第2講不動産オーナーの相続24講
不動産相続の期限一覧 ― 3か月・4か月・10か月、その後の落とし穴
地主と大家の教科書 | 明徳法律事務所
掲載ページ | 改訂日:2026年9月18日
「四十九日が終わってから考えよう」「家族の合意ができるまで申告を待とう」。気持ちの整理をする時間は必要ですが、相続の期限はそれぞれ別に進みます。
この講の要点最初に作るべきものは、自分の家の事情を入れた期限表です。 同じ「相続から○年」という説明でも、死亡時から数えるものと、取得や侵害を知った時から数えるものがあります。
優先順位が分かる期限表
| 手続・権利 | 原則となる期限・起算点 | 不動産オーナーの確認事項 |
|---|---|---|
| 相続放棄・限定承認 | 自己のために相続開始があったことを知った時から3か月 | 借入・保証・物件価値を早期調査。調査が間に合わなければ期間伸長を検討 |
| 所得税の準確定申告 | 相続開始を知った日の翌日から4か月 | 申告が必要な場合。賃料・経費の締めを確認 |
| 相続税申告・納付 | 死亡を知った日の翌日から10か月 | 申告義務・特例・現金を確認。未分割でも期限は延びない |
| 遺留分侵害額請求 | 相続開始と侵害する贈与・遺贈を知った時から1年/相続開始から10年 | 家族間交渉中でも期限管理を別に行う |
| 相続登記 | 自己のための相続開始と不動産所有権取得を知った日から3年 | 協議未了時は相続人申告登記等を検討 |
| 特別受益・寄与分を反映する分割 | 相続開始から10年が原則的な区切り | 期限内の家裁への分割請求、例外・経過措置を確認 |
相続放棄等の期間は、事情に応じ家庭裁判所への伸長申立てができます。単純に「死亡から3か月」と決めつけず、誰がいつ相続人となったことを知ったかも確認します。裁判所「相続の限定承認の申述」
税務の起算点と手続は、国税庁「準確定申告」、「相続税の申告と納税」を参照してください。遺留分の期間は民法1048条の規律です。
未分割でも申告する。後から使える特例は手続を残す
相続税は、分割が終わらなければ申告しなくてよい制度ではありません。未分割財産については、原則として小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使わず申告・納付し、その後の分割を踏まえて修正申告や更正の請求を検討します。
これらの特例を後から利用するには、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、原則として申告期限から3年以内に分割するなどの要件があります。訴訟等のやむを得ない事情がある場合には、税務署長の承認を受ける別の手続があります。「3年を過ぎても裁判中なら自動延長」とは扱えません。国税庁「未分割の場合の各種特例の適用手続」
相続登記の3年と、分割の10年を混同しない
相続登記は2024年4月1日に義務化され、以前の相続も対象です。施行前から取得を知っていた不動産は、原則として2027年3月31日までの申請が必要です。施行後に取得を知った場合は、その日から3年を数えます。正当な理由なく義務に違反すると、10万円以下の過料の対象になります。
分割協議がまとまらない場合の相続人申告登記は、基本的な申請義務への対応として使える制度です。ただし、所有権の帰属を最終的に決める登記ではありません。その後、遺産分割で不動産を取得したときは、原則として分割の日から3年以内の登記も必要になります。
一方、民法904条の3は、相続開始から10年が経つと、原則として特別受益・寄与分による取り分の調整をしない仕組みです。遺産分割自体ができなくなる期限ではありません。 期限内の家庭裁判所への分割請求などの例外があり、全員合意による調整も可能です。2023年4月1日より前の相続には施行後5年間の猶予があり、少なくとも2028年3月31日まではその経過措置を踏まえて判断します。単なる交渉の継続では、期限内の家裁への請求に代わりません。
架空の設例:申告期限まであと2か月、兄弟で価格が折り合わない
アパートの評価で協議が止まり、相続税の申告期限が迫っているケースを考えます。まず「今すぐ分割で合意すること」と「期限内に申告すること」を分けます。未分割申告と納税資金を準備し、必要書類で特例の後日適用の道を確保する。そのうえで、評価資料をそろえて交渉を続けます。期限を守るためだけに、納得できない価格で協議書へ押印する必要があるとは限りません。
今日確認したいこと
- 死亡日、相続人になったことを知った日、不動産取得を知った日を記録したか。
- 借入や保証を調べる担当者と、調査の締切を決めたか。
- 未分割の場合の申告・納付・特例関係の手続を税理士と共有したか。
- 古い相続について、2027年と2028年の異なる期限を確認したか。
よくあるご質問
Q. 話合い中なら、遺留分や10年の期限は止まりますか。
A. 話合いをしているだけでは足りません。権利行使の方法や家裁への請求が必要かを、その期限より前に確認してください。
Q. 相続税がゼロでも、相続登記は必要ですか。
A. はい。相続税の有無と登記義務は別です。また、税額がゼロになる理由が特例の適用にある場合には、税務申告が必要なことがあります。
明徳法律事務所への相談で整理できること
期限が気になる場合は、相続日、届いている書類、借入の有無を最初にお知らせください。放棄の検討、遺留分の権利保全、遺産分割の申立て、税務との調整について、先に動かす手続と、資料を集めてから決める事項を整理します。
法令:相続登記は不動産登記法76条の2・76条の3・164条、分割の期間は民法904条の3・令和3年法律第24号附則3条を参照。