第14講役員・機関・意思決定
その株主の一票は、本当に数えられるか
自己株式・基準日・相互保有・準共有
この講の結論
議決権は「発行済株式の何パーセントを持っているか」だけでは数えられません。自己株式や相互保有株式には議決権がなく、基準日によって誰が株主として扱われるかが決まり、相続で共有になった株式には権利行使者の指定という別の手続が要ります。内紛では、議案ごとに議決権を行使できる株式を確定したうえで、定足数、出席した議決権の数、賛成の数を別々に計算し、帰属や行使の適法性が争われる株式については、その票を入れた場合と入れなかった場合の両方の結果を示しておくことが要点です。数え方の誤りは決議の方法の法令違反として取消事由になりますから、多数派と少数派のどちらにとっても、正確な計算が決議を守る前提になります。
議案ごとに母数を作る
株主総会の決議は、原則として、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で成立します(会社法309条1項)。定款の変更や解散、事業譲渡などの特別決議では、同じ定足数のもとで出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要で、定足数は定款で3分の1まで引き下げることができます(同条2項)。取締役の選任と解任、監査役の選任は普通決議ですが(監査役の解任は特別決議です。309条2項7号)、その定足数を定款で3分の1未満に引き下げることはできません(341条)。計算の出発点になる「議決権を行使することができる株主の議決権」は、発行済株式の総数とは一致しません。自己株式、相互保有株式、議決権制限株式、単元未満株式、個別の規定によって議決権を行使できない株式を除いた数が母数です。
母数は議案ごとに変わります。ある議案について特定の株主が議決権を行使できない場合、たとえば自己株式を特定の株主から取得する決議でその株主が議決権を行使できない場合(160条4項)や、譲渡承認請求をした株主が会社による買取りの決議で議決権を行使できない場合(140条3項)には、その議案に限って母数からその株主の議決権を除きます。なお、議案について特別の利害関係を有する株主は、これらと違って議決権を行使できます。その行使によって著しく不当な決議がされたときに取消事由になるにとどまり(831条1項3号)、母数から除かれるわけではありません。したがって、一つの総会で複数の議案を扱うときは、議案ごとに、議決権を行使できる株式、出席した議決権、賛成した議決権を別々の欄で計算します。「全体で過半数を持っているから全部通る」という前提で臨むと、特定の議案で定足数や賛成数を欠くことがあります。
株主名簿と株式の帰属
誰が株主かは、株主名簿で確かめます。株式の譲渡は、取得者の氏名と住所を株主名簿に記載しなければ、会社に対抗できません(130条。株券発行会社では会社に対する対抗要件、それ以外の会社では第三者に対する対抗要件でもあります)。したがって、株式を買い受けたと主張する者がいても、名義書換が済んでいなければ、会社はその者を株主として扱う必要がなく、名簿上の株主に招集通知を発し、その者の議決権行使を受け付けるのが原則です。ただし、会社の側が名義書換未了の譲受人を株主として認めて取り扱うことは差し支えないとされており(最判昭和30年10月20日民集9巻11号1657頁)、会社が正当な理由なく名義書換を拒んだり、会社の過失で名義書換がされなかったりした場合には、会社は譲受人を株主として扱わなければなりません(最判昭和41年7月28日民集20巻6号1251頁)。株券発行会社では、株式の譲渡は株券の交付がなければ効力を生じませんから(128条1項)、株券が交付されたかどうかも問題になります。定款で株券を発行すると定めながら実際には一度も株券を発行していない会社は中小企業に多く、株券の発行前にした譲渡は会社に対して効力を生じないのが原則ですが(同条2項)、会社が株券の発行を不当に遅滞している場合には、意思表示のみによる譲渡も会社に対して有効とされています(最判昭和47年11月8日民集26巻9号1489頁)。また、株券の発行前の譲渡も、譲渡の当事者の間では株券の交付がないことを理由に効力を否定されることはなく、譲受人は譲渡人の株券発行請求権を代位行使して会社に株券の交付を求めることができます(最判令和6年4月19日)。
