第13講役員・機関・意思決定
株主総会の決議を覆す三つの訴え
取消し・無効・不存在の選択と期限
この講の結論
株主総会の決議を争う訴えには、決議取消しの訴え、決議無効確認の訴え、決議不存在確認の訴えの三つがあり、どれを使うかは瑕疵の種類によって決まります。招集手続や決議の方法の違反、決議内容の定款違反は取消しの問題であり、決議の日から3か月以内に訴えを提起しなければなりません。決議内容の法令違反は無効確認、決議の実体がない場合は不存在確認の対象で、これらに出訴期間はありません。欠陥が「大きいか小さいか」で三つを振り分けるのではなく、瑕疵をどの規定のどの要件に当てはめるかを最初に決め、そのうえで原告適格、被告、管轄、期間、裁量棄却、判決の効力、訴えの利益を順に確かめます。
三つの制度の違い
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| 制度 | 対象となる瑕疵 | 原告 | 期間・留意点 |
|---|---|---|---|
| 決議取消しの訴え(会社法831条) | 招集手続または決議方法の法令・定款違反や著しい不公正(1項1号)、決議内容の定款違反(2号)、特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議(3号) | 株主、取締役、監査役(監査役設置会社)、清算人など法定の者に限る | 決議の日から3か月以内。裁量棄却の規定あり(2項) |
| 決議無効確認の訴え(830条2項) | 決議内容の法令違反 | 確認の利益を有する者 | 出訴期間なし |
| 決議不存在確認の訴え(830条1項) | 決議の実体がない場合、または手続の瑕疵が著しく決議が存在したと評価できない場合 | 確認の利益を有する者 | 出訴期間なし |
三つの区別で最初に押さえるべきは、決議の「内容」の違反と「手続」の違反を分けることです。決議の内容が法令に違反する場合、たとえば株主平等原則(109条1項)に反する内容の決議や、株主総会の権限に属しない事項(295条2項参照)を決めた決議は無効確認の対象です。これに対して、決議の内容が定款に違反するにすぎない場合は、取消事由です(831条1項2号)。定款は会社が自ら定めたものですから、会社がその違反を追認できる余地を残し、3か月で争いを打ち切るという考え方です。招集通知が足りない、定足数を欠いた、議決権の数え方を誤ったといった手続の違反は、どれほど明白であっても原則として取消事由であり、その程度が著しく、決議が存在したと評価できないほどに至って初めて不存在になります。この境界は第12講で扱いました。逆に言えば、3か月を過ぎた取消事由を、「重大な違反だから無効だ」と言い換えて無効確認の訴えに持ち込むことはできません。
取消事由を具体的にする
取消しの訴えで最も多い失敗は、「決議の結果に納得できない」という不満をそのまま訴えにしてしまうことです。裁判所が審理するのは、招集手続または決議の方法が、法令または定款のどの規定にどのように違反したか、あるいは著しく不公正といえるかです。招集通知の欠落や期間不足(299条)、取締役会設置会社で招集の決定を取締役会で行っていないこと(298条4項)や通知に記載のない議題について決議したこと(309条5項)、議決権のない株主の投票を算入したことや議決権のある株主の投票を拒んだこと、代理人による議決権行使の不当な拒否(310条)、株主からの質問に対する説明義務違反(314条)、議長の不公正な議事運営などを、一つずつ条文に結び付けて主張します。議決権の数え方の争いは第14講で扱います。なお、取締役会を置かない会社では、通知の期間は1週間で定款でさらに短縮でき、通知は書面によらなくてもよく、通知に記載のない事項も決議できます(299条1項・2項、309条5項の反対解釈)。中小企業の多くはこの類型ですから、自社がどちらかを最初に確かめます。
特別の利害関係を有する株主も、原則として議決権を行使できます。取締役会における特別利害関係取締役が議決に加われないのと違い、株主は自らの利益のために議決権を行使することが認められているからです。そのうえで、その行使によって著しく不当な決議がされたときに、取消事由になります(831条1項3号)。「著しく不当」の立証は、決議の内容が会社や他の株主にどのような不利益を与えるかを具体的に示すことによって行い、利害関係があるというだけでは足りません。なお、譲渡承認請求をした株主が会社による買取りの決議で議決権を行使できない(140条3項)、自己株式の取得で売主となる株主がその決議で議決権を行使できない(160条4項)といった個別の議決権制限は、この3号とは別の規律です。個別の制限に反して議決権が行使されれば、決議の方法の法令違反として1号の問題になります。
