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『税理士法人・社労士法人の内部紛争30講 ― 共同経営「解消」の教科書 ―』【第22講】

競業・利益相反・会社機会の利用 ― 役員の別会社との取引を検証する―

第22講 競業・利益相反・会社機会の利用|明徳法律事務所

第22講利益配分と責任追及

競業・利益相反・会社機会の利用

役員の別会社との取引を検証する

明徳法律事務所 弁護士 坂本龍亮改訂原稿日 2026年9月17日読了目安 5分

この講の結論

役員が別会社と関係していても、すべての取引が同じ規制を受けるわけではありません。競業取引、直接・間接の利益相反、会社の機会・情報の利用を分け、必要な承認と会社の損害を確認します。

競業取引

取締役が自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引をする場合、会社法356条1項1号に基づく承認が問題になります。会社の具体的な事業、取引の競合、本人の関与を確認します。

別会社の株式を持つこと、役職に就くこと、実際に競合取引を行うことは区別します。独立準備が直ちに競業取引となるとは限りませんが、在任中に会社の注文を別会社へ振り向ける行為は、競業・忠実義務違反の検討が必要です。

直接取引・間接取引

自己または第三者のために会社と取引する場合の直接取引、会社が役員個人の債務を保証するなどの間接取引について356条を確認します。双方の代表者、実際の利益、取引構造を図にして検討すると整理しやすくなります。

相手会社の株主が親族である、代表者が友人であるという事情だけで、すべて法定の利益相反取引になるわけではありません。一方、形式上の相手を第三者にしても、取引の実体から規制される場合があります。

承認機関と議決

取締役会設置会社では取締役会、非設置会社では株主総会の承認が原則です。重要な事実を開示し、取引の内容・条件を具体的に示します。取締役会では特別利害関係取締役を議決から除き、取引後の重要事実の報告も確認します。

株主総会では、関係する役員が株主でもある場合、取締役会と同じ理由だけでその票を当然に除外することはできません。個別の議決権制限や、831条1項3号の著しく不当な決議を別に検討します。

承認と責任は別問題

承認済みであっても、会社に不利益な条件を正当化できるとは限りません。会社法423条は、一定の競業取引について損害額の推定、利益相反取引について任務懈怠の推定を定めます。それぞれ何が推定されるかを区別します。

表は横にスクロールできます。

規定主な効果なお検討が必要な事項
423条2項無承認の競業取引による利益額を損害額と推定競業該当性、利益の範囲、反証等
423条3項一定の利益相反取引で任務懈怠を推定損害、因果関係、対象となる者等
428条1項自己のための直接取引について帰責事由不存在による免責を制限適用対象、損害・因果関係等

関連会社の売上全額が当然に会社の損害になるわけではありません。利益と売上を区別し、対象取引から生じた利益を検討します。

承認を欠く取引の効力

承認欠缺の効果は、会社と本人の直接取引、第三者を含む取引、第三者の認識等によって検討が変わります。社内の承認がないことを理由に、すべての外部契約が誰に対しても無効になると考えないでください。

取引の効力を争って財産を戻す請求と、役員に損害を賠償させる請求は別です。両方を検討する場合には、回復・回収によって損害額がどう変わるかも整理します。

会社の機会・情報を利用した場合

会社に来た商談を役員個人の会社へ回す、会社が調査した土地や技術を個人で取得するなど、典型的な競業取引に収まるかが争われる場合もあります。会社の事業との関係、本人の職務、取得した情報、会社の期待、会社への説明、利益の帰属から善管注意義務・忠実義務違反を検討します。

日本法上、あらゆる「会社機会」を一律に禁じる単一の明文規定があるという説明は避け、具体的な義務と事実を結び付けます。会社に実行能力や意思がなかったとの反論も検証します。

証拠と退任後の問題

契約、発注・受注履歴、メール、担当者の説明、価格比較、原価、入金、利益相反の開示・承認をそろえます。関係会社の登記は役員等の確認に使い、株主情報は別資料で調べます。

退任後の競業は第34講へ進みます。権利義務取締役としての地位が残る場合、退任後の秘密保持契約がある場合、在任中の行為が原因となる場合を区別します。

PRACTICE NOTE

承認があっても取引条件を確認する

取締役会が役員の関係会社との取引を承認していても、承認時に重要な情報が開示されていたか、特別利害関係取締役を除いたか、価格や条件が会社に不利益でないかを調べます。

必要な承認を得たという一事で、善管注意義務違反や損害賠償責任まで全面的に消えるわけではありません。他方、役員と関係する相手との取引というだけで常に違法でもありません。取引の実体・手続・条件・損害を分けて評価します。

実務チェック

  • 競業・直接取引・間接取引・情報利用を分類する。
  • 承認機関、開示内容、議決除外、事後報告を確認する。
  • 売上と利益、推定される事項と立証が必要な事項を分ける。
  • 取引の効力と損害賠償を別の請求として検討する。

よくある質問

取締役会で承認したので、責任はありませんか。

承認は重要ですが、条件の相当性や会社の損害、任務懈怠等の検討は残ります。

親族の会社との契約は、すべて利益相反ですか。

親族関係だけで一律には決まりません。役員が誰のために行動し、どの利益が衝突する取引なのかを具体的に検討します。

この講の主な根拠・判例原文

条文リンクは法令本文へ移動します。記載の条番号をご確認ください。旧法の判例は、判断の前提と現行法の違いに注意して読みます。

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