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『不動産オーナーの相続24講 ― 地主と大家の教科書 ―』【第18講】

相続税を払う現金がない ― 売却・延納・物納を期限から逆算する

第18講不動産オーナーの相続24講

相続税を払う現金がない ― 売却・延納・物納を期限から逆算する

地主と大家の教科書 | 明徳法律事務所

掲載ページ | 改訂日:2026年9月18日

「土地はある。でも、相続税を払う預金がない」。地主の相続では、資産額が大きいことと、期限までに現金を用意できることが一致しません。

この講の要点相続税の納付方法は、分割が終わってから考えるのでは間に合わないことがあります。申告期限を起点に、売却・借入れ・延納・物納の成立条件を並行して確認します。

未分割でも、申告・納付の期限は来る

相続税の申告・納付は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。申告が必要な場合、遺産分割がまとまらなくても期限は延びません。未分割の財産は原則として法定相続分等に従って取得したものとして申告します。

未分割部分については、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減をそのまま使えないことがあります。後日の適用には、分割見込書等の手続や分割・更正の請求の期限を確認します。「いずれ税金が戻る可能性」と「今の期限に納める資金」は別問題です。国税庁・相続財産が分割されていないときの申告

選択肢は、使える条件と費用で比較する

選択肢 確認の中心
預金・保険金等による納付 誰が取得し、いつ使える資金か
不動産売却 売却権限、境界、担保抹消、決済までの期間と手取り
金融機関からの借入れ 審査、担保、金利、将来の返済余力
延納 金銭一括納付が困難であること、担保、年賦返済能力
物納 延納でも金銭納付が困難であること、対象財産の適格性

「一番税金が安い方法」だけでは決まりません。収益性の高い物件を急いで売る損失、借入れの金利、延納の利子税、物納の整備費用も比較します。

延納は、誰でも20年分割にできる制度ではない

延納は、相続税額が10万円を超え、金銭納付が困難な金額の範囲で、申請・審査を経て認められる制度です。原則として担保が必要で、利子税もかかります。担保不要の例外は、延納税額100万円以下かつ期間3年以下の場合です。

期間は財産構成や税額の区分等で異なり、一定の場合の最長20年を、すべての人が使えるわけではありません。申請書は原則として納期限等までに提出します。担保関係書類の提出期限を延ばせる場合もありますが、申請そのものを後回しにできる意味ではありません。国税庁・相続税の延納

物納は「売れない土地を国に渡す制度」ではない

物納は、延納によっても金銭納付が困難な金額を限度とし、国内の一定の相続財産を、法定の順位等に従って納める制度です。抵当権のある不動産、権利の帰属に争いがある不動産、境界が不明な土地などは、そのままでは適格性に問題が生じます。敷金返還債務の清算など、賃貸物件特有の整備も必要です。

共有不動産は原則として管理処分不適格ですが、共有者全員がその不動産について物納を申請する場合などの例外があります。例外に該当しても、他の許可要件を満たす必要があります。相続税法施行規則21条5項

収納価額は原則として相続税の課税価格計算の基礎となった価額です。売却時価とは一致せず、小規模宅地等の特例適用後の価額が基準となる場合もあります。申請期限、必要書類、整備の期間を税理士と早期に確認します。国税庁・相続税の物納

設例:納付期限まで3か月、土地の売却は未着手

※説明のための架空事例です。実際の受任実績ではありません。

相続税の不足額は2,000万円。土地を売れば払える見込みですが、境界確認が終わらず、兄弟で売却価格も合意できていません。

この場合、まず税理士と不足額・期限・延納等の可否を確認し、並行して売却権限、最低価格、測量、担保抹消を整理します。「高く売れるまで待つ」という希望を維持するなら、待つ間の資金調達を具体化する必要があります。買付けが入っただけでは納税資金は確保できず、決済・入金までの工程が必要です。

今すぐ作る、納税資金の確認表

  • 相続人ごとの納税見込額と、確実に使える現預金。
  • 売却代金から返済・税・費用を差し引いた手取り。
  • 署名・登記・測量等の担当者と、完了までの見込み。
  • 売却が遅れた場合の借入れ・延納等の代替案と申請期限。

よくあるご質問

Q.兄が協議を止めているので、申告も待ってもらえますか。
遺産分割が未了であることだけでは申告期限は延びません。相手の協力を求める交渉と、自分の申告・納付の準備を並行して進めます。

Q.延納を申請すれば、必ず認められますか。
いいえ。納付困難額、担保等の審査があります。申請可能性を確認する段階から、売却や資金調達も比較してください。

明徳法律事務所への相談で整理すること

納税資金の問題を、相続人間の合意、物件の権利関係、売却手続の工程に落とし込みます。税額・申告・延納等は税理士に確認しながら、弊所では分割交渉や売却を妨げる法的問題を整理します。納税見込額、期限、売りたい物件、誰の協力が得られていないかをお伝えいただくと、優先順位を付けやすくなります。

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