原告・被告・管轄を確かめる
取消しの訴えを提起できるのは「株主等」、すなわち株主、取締役、監査役(監査役設置会社の場合)、清算人などに限られます(831条1項、828条2項1号)。加えて、その決議の取消しによって株主や取締役、監査役、清算人となる者も提起でき、ここには権利義務取締役として地位を回復する者も含まれます(831条1項後段)。解任された取締役が解任決議の取消しを求める場合が典型です。株主は、自分に対する招集手続に瑕疵がなくても、他の株主に対する招集手続に瑕疵があれば、それを理由に取消しの訴えを提起できます(最判昭和42年9月28日民集21巻7号1970頁)。決議取消しの訴えは会社の適正な運営を確保するための制度であり、自分が被った不利益を回復するためだけの制度ではないからです。他方、原告としての資格は訴えを提起したときだけでなく訴訟の間も必要と解されており、係属中に株式を手放せば訴えは却下されるのが一般的な扱いです。
三つの訴えの被告はいずれも会社です(834条16号・17号)。取締役(解任された元取締役を含みます)が原告となって会社を訴える場合、監査役設置会社では監査役が会社を代表します(386条1項1号)。監査役の権限を会計に限定している会社では代表取締役が代表しますから(第11講)、訴状の被告代表者を誤らないよう確かめます。訴えは、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄です(835条1項)。同一の決議について複数の訴えが係属したときは、弁論と裁判が併合されます(837条)。一つの総会で複数の議案が決議された場合、議案ごとに別個の決議ですから、どの決議を、どの理由で争うのかを議案ごとに整理します。ある議案を否決する決議は、それによって新たな法律関係が生じず、取り消しても新たな法律関係が生じないため、取消しの訴えの対象になりません(最判平成28年3月4日民集70巻3号827頁)。自分の提案が否決されたことを争いたいのであれば、議決権の集計に誤りがあって本来は可決されていたという場合の可決決議の存在確認や、次の総会での再提案、少数株主による総会の招集請求(297条)など、否決を前提にした別の手段を考えることになります。
3か月の管理
取消しの訴えは、決議の日から3か月以内に提起しなければなりません(831条1項)。起算点は決議の日であり、株主が決議を知った日、会社に抗議した日、議事録を取得した日、変更登記を見た日ではありません。仮処分の申立てや交渉の開始は、本案の訴えの提起には当たりません。3か月の間に訴状を裁判所に提出することが必要です。期間の計算では決議の日は算入せず(民法140条)、末日が土日祝日に当たれば翌開庁日まで延びると扱われるのが通常ですが、その扱いに頼る計画は立てず、管轄や受付の方法も含めて前もって確かめておきます。令和8年5月21日からは、訴訟代理人となる弁護士はオンラインでの申立てが義務になっていますから、システムの利用登録を含めて、直前に慌てない段取りが要ります。
3か月の意味は、訴えの提起だけにとどまりません。訴えを起こした後に新たな取消事由を追加することも、決議の日から3か月以内でなければ許されません(最判昭和51年12月24日民集30巻11号1076頁)。したがって、提訴の時点で、考えられる取消事由をすべて洗い出して主張しておく必要があります。「まず一つの理由で訴えておいて、後から調べて追加する」という進め方は通用しません。無効確認の訴えとして提起した訴えで主張されていた瑕疵が取消事由に当たる場合には、その訴えが3か月以内に提起されていれば、後の取消しの主張は無効確認の訴えの提起時にされたものとして扱われますが(最判昭和54年11月16日民集33巻7号709頁)、これは主張されていた瑕疵の範囲に限られます。不存在確認の訴えに当然に取消しの請求が含まれるものとして扱うべきではないとした裁判例もあります(東京高判昭和59年4月17日判時1126号120頁)。手続違反が不存在に当たるか取消事由にとどまるかが微妙な場合には、不存在確認を主位的請求とし、取消しを予備的請求として、3か月以内に併せて提起しておくのが安全です。
裁量棄却は二つの条件を要する