中小企業の内紛でよく見られるのは、株主名簿が作られていない、あるいは税務申告書の別表二だけが株主の一覧として使われている、という状態です。別表二は税務上の資料であって株主名簿ではなく、有力な手がかりにはなるものの、それだけで株式の帰属が確定するわけではありません。逆に、株主名簿に記載があっても、その株式が名義株(他人の名義を借りて出資した株式)であれば、実質上の株主は名義人と異なります。名義株の帰属は、出資金を誰が負担したか、配当や議決権をどう扱ってきたか、株式の取得の経緯を総合して判断されます。誰が真の株主かという帰属の問題と、会社に対して株主としての権利を行使できるかという問題は別の問いですから、名簿だけ、税務資料だけで結論を出さず、設立時の払込み、譲渡契約書、譲渡承認の記録、株券の所在、配当の支払先を突き合わせます。
自己株式と相互保有
会社は、自己株式について議決権を有しません(308条2項)。過去に株主から株式を買い取って自己株式として保有している会社では、発行済株式の総数をそのまま母数にすると、定足数と賛成数の計算がすべてずれます。自己株式は、議決権を行使できる株主の議決権の数から除いたうえで、出席した議決権にも賛成した議決権にも算入しません。
相互保有の規律も見落とされがちです。会社が、その子会社と合わせて、株主である会社等の議決権の総数の4分の1以上を有する場合、その株主である会社等は、この会社の株主総会で議決権を行使できません(308条1項、会社法施行規則67条1項)。自社が取引先の議決権の4分の1以上を持っているなら、その取引先が自社の株主であっても、自社の総会では投票できないということです。この判定は、自社が直接持つ分だけでなく子会社を通じて持つ分も合算して行い、株主総会の日、基準日を定めた場合はその基準日における議決権の数を基準にします(施行規則67条2項・3項)。グループ会社や取引先との持合いがある会社では、判定を怠ると母数を誤ります。相互保有株式は、自己株式と同じく母数から除きます。
基準日――いつの株主を対象とするか
株主は入れ替わりますから、どの時点の株主に議決権を認めるかを決める必要があります。会社は、一定の日を基準日と定め、その日に株主名簿に記載されている株主を権利行使できる者と定めることができます(124条1項)。基準日株主が行使できる権利は基準日から3か月以内に行使するものに限られ(同条2項)、基準日を定めたときは、基準日の2週間前までに基準日と権利の内容を公告しなければなりません(同条3項)。ただし、定款に基準日と権利の内容の定めがあれば公告は不要で(同項ただし書)、多くの会社は定時株主総会について「毎事業年度末日の株主」を基準日とする定款の定めを置いています。臨時株主総会については定款に定めがないのが通常ですから、臨時総会で基準日を使うなら公告が必要になります。公告を怠ったまま基準日を前提に議決権を扱えば、招集手続または決議方法の法令違反として取消事由になり得ます。
基準日を定めなかった臨時総会では、総会の時点で株主名簿に記載されている株主が議決権を持ちます。招集通知の発送後に株式の譲渡と名義書換があれば、譲受人が議決権を行使することになりますから、通知の宛先と議決権の帰属がずれることがあります。基準日を定めた場合でも、権利が株主総会の議決権であるときは、会社は、基準日後に株式を取得した者の全部または一部を議決権を行使できる者と定めることができますが、基準日株主の権利を害することはできません(124条4項)。基準日後に新株を発行して新株主に議決権を与えるといった場面で使われる規定であり、基準日株主から譲り受けた者を認めることは基準日株主の権利を害するため許されません。内紛では、基準日で切り取る株主と、その後の株式の移動を分けて整理し、基準日と総会の日の間に株式が動いた場合に誰が投票するのかを、総会の前に確定させておきます。
