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『不動産オーナーの相続24講 ― 地主と大家の教科書 ―』【第22講】

親のお金の使い込み、実家の独占、介護の貢献― 感情を法的な請求に整理する

第22講不動産オーナーの相続24講

親のお金の使い込み、実家の独占、介護の貢献― 感情を法的な請求に整理する

地主と大家の教科書 | 明徳法律事務所

掲載ページ | 改訂日:2026年9月18日

「通帳を管理していた兄が使い込んだ」「姉は家賃を独り占めしている」「親を看た自分が報われない」。いずれも切実な問題ですが、法律上は異なる仕組みで処理します。

この講の要点誰が、いつ、どのお金を、どの権限で動かしたのか。どの行為が親の財産を守ったのか。 この事実を分けることが、請求を裏付ける第一歩です。

出金は「生前」と「死亡後」を分けて追う

生前の出金は、本人のための生活費や医療費、贈与、預り金の移動、無権限の取得などを区別します。出金が多いというだけで使い込みとは確定しません。取引履歴と領収書、本人の意思能力、管理の依頼内容、送金先を突き合わせます。無権限の取得であれば、不当利得返還請求や損害賠償請求が問題になります。

死亡後に共同相続人が遺産を処分した場合、2019年7月1日以後に開始した相続については、処分した本人以外の相続人全員の同意により、その財産を遺産分割の対象に含める仕組みがあります。誰が処分したか自体に争いがある場合などは、別途訴訟による確定も検討します。大阪家庭裁判所・無断出金に関する説明

まずは、出金日・金額・出金者・説明された使途・裏付け資料・争いの有無を一覧にします。請求の消滅時効もあるため、「遺産分割が終わってから調べる」とは決めない方がよいでしょう。

家賃と無償居住は、同じ問題ではない

遺産分割前の相続不動産から生じた賃料債権は、原則として遺産そのものとは別の財産として、各相続人が相続分に応じて取得します。後に建物を1人が相続しても、それ以前の賃料まで当然にその人のものになるわけではありません。入金、管理費、修繕費、税金を区分し、費用の負担根拠も確認して精算します。最高裁平成17年9月8日判決

一方、同居していた相続人が実家に住み続ける場合は、使用貸借などの根拠があるかを検討します。「家賃を払っていない」ことだけで、直ちに不法占拠とも、必ず家賃相当額を払う義務があるともいえません。相続前の居住経緯や被相続人の意思、相続後の合意が重要です。最高裁平成8年12月17日判決

介護や賃貸管理の貢献は、財産への効果を示す

相続人の寄与分では、無償に近い事業への従事、財産の提供、療養看護などにより、被相続人の財産の維持・増加に特別に貢献したかが問題になります。家族として通常期待される援助の範囲か、対価を受け取っていたかも検討します。

不動産管理なら「毎月働いた」だけでなく、担当した業務、期間、報酬の有無、外注費の節約、滞納回収や空室改善との関係を記録します。介護なら介護記録、ケアプラン、要介護認定、サービス利用記録、立替費用の資料をそろえます。死亡後の管理行為は、生前の寄与分とは分け、費用償還や管理の合意として検討します。民法904条の2

相続人ではない親族による無償の療養看護等には、特別寄与料の制度があります。ただし、相続放棄者などは対象から除外されます。家庭裁判所への申立ては、相続開始と相続人を知った時から6か月、または相続開始から1年を経過するとできません。単に請求の手紙を出せば期間を守れる、と考えないことが重要です。裁判所・特別の寄与に関する処分調停

架空設例:「800万円の使い込み」を中身に分ける

兄が管理する口座から800万円が引き出されていました。調べると医療・介護費300万円、アパート修繕費200万円、使途の説明がない送金300万円という内訳でした。

この場合、800万円全額の返還を前提に対立するのではなく、各支出の権限と裏付けを確認します。立替金の精算や適法な支払を除いた上で、説明のない送金の受取人と法的根拠を調べます。「介護をしたから自由に使ってよい」ということにもなりません。

相談前に集めたい資料

  • 取引履歴、通帳、振込先、管理会社の送金明細。
  • 領収書、介護記録、修繕契約、管理を頼まれたやり取り。
  • 相続前後の居住状況、賃料と経費の一覧。

よくある質問

Q.親の通帳を預かっていた人は、全部説明すべきですか。
A.管理の依頼内容や法律関係によって義務が問題になります。返還請求では、誰の何の支出かを具体化し、立証すべき事実を整理します。

Q.長男の妻の介護は、長男の寄与分になりますか。
A.当然にそうなるわけではありません。本人による特別寄与料の対象か、相続人側の寄与として評価できる事情があるかを区別し、同じ貢献の二重評価も避けます。

明徳法律事務所への相談で整理すること

金銭の流れと法的な請求を対応させ、遺産分割に含める範囲、別途請求する範囲、証拠収集の順序を検討します。ご家族への不信をそのまま主張にするのではなく、資料で説明できる争点へ整理するための相談です。

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