招集手続または決議の方法が法令または定款に違反する場合であっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、取消しの請求を棄却することができます(831条2項)。裁量棄却と呼ばれる制度です。二つの条件は「かつ」で結ばれており、両方を満たさなければなりません。違反が決議の結果に影響しなかったとしても、違反の性質や程度から見て重大な瑕疵があれば、裁量棄却はできないというのが最高裁の立場です。取締役会の有効な決議を経ずに招集され、招集通知の期間も法定の期間に2日足りなかった総会について、最高裁は、その瑕疵が決議の結果に影響を及ぼさないとしても取消請求を棄却することは許されないと判断しました(最判昭和46年3月18日民集25巻2号183頁)。手続を厳格に規制して株主総会の適正な運営を確保しようとする法の趣旨を、結果に影響がないという理由だけで没却することはできないからです。
内紛では、会社側から「多数派の議決権で結論は決まっていたのだから、手続に多少の不備があっても結果は変わらない」という反論がよく出ます。しかし、影響がないことは裁量棄却の条件の一つにすぎません。反対派の株主から出席や審議の機会を奪う違反、たとえば意図的な通知の省略や、質問の機会を与えない議事運営は、結果に影響しなくても重大な瑕疵と評価されます。他方で、形式的な誤りがあれば必ず取り消されるわけでもありません。通知の誤記のように、株主の権利行使を実質的に妨げていない違反は、裁量棄却の対象になり得ます。もっとも、昭和46年判決の事案のように、期間の不足がわずかでも取締役会の決議を欠くなど他の瑕疵と重なれば、軽微とは評価されません。違反の性質と、それが株主の権利行使にどう影響したかを、具体的に立証する必要があります。裁量棄却は、取消事由のうち招集手続や決議方法の法令・定款違反についてのみ認められ、著しく不公正な場合や、決議内容の定款違反、特別利害関係人による著しく不当な決議には適用されません。無効確認や不存在確認の訴えにも適用はありません。
判決の効果と後続手続
三つの訴えのいずれについても、請求を認容する確定判決は第三者に対しても効力を有します(838条)。会社と原告の間だけでなく、他の株主や取引先との関係でも決議の取消しや不存在が確定します。この対世効があるため、これらの訴えは会社を被告とする訴えに限られ、必要的併合の規定が置かれています。同じ理由から、これらの訴えでは会社が請求を認諾したり、決議を取り消す内容の和解をしたりすることはできないと解されており、内紛を話合いで収めるときは、訴えの取下げと、それとは別の合意を組み合わせることになります。反対に、請求を棄却する判決には対世効がなく、他の株主が別に訴えを提起することは妨げられません。会社の組織に関する訴えの中で、認容判決の効力が将来に向かってのみ生じるものは839条に列挙されていますが、決議の取消し、無効確認、不存在確認はこの列挙に含まれていません。したがって、取消判決が確定すれば、決議は遡って効力を失います。役員選任決議が取り消されれば、その役員は最初から選任されていなかったことになり、その役員が関与した取締役会や、その代表取締役が招集した後の株主総会にも影響が及びます。この連鎖の問題は第12講で扱いました。
役員の選任や解任のように登記された事項に関する決議の取消し、無効確認、不存在確認の判決が確定したときは、裁判所書記官が職権で登記を嘱託します(937条1項1号ト)。当事者が改めて登記を申請する必要はありませんが、対外的な取引については、取り消された決議で選任されていた代表取締役が第三者との間でした行為の効力が別に問題になり、表見代表取締役や不実登記の規定による第三者保護を検討することになります(第10講)。訴えを提起しただけでは、決議の効力は止まりません。判決が確定するまでの間に取り消されるべき決議に基づいて会社が動くことを止めたいのであれば、決議の効力停止の仮処分や、取締役の職務執行停止と職務代行者選任の仮処分を別に申し立てる必要があります(第26講から第28講)。
訴えの利益が失われる場合
取消しの訴えは、訴えを起こした後の事情によって訴えの利益を失うことがあります。役員選任決議の取消しを求めている間に、その決議で選任された役員の全員が任期満了で退任し、その後の株主総会で役員が新たに選任されたときは、特別の事情がない限り、訴えは実益を失うとされています(最判昭和45年4月2日[出典])。この判決の事案では、原告が「会社の利益のため」と主張しながら特別の事情について何らの立証もしなかったため、訴えの利益を欠くとされました。役員の退職慰労金を贈呈する決議について、その取消しを停止条件として同じ内容を遡って承認する再決議がされた場合にも、訴えの利益は失われるとした判例があります(最判平成4年10月29日民集46巻7号2580頁)。