相続株式の準共有
株主が亡くなり、遺産分割が終わるまでの間、その株式は相続人全員の準共有になります。相続分に応じて当然に分割されるのではなく、一株一株が共有の状態です。株式が二人以上の共有に属するときは、共有者は、その株式についての権利を行使する者一人を定めて会社に通知しなければ、権利を行使できません(106条本文)。会社がその権利行使に同意した場合はこの限りでない、というただし書がありますが(同条ただし書)、この同意の意味には限界があります。
最高裁は、まず権利行使者の指定について、共有者の持分の価格に従ってその過半数で決めることができるとしています(最判平成9年1月28日判時1599号139頁、最判平成11年12月14日判時1699号156頁)。適法に指定された権利行使者は、共有者間の内部の取決めに反していても、自己の判断で議決権を行使でき、その行使は有効です(最判昭和53年4月14日民集32巻3号601頁)。権利行使者の指定と通知がない場合でも、共有者の全員が共同して議決権を行使するのであれば、会社がこれを認めることはできます(前掲最判平成11年12月14日)。
他方で、権利行使者の指定と通知を欠いたまま共有者の一人が議決権を行使した場合について、最高裁は、会社が106条ただし書の同意をしたとしても、その行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは適法にならないと判断しました(最判平成27年2月19日[出典])。この判決は、共有株式についての議決権の行使は、株式の処分や内容の変更に当たるなどの特段の事情がない限り、共有物の管理に関する事項として、各共有者の持分の価格に従いその過半数で決めるものとしています(民法252条1項。判決当時の改正前252条本文)。事案では、持分2分の1を持つ相続人が単独で議決権を行使し、会社がこれに同意していましたが、残る2分の1の持分を持つ相続人が同意していなかったため、持分の価格の過半数による決定がなく、不適法とされました。人数の多数決ではなく持分の価格で決めるため、持分が半分ずつなら一方だけでは過半数に達しません。
内紛では、創業者の死亡によって相続人の間で持株の帰属が争われ、遺産分割が長期化する例が少なくありません。その間、相続株式は権利行使者の指定がなければ議決権を行使できず、指定には持分の過半数の合意が必要ですから、相続人の間で対立していれば、その株式は事実上、投票できない状態になります。相続株式が議決権の過半数を占めていれば、定款で定足数を引き下げていない限り、会社は株主総会で定足数を満たせず、何も決められなくなるおそれがあります。なお、権利行使者の指定と通知を欠く共同相続人は、原則として総会決議の不存在確認の訴えの原告適格を持ちませんが、相続株式が発行済株式の全部に相当し、共同相続人の一人を取締役に選任する決議がされたような場合には、会社が手続の欠缺を理由に訴えを争うことは信義則に反するとして、特段の事情が認められています(最判平成2年12月4日[出典])。相続株式と名義株の扱いは「非上場株式27講」第16講でも扱っています。
代理・書面投票・不統一行使
株主は代理人によって議決権を行使でき、その場合には株主または代理人が代理権を証明する書面を会社に提出しなければなりません(310条1項)。代理権の授与は総会ごとに行い(同条2項)、会社は出席できる代理人の数を制限できます(同条5項)。多くの会社の定款には「議決権を行使する代理人は当社の株主に限る」という定めがあり、最高裁は、この定めを、総会が株主以外の第三者によって撹乱されることを防止して会社の利益を保護する趣旨の合理的な理由による相当程度の制限として有効としています(最判昭和43年11月1日[出典])。しかし、この定款の定めを形式的に適用してよいわけではありません。株主である地方公共団体や会社がその職員や従業員を代理人として出席させた場合には、撹乱のおそれがないとして、株主でない代理人による議決権行使を有効とした判例があります(最判昭和51年12月24日民集30巻11号1076頁)。株主でない弁護士を代理人とした議決権行使を会社が拒んだ事案では、これを違法として決議を取り消した裁判例(東京地判令和3年11月25日判タ1503号196頁)と、拒絶を適法とした裁判例(東京高判平成22年11月24日資料版商事法務322号180頁)の両方があり、内紛の局面では、代理人の排除が決議の取消事由になり得ることを前提に対応する必要があります。株主でない代理人を一律に排除できるわけではありません。
