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『税理士法人・社労士法人の内部紛争30講 ― 共同経営「解消」の教科書 ―』【第24講】

「解散させるぞ」と言われたら ― 不公正な運営と、継続を妨げるデッドロックを分ける―

『税理士法人・社労士法人の内部紛争30講 ― 共同経営「解消」の教科書 ―』【第24講】

24第Ⅴ部 最終局面編第24講

「解散させるぞ」と言われたら
― 不公正な運営と、継続を妨げるデッドロックを分ける ―

解散請求が認められるかは、対立の激しさだけでは決まりません。法人の業務・社員の権利にどんな支障が続き、ほかの方法で現実に解消できるかを検討します。少数派の不利益を扱った判決を、解散請求すべての必要条件として読まないことが出発点です。

1 制度の確認 ― 会社法833条2項

税理士法48条の21第5項、社労士法25条の25第5項によって準用される会社法833条2項は、やむを得ない事由がある場合に、社員が訴えにより解散を請求する制度です。総社員の同意による解散とは違い、社員1名から提起できます。

606条3項の退社は一人の社員関係を終わらせる制度ですが、解散は法人全体を清算に向かわせます。同じ「やむを得ない事由」という語でも、効果の違いに応じて検討しなければなりません。多数派の不公正な運営という文言が833条2項に明記されているわけではありません。

2 昭和61年判決が扱った類型と、その限界

最高裁昭和61年3月13日判決(民集40巻2号229頁)は、旧商法112条1項の合名会社について、業務が一応支障なく行われている場合でも、多数派社員による不公正な運営と少数派社員の恒常的な不利益、打開手段の有無が解散事由の判断に関わるとした事件として参照されます。

ここから「どの解散請求にも多数派の利己的運営が必要」「2名法人には多数派がいないから解散できない」とは導けません。判決が扱ったのは、業務が続いていることだけで不利益を受ける社員の救済を否定してよいかという類型です。業務自体が立ち行かない類型とは分けます。

小西みも恵「合同会社における少数派社員の保護」(法と政治63巻1号、2012年)119〜120頁も、業務の廃止・停滞、社員間の深刻な対立、少数派の不利益を区別して解散請求を論じ、退社等による解決可能性を検討しています。同論文の合同会社に関する払戻し・債権者保護の説明まで、無限責任の士業法人へそのまま移すことはできません。

3 2名法人のデッドロックを具体的に評価する

2名の意見が違うだけで直ちに解散事由になるわけではありません。一方、意思決定不能が続き、業務継続に重大な支障が生じ、現実的な打開策もない場合を、「多数派の不公正運営がない」という理由で排除することもできません。以下は条文と解散制度の効果を踏まえた本稿の検討項目です。

確認する事実必要な資料・検討
何が決まらないか採用、納税資金、銀行取引、申請、常駐社員などの事項と決定要件
どの程度・どれだけ続いたか決議・協議の履歴、未処理業務、期限徒過、資金繰り、顧客への影響
回復できるか業務分担、適法な代表変更、第三者の関与、保全、社員加入等の具体案
退社で解決できるか誰が退社し、払戻額・支払原資・保証・顧客業務・資格者体制をどう整えるか
解散の影響債権者・顧客・職員への影響と、継続した場合の損失の比較

退社制度が条文上存在することだけで、現実に問題を解決できるとは限りません。退社日を不当に争う、合理的な払戻しの協議を拒み続ける、継続後の資格者体制がない、といった事情も具体的に評価します。逆に、実行可能な払戻し・保証処理・引継ぎ案は、代替手段の存在を説明する資料になります。

4 請求する側・争う側が用意するもの

請求側は、単に「信頼関係が壊れた」と述べるのでなく、業務停滞又は具体的な権利侵害、継続期間、是正の試み、代替案が機能しない理由を示します。争う側も、売上がある、退社できる、とだけ答えず、運営の実態と履行可能な解決案を示します。

多数派による不利益を理由にする事件では、その不利益と不公正な行為を調査します。デッドロックを理由にする事件では、必要な決定の不能と事業への影響を調査します。異なる類型を、同じ2段階の必須要件に押し込めないことが重要です。

5 解散が認められた後を見据える

解散判決が確定すれば清算に入り、通常の事業継続から、現務の結了・債権回収・債務弁済・残余財産の分配へ目的が変わります(第25講)。解散時点で直ちに法人格が消えるわけではありません。

解散は常に双方の敗北というわけではなく、継続困難な法人関係を終了させて権利を実現する方法になり得ます。ただし、顧客業務、雇用、資格者の責任、税理士法人の6か月ルールと通常の解散請求を混同せず、代替案と総費用を比較して選びます。

【本講の根拠・参照資料】

会社法833条2項・834条・835条/税理士法48条の18・48条の21第5項/社労士法25条の22・25条の25第5項。

小西みも恵・法と政治63巻1号(2012年)119〜120頁。昭和61年判決の紹介は、同論文の整理する類型に即した説明で、個別事件の結論を予測する年数・人数基準を置くものではない。

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