ただし、後の総会を開いて再決議をすれば過去の問題を必ず消せる、というわけではありません。第一に、後の総会での再任や再決議が、争われている先行決議の瑕疵を引き継いでいる場合には、先行決議の取消しの有無が後行決議の効力の先決問題になりますから、後行決議の効力を争う訴えを併合して提起していれば、後行の総会が全員出席総会であったなどの特段の事情がない限り、先行決議を争う訴えの利益は消滅しません(最判平成11年3月25日民集53巻3号580頁、最判令和2年9月3日民集74巻6号1557頁)。裏を返せば、争いの途中で改選があったときは、後行の決議についても訴えを提起して併合しておかなければ、先行決議を争い続けられなくなるおそれがあります。第二に、再決議に遡及効を認めてよいかは事項によって異なります。役員報酬や計算書類の承認のように事後の追認になじむ事項と異なり、役員の選任や定款の変更のように法律関係の安定に関わる事項については、遡及効のある再決議によって訴えの利益が失われることはないとした裁判例があります(名古屋地判平成28年9月30日金判1509号38頁)。第三に、計算書類の承認決議が取り消されると当該期の計算書類が未確定になり、それを前提とする後続の期の計算書類も不確定になるため、後続の期の承認決議が既にされていても訴えの利益は失われません(最判昭和58年6月7日民集37巻5号517頁)。会社側にとっては、新たな決議によって争いを収束させるにも、その決議自体に瑕疵があれば新たな取消期間が進み始めるということでもあります。
争う側と会社側の準備
決議を争う側は、自らの株主資格を示す株主名簿や株式の取得の経緯、招集通知とその到達の状況、委任状や議決権行使書、議決権の集計表、議事録、総会での異議や質問の記録、当日の録音や録画があればその保存を整えます。総会の場で異議を述べた事実は取消しの訴えの要件ではありませんが、瑕疵を認識しながら異議なく賛成した株主が後に取消しを求めることは、事案によっては権利の濫用や信義則違反と評価されるおそれがありますから、異議を述べ、記録に残しておくことが望まれます。会社側は、招集の決定、通知の発送、受付、議決権の集計、議事の進行のそれぞれについて、適法に行ったことを示す資料と、指摘される違反への説明を用意します。原告となる株主の訴えの提起が悪意によるものであることを疎明できるときは、会社は担保の提供を求める申立てができますが(836条1項・3項)、原告が会社と対立しているというだけでは悪意には当たりませんし、原告が取締役や監査役でもあるときはこの申立ての対象外です(同条1項ただし書)。
役員の交代や資産の処分が差し迫っているときは、本案の訴えだけでは間に合いません。決議の効力を争う本案と、その間の執行を止める保全を組み合わせるかどうかは、争いの初期に決めるべき事項です。保全の手続は第26講から第28講で扱います。
PRACTICE NOTE
議事録の取得待ちで3か月を失わない
決議から2か月以上が過ぎてから役員変更の登記を見て初めて総会が開かれたことを知り、会社に議事録の閲覧を求めたが返事がない、という場面を考えます。会社が回答しないことを理由に、取消しの訴えの期間が延びることはありません。議事録が手元になくても、登記事項証明書に記載された登記の原因年月日は決議の日のおおよその目安になりますし(就任日が決議の日と異なることもあるため、早い方の日を基準に期限を置きます。変更の登記は変更から2週間以内が原則ですから、登記の日からも時期を絞り込めます)、株主名簿や過去の通知の状況から、自分に招集通知が来ていないことも主張できます。まず登記から決議の日と決議の内容を特定し、3か月の期限を確定させたうえで、議事録の閲覧謄写の請求と提訴の準備を並行して進めます。
この場面では、通知を受けなかった株主の割合や通知漏れの経緯によって、不存在と評価される可能性もありますが、取消事由にとどまると判断されるおそれを踏まえ、不存在確認を主位的に、取消しを予備的に請求する形で訴状を組み立てます。取消事由は決議の日から3か月を過ぎると追加できないため、通知漏れのほかに考えられる瑕疵、たとえば取締役会の招集決定の有無、定足数、議決権の算定なども、判明している範囲で当初から主張しておきます。議事録を取得した後に新たな事情が分かっても、3か月を過ぎていれば取消事由としては追加できません。
実務チェック
- 争う決議ごとに、議案、決議の日、違反する規定、請求の類型を一行にまとめる。
- 原告適格(株主等、取消しにより地位を回復する者)、被告である会社の代表者、専属管轄を確認する。
- 取消しの可能性があるなら、決議の日から3か月以内に、考えられる取消事由をすべて主張して提訴する。
- 不存在か取消しかが微妙なら、主位的請求と予備的請求を併せて提起する。
- 次の総会や改選の予定を把握し、改選があれば後行の決議も併せて争って、訴えの利益が失われないようにする。
- 差し迫った執行があるなら、本案と保全を組み合わせる。