書面による議決権行使(311条)や電磁的方法による議決権行使(312条)は、招集を決定するときにそれを認める旨を定め(298条1項3号・4号)、通知に記載し(299条4項)、議決権行使書面を交付して(301条)初めて使える制度です。株主が1000人以上の会社では書面投票を認めなければなりません(298条2項)。招集の決定に含めていなければ、株主が勝手に書面で投票することはできません。書面で行使された議決権は出席した株主の議決権に算入されます(311条2項)。株主は、議決権を統一しないで行使することもできます(313条1項)。取締役会設置会社では総会の日の3日前までにその旨と理由を通知する必要があり(同条2項)、他人のために株式を有する者でない株主については、会社はこれを拒めます(同条3項)。当日の受付で初めて処理を考えるのではなく、想定される投票の方法と、争いになりそうな代理人の出席を事前に整理し、受付での判断の基準を決めておきます。
数値例――母数・出席数・賛成数
1株1議決権で、種類株式、単元株、相互保有はなく、発行済株式100株のうち10株が自己株式、残りをA40株、B30株、C20株が保有している会社を考えます。全員に適法な招集通知がされ、定款に定足数や決議要件の変更はないものとします。
表は横にスクロールできます。
| 出席した株主 | 行使できる総議決権 | 出席した議決権 | 定足数(過半数=46) | 普通決議の可決に必要な賛成 | 特別決議の可決に必要な賛成 |
|---|---|---|---|---|---|
| A・B・C全員 | 90 | 90 | 満たす | 46以上 | 60以上 |
| A・B | 90 | 70 | 満たす | 36以上 | 47以上 |
| A・C | 90 | 60 | 満たす | 31以上 | 40以上 |
| Aのみ | 90 | 40 | 欠く | 決議できない | 決議できない |
特別決議の47は、70の3分の2である46.67以上となる最小の整数です。Aは発行済株式の40パーセントを持っているにすぎませんが、自己株式を除いた議決権では44.4パーセントであり、Cが出席してBが欠席すれば、A40票は出席議決権60の3分の2に達して特別決議を単独で可決できます。逆に、Aが単独で出席しても定足数を欠くため何も決められません。ここで定款が定足数を3分の1に引き下げていれば話は変わります。役員の選任や解任でも定足数は3分の1まで下げられますから(341条)、定款で3分の1としていれば30票で足り、A一人の出席で定足数を満たし、A40票は出席議決権の全部ですから、普通決議も、定款で定足数を3分の1にしてある特別決議も、Aだけで可決できます。多数派が自らの定足数を確保できるかどうか、少数派の欠席が決議を止めるのか、逆に通しやすくするのかは、定款の定足数の定めを見なければ分かりません。
Bが亡くなってB30株が配偶者と子2人の準共有(持分2分の1、4分の1、4分の1)になった場合を加えると、権利行使者の指定には持分の過半数、すなわち配偶者と子の少なくとも一人の合意が必要で(子2人だけでは合計2分の1にとどまり過半数に達しません)、指定がなければB30株は投票できません。B30株が投票できない状態でも、母数の90は変わりません。定足数46に対し、AとCの合計は60ですから定足数は満たしますが、そうなるとA40票は出席議決権60の過半数にも3分の2にも届き、Aは普通決議も特別決議も単独で可決できます。B30株が投票できない状態は、Aに有利に働くということです。逆に、B30株の権利行使者がCと組めば、BとCの50票が過半数になり、Aは普通決議さえ通せません。準共有株式の権利行使者を誰が、いつまでに指定するかが、決議の帰趨をそのまま左右します。争いのある準共有株式を自己株式と同じように母数から除くことはできず、その法的な取扱いを別に検討する必要があります。
