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『病院・クリニック経営150講 ― ステージ別・頻出過去問集 ―』【第85講】

施設基準を満たしていなかった ― 届出後の管理が本番

病院・クリニック経営150講 ― 院長が困る日の教科書 ―

第85講 施設基準を満たしていなかった― 届出後の管理が本番

第Ⅸ部 診療報酬・指導監査・行政対応

施設基準は、届出の後も継続して管理する必要があります。退職、勤務時間の変更、設備の更新等が、診療報酬の算定に影響するからです。ただし、要件の判定期間、一時的な変動の扱い、変更後の算定時期は項目によって異なります。「人員が欠けた瞬間から、すべて算定できない」と一律にはいえません。

この講では、施設基準を日常的に管理する仕組みと、問題に気づいたときの対応を整理します。届出は、将来要件を満たすという約束だけで足りるものではありません。必要な実績を含め、届出・算定の各段階で所定の要件を満たしているか確認します。

例えば、常勤の看護師が2か月前に退職し、補充はまだです。事務長が気づきました。「あの加算は、常勤看護師の配置が要件です」。院長は答えます。「届出は出しているが……」。届出が受理されていることと、今の体制で算定できることは別です。代替要員の扱いと、必要な変更の時期を調べなければなりません。

1 施設基準とは何か

施設基準は、診療報酬の算定に必要な人員・設備・体制・実績等の条件です。届出が必要な項目では、基準を満たして届出を行い、所定の算定開始時期を迎えて初めて請求できます。受理された当日から必ず算定できるわけではありません。届出の要否、実績の対象期間、開始日を項目ごとに確認します。

届出後に事情が変わったら、変更・辞退等が必要かを確認します。令和8年度の施設基準通知は、月単位の数値を用いる要件と、常勤配置等の要件で、届出や算定変更の時期を区別しています。また、一時的な変動や産休・育休等について特別な取扱いがある場合もあります。適用条件を確認せずに、算定の継続や停止を決めないことが大切です。

2 崩れやすい要件 ― 典型

要件の種類崩れる場面
人員の配置人数、常勤換算、勤務時間、専任・専従・兼務の条件を確認する。退職・休職等の影響は、判定期間や代替職員の扱いも含めて判断する。届出時と人数が違うだけで、必ず不適合とは限らない。
研修・資格研修修了者の配置、資格、経験年数等が条件になる。担当者の交代時は、後任が条件を満たすか、猶予・代替等の規定があるかを確認する。
設備・機器機器の種類・性能・利用体制等を確認する。故障・更新・契約終了時には、対象の検査等を実施できるか、届出変更が必要かを確かめる。
体制・実績委員会、会議録、研修、件数・割合等。開催頻度や実績を集計する期間を確認し、日単位・月単位・年間実績を混同しない。
掲示・文書院内掲示、ウェブサイトへの掲載、患者への説明・文書交付等。対象事項と例外を確認し、記載内容を実際の体制に合わせる。様式が変わっただけで、当然に不適合になるわけではない。

人事、設備、診療、請求の情報が別々に管理されていると、変更の影響を見落としやすくなります。担当者同士が連絡できる仕組みを作り、変更を予定した段階から影響を確認します。

3 適時調査と定例報告

適時調査。届け出た施設基準を実際に満たしているか、勤務実績、設備、掲示、会議録等で確認する調査です。不適合があれば変更・辞退等や返還の対応が必要になる場合があります。公開されている実施要領は、前回の適時調査等以降分を対象に、基準を満たさなくなった日の属する月の翌月から現時点までの返還を求める取扱いを示しています。具体的な要件と期間は個別に確認します(第83講)。

定例報告。令和8年度の基本診療料・特掲診療料の施設基準通知では、毎年8月1日現在の適合性を確認し、報告する取扱いです。対象様式・基準日・提出期限は、その年度の所管厚生局の案内で確認してください。定例報告は日々の管理の代わりにはならず、必要な変更・辞退等を報告時期まで待つことはできません。

4 継続管理の仕組み

次の四つを基本に、自院の届出項目に合った確認方法を決めます。確認の頻度も、要件や変化の起こり方に合わせます。

  • 届出一覧。項目、要件、判定期間、実績の集計方法、根拠資料、担当者、変更時の対応を一覧化する。常勤・専任・専従・兼務の条件や経過措置の期限も整理する。
  • 人事との連動。職員の退職・休職・勤務時間の変更があったとき、届出一覧に照らして影響を確認する手順を、人事の手続に組み込む。「退職届を受理したら、施設基準を確認する」を定型にする。
  • 日常・月次の点検。出勤実績、配置、研修、会議、設備、実績値を、必要な頻度で確認する。予定のシフト表だけでなく実績を残し、月次点検まで待てない変化は、その都度確認する。
  • 定例報告と制度改定への対応。院長が届出一覧と実態を見直す。改定内容は施行前から確認し、必要な届出と経過措置の期限を管理する。年1回の点検まで先送りしない。