よくある質問
不公平な決議なら、無効確認を求められますか。
「不公平」という評価だけでは、どの訴えにも当てはまりません。決議の内容が株主平等原則などの法令に違反するなら無効確認の対象ですが、特別の利害関係を有する株主の議決権行使によって著しく不当な決議がされたという場合は、取消事由(831条1項3号)であり、3か月の期間制限があります。まず、不公平だと感じる理由が、決議の内容の問題なのか、決議に至る手続や議決権行使の問題なのかを切り分ける必要があります。
総会で異議を言わなければ、後で争えませんか。
総会での異議は取消しの訴えの要件ではなく、異議を述べなかったことだけで訴えが認められなくなるわけではありません。ただし、瑕疵を知りながら異議なく賛成し、後になって取消しを求めるといった経緯は、権利の濫用や信義則の観点から不利に働くことがあります。異議は重要な証拠でもありますから、総会に出席する場合は、異議の内容を明確に述べ、議事録に記載させるか自ら記録しておくのが安全です。
訴えを起こせば、決議に基づく登記や取引は止まりますか。
止まりません。訴えの提起だけでは決議の効力に影響はなく、会社は決議に基づいて登記を申請し、取引を進めることができます。判決の確定前に執行を止めるには、決議の効力停止や職務執行停止の仮処分を別に申し立てる必要があります。判決が確定して決議が取り消されれば登記は職権で是正されますが、その間に第三者との間でされた取引の効力は、第三者保護の規定によって個別に判断されます。
この講の主な根拠条文・裁判例
- 会社法〔e-Gov法令検索〕109条1項、140条3項、160条4項、295条2項、297条、298条4項、299条、309条5項、310条、314条、386条1項、828条2項1号、830条〜831条、834条〜839条、915条1項、937条1項1号
- 民法〔e-Gov法令検索〕140条
- 最判昭和42年9月28日民集21巻7号1970頁株主は、自己に対する招集手続に瑕疵がなくても、他の株主に対する招集手続の瑕疵を理由に決議取消しの訴えを提起できるとした判例
- 最判昭和45年4月2日民集24巻4号223頁〔裁判所ウェブサイト〕役員選任決議の取消しを求める訴えの係属中に、その役員全員が任期満了で退任し新たな役員が選任されたときは、特別の事情がない限り訴えの利益を失うとした判例
- 最判昭和46年3月18日民集25巻2号183頁取締役会の有効な決議を経ず、招集通知の期間も不足していた総会について、瑕疵が決議の結果に影響しないとしても裁量棄却は許されないとした判例
- 最判昭和51年12月24日民集30巻11号1076頁決議取消しの訴えにおける取消事由の追加も決議の日から3か月以内にしなければならないとした判例
- 最判昭和54年11月16日民集33巻7号709頁無効確認の訴えで主張された瑕疵が取消事由に当たる場合、その訴えが出訴期間内に提起されていれば、後の取消しの主張は無効確認の訴えの提起時にされたものとして扱うとした判例
- 最判昭和58年6月7日民集37巻5号517頁計算書類承認決議の取消しの訴えは、後続の期の計算書類の承認決議がされていても訴えの利益を失わないとした判例
- 東京高判昭和59年4月17日判時1126号120頁決議不存在確認の訴えに当然に取消しの請求が予備的に含まれるものとして審理すべきではないとした裁判例
- 最判平成4年10月29日民集46巻7号2580頁役員退職慰労金の決議について、その取消しを停止条件として同一内容を遡及的に承認する再決議がされた場合には、取消しの訴えの利益を失うとした判例
- 最判平成11年3月25日民集53巻3号580頁、最判令和2年9月3日民集74巻6号1557頁先行の役員選任決議を争う訴えと後行決議の効力を争う訴えが併合されている場合、特段の事情がない限り先行決議を争う訴えの利益は消滅しないとした判例(令和2年判決は事業協同組合の役員選挙に関する事案)
- 最判平成28年3月4日民集70巻3号827頁ある議案を否決する株主総会決議の取消しを請求する訴えは不適法であるとした判例
- 名古屋地判平成28年9月30日金判1509号38頁役員選任や定款変更に関する決議については、遡及効を付した再決議によっても取消しの訴えの利益は失われないとした裁判例
条文のリンクは法令本文へ移動します。記載の条番号から各規定をご覧ください。裁判例のうち裁判所ウェブサイトに掲載されているものは、裁判例検索で裁判年月日から原文を確認できます。旧商法下の判例は、判断の前提と現行法との違いに注意してお読みください。
公開日 2026年7月1日/改訂日 2026年8月1日/改訂日 2026年9月21日