争いのある票を記録する
議決権の集計表は、株式ごとに「確定」「争いあり」「追加資料待ち」の区分を付けて作ります。名義株の主張がある株式、譲渡の効力が争われている株式、準共有で権利行使者の指定がない株式、代理人の資格が争われる出席については、その票を入れた場合と入れなかった場合の両方の結果を計算し、どちらの扱いでも結論が変わらないのか、それとも扱いによって可否が逆転するのかを、総会の前に把握しておきます。結論が変わらないなら、争いのある票の扱いを議事録に明記したうえで採決すれば足りますが、結論が逆転するなら、その票の扱いが決議の効力を直接左右しますから、法的な根拠を慎重に検討し、必要なら総会の前に議決権行使の許容や禁止の仮処分を求めることも視野に入れます(第28講)。裁判所の決定があるときは、その当事者、対象となる総会、対象となる株式、命令の内容を集計表に正確に反映します。
議長は、採決の結果を明確に宣言し、そのうえで、争われている票の扱いと株主から述べられた異議を分けて議事録に記録します。二通りの計算を残しておくこと自体は、違法な議決権の処理を適法にするものではありません。しかし、後に決議の効力が争われたとき、会社がどの票をどのような理由で算入し、または算入しなかったのかが記録されていれば、裁判所は決議への影響を判断できますし、裁量棄却の要件である「違反が重大でなく、かつ決議に影響を及ぼさない」こと(831条2項)の立証にも役立ちます。採決の前に退場した株主を出席した議決権に含めるかどうかには議論があり、内紛の総会では退場が起きやすいため、退場の時刻と、その扱いをどう決めたかも議事録に残します。記録がなければ、集計の誤りが疑われるだけで決議全体の信用が損なわれかねません。
実務チェック
- 議案ごとに、議決権を行使できる株式、定足数、出席した議決権、賛成した議決権を分けて計算する。
- 株主名簿の記載と、譲渡契約、譲渡承認、株券、払込みや配当の記録を突き合わせ、名義株や名義書換未了の株式を洗い出す。
- 自己株式、相互保有株式、議決権制限株式、個別の議決権制限を母数から除く。
- 基準日の定めと公告の有無、基準日から総会までの株式の移動を確認する。
- 準共有株式は、権利行使者の指定が持分の過半数でされ、会社に通知されているかを確かめる。
- 定款の定足数の定めと累積投票を排除する定めの有無を読み、多数派が単独で定足数を満たせるか、少数派の欠席が決議にどう作用するかを先に計算する。
- 不確定な票で結論が変わるかを総会の前に計算し、集計表と議事録に扱いを残す。
よくある質問
相続人の一人が「会社が認めた」と言えば投票できますか。
会社の同意だけでは足りません。権利行使者の指定と通知がないまま相続人の一人が議決権を行使する場合、会社が同意していても、その行使が共有者の持分の価格の過半数による決定に基づいていなければ適法にならないというのが最高裁の判断です。持分の過半数を持つ相続人が賛成していれば適法に行使できる余地がありますが、持分が半分ずつの相続人の一方だけでは過半数に達しません。相続人の間で対立があるなら、まず権利行使者の指定を持分の過半数で行い、会社に通知することが必要です。
特別決議を阻止するため欠席してよいですか。
欠席が有効かどうかは、定款の定足数の定めと持株の構成によります。定足数が原則どおり過半数であれば、欠席によって定足数を割り込ませて決議を止められることがあります。しかし、定款で定足数が3分の1に引き下げられていれば、多数派だけで定足数を満たすことが多く、そのうえ欠席によって出席議決権の母数が減るため、多数派の賛成が3分の2に達しやすくなります。出席して反対票を投じた場合と、欠席した場合の両方を計算してから決めるべきで、欠席が裏目に出ることは珍しくありません。
株主名簿がない会社では、誰を株主として扱えばよいですか。
