。

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