5 崩れたときの対応

要件を欠いたことに気づいたら、次の順で対応します。

①事実の確認。どの項目について、いつ、何が変わったかを確認します。勤務実績、退職・休職日、設備の状態等を保全し、判定期間、代替要員、一時的変動の取扱いを、該当する通知と照合します。

②届出と算定の整理。所管厚生局へ速やかに相談し、必要な変更・辞退等と期限、算定を変更又は停止する時期を確認します。猶予や例外があると自己判断して請求を続けず、根拠が確認できない分は請求前に扱いを整理します。

③過去の請求の確認。不適合の開始時期と、算定に影響する時期を区別し、誤った請求と返還・患者への返金の要否を確認します。既に行った査定や訂正も照合します。自ら申し出れば返還や処分を必ず免れる、という制度ではありませんが、問題を放置せず事実を正確に伝えることが必要です。

④算定の再開。体制が戻ったら、再届出の要否、必要な実績、受理と算定開始日の条件を確認します。採用した日や届出を受理された日から、直ちに再開できるとは限りません。所定の条件を満たしてから請求します。

6 今日やること・やってはいけないこと

今日やること

  • 自院の施設基準の届出一覧(項目・要件・担当者)を作る
  • 職員の退職・休職があったら施設基準への影響を確認する手順を、人事の手続に組み込む
  • 日常・月次の点検、定例報告、改定対応、経過措置の期限を予定に入れる
  • 不適合の疑いに気づいたら、事実と適用条件を確認し、必要な届出・算定変更・返還に対応する

やってはいけないこと

  • 「届出は出している」ことで安心し、その後の要件を確認しない
  • 人員が変わったのに、判定方法や例外の条件を調べず、後任が来るまで請求を続ける
  • 定例報告を事務任せにして、院長が内容を見ない
  • 要件の欠落に気づいても、適時調査まで黙っている

7 よくある質問

看護師が退職しました。次の採用まで1か月です。その間だけ算定を続けてよいですか。
項目ごとに確認が必要です。常勤配置、常勤換算、月単位の実績等の要件や、一時的な変動の取扱いによって異なります。「1か月なら大丈夫」とも「退職当日から必ず不可」ともいえません。代替要員や勤務実績を整理し、速やかに厚生局へ確認して、必要な届出と算定変更を行ってください。
適時調査はいつ来ますか。
施設基準通知には、原則年1回、受理後6か月以内を目途とする定めがあります。一方、適時調査実施要領には、当分の間の臨場調査は原則医科病院を対象とし、対象施設数に応じて2〜4年に1巡を目途とする取扱い等もあります。自院の実施時期を一律には予測できません。通知を待たず、日常から基準を満たしているか管理します。
診療報酬改定で要件が変わったことに気づきませんでした。
気づいた時点で、改定の施行日、経過措置、必要な届出、実際の体制と請求を確認します。経過措置が自院に適用されるかを確かめ、期限切れや誤請求があれば速やかに対応してください。以後は、改定前の確認と経過措置終了前の点検を担当者の予定に組み込みます。

作成日:2026年7月1日
改訂日:2026年9月17日

主な法令・参考資料

  1. 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定

    2026年度の診療報酬に関する告示・通知・疑義解釈。

    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html

  2. e-Gov法令検索:保険医療機関及び保険医療養担当規則

    2条の6の掲示・ウェブサイト掲載、22条の診療録記載等。保険診療の取扱い。

    https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50000100015
  3. 厚生労働省:基本診療料の施設基準等の届出通知(令和8年度)

    令和8年3月5日保医発0305第7号。届出受理後の変更、一時的な変動、算定時期、定例報告等。

    https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732097.pdf
  4. 厚生労働省:特掲診療料の施設基準等の届出通知(令和8年度)

    令和8年3月5日保医発0305第8号。届出・実績・受理後の変更、配置の取扱い、算定時期等。

    https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732104.pdf
  5. 厚生労働省:適時調査実施要領

    対象・実施時期、調査後の改善・返還、定例報告等。令和8年度の施設基準通知を引用する公開版。

    https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/dl/chousa_01-1.pdf
  6. 近畿厚生局:令和8年度 施設基準の定例報告

    令和8年8月1日現在の報告と提出期限・対象様式の案内。他の地域は所管厚生局の案内を確認。

    https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/shinsei/shido_kansa/shisetsu_kijun_teirei/h26-teirei-top.html

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