株主名簿は会社が作成し備え置かなければならないものですから(121条、125条1項)、まず現時点の株主名簿を作成することが出発点です。作成にあたっては、設立時の定款と払込みの記録、その後の譲渡契約書と譲渡承認の記録、株券の交付の有無、配当の支払先、税務申告書の別表二などを突き合わせて株式の帰属を確定します。帰属に争いがある株式については、会社としてどちらを株主として扱うかを根拠とともに記録し、争いのある票の扱いを議事録に残します。名簿の不備を理由に招集通知を省略したり、都合のよい者だけを株主として扱ったりすれば、決議の取消事由や不存在事由になり得ます。
この講の主な根拠条文・裁判例
- 会社法〔e-Gov法令検索〕106条、121条、124条、125条、128条、130条、140条3項、160条4項、298条、299条4項、301条、308条〜313条、341条、342条、831条
- 会社法施行規則〔e-Gov法令検索〕67条(相互保有株式についての議決権制限)
- 民法〔e-Gov法令検索〕252条1項
- 最判昭和30年10月20日民集9巻11号1657頁会社の側から名義書換未了の株式譲受人を株主として扱うことは差し支えないとした判例
- 最判昭和41年7月28日民集20巻6号1251頁会社が過失により名義書換をしなかった場合には、会社は譲受人を株主として扱わなければならないとした判例
- 最判昭和47年11月8日民集26巻9号1489頁株券発行会社が株券の発行を不当に遅滞している場合には、株券発行前の意思表示のみによる株式譲渡も会社に対して有効であるとした判例
- 最判令和6年4月19日株券の発行前にした株券発行会社の株式の譲渡は、譲渡当事者間では株券の交付がないことを理由に効力を否定されず、譲受人は譲渡人の株券発行請求権を代位行使できるとした判例
- 最判昭和43年11月1日民集22巻12号2402頁〔裁判所ウェブサイト〕議決権行使の代理人を株主に限る定款の定めは、総会の撹乱防止のための合理的な理由による相当程度の制限として有効であるとした判例
- 最判昭和51年12月24日民集30巻11号1076頁代理人を株主に限る定款の定めがある会社で、株主である地方公共団体や会社の職員・従業員が代理人として議決権を行使することは撹乱のおそれがなく定款に反しないとした判例
- 最判昭和53年4月14日民集32巻3号601頁共有持分について適法に指定された権利行使者は、共有者間の取決めに反していても自己の判断で議決権を行使できるとした判例(有限会社の持分に関する事案)
- 最判平成2年12月4日民集44巻9号1165頁〔裁判所ウェブサイト〕権利行使者の指定・通知を欠く共同相続人は原則として決議不存在確認の訴えの原告適格を持たないが、相続株式が発行済株式の全部に当たり共同相続人の一人を取締役に選任する決議がされた場合には特段の事情があるとした判例
- 最判平成9年1月28日判時1599号139頁、最判平成11年12月14日判時1699号156頁準共有株式の権利行使者の指定は、共有者の持分の価格に従いその過半数で決することができるとした判例
- 最判平成27年2月19日民集69巻1号25頁〔裁判所ウェブサイト〕権利行使者の指定・通知を欠く共有株式の議決権行使は、会社が同意しても民法の共有規定に従ったものでなければ適法にならず、議決権の行使は特段の事情がない限り持分の価格の過半数で決する管理行為であるとした判例
- 東京地判令和3年11月25日判タ1503号196頁代理人を株主に限る定款の定めを理由に株主でない弁護士による議決権の代理行使を拒んだことを法令違反として決議を取り消した裁判例
- 東京高判平成22年11月24日資料版商事法務322号180頁株主でない弁護士による議決権の代理行使の拒絶を適法とした裁判例
条文のリンクは法令本文へ移動します。記載の条番号から各規定をご覧ください。裁判例のうち裁判所ウェブサイトに掲載されているものは、裁判例検索で裁判年月日から原文を確認できます。旧商法下の判例は、判断の前提と現行法との違いに注意してお読みください。
公開日 2026年7月1日/改訂日 2026年8月1日/改訂日 2026年9月21日