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『不動産オーナーの相続24講 ― 地主と大家の教科書 ―』【第4講】

遺言のない地主の相続 ― 全員一致の協議が必要なこと、必要でないこと

第4講不動産オーナーの相続24講

遺言のない地主の相続 ― 全員一致の協議が必要なこと、必要でないこと

地主と大家の教科書 | 明徳法律事務所

掲載ページ | 改訂日:2026年9月18日

「長男が管理していたから、そのまま引き継げるはず」「兄弟二人は賛成しているので、もう一人の返事を待たずに進めたい」。こうした認識の違いが、相続後の最初の対立を生みます。

この講の要点遺言のない相続では、最終的な分け方の合意と、当面の管理を分けて考えることが大切です。 分割が終わるまで何もできないわけではありませんが、代表者を名乗れば自由に売却できるわけでもありません。

「法定相続分」は、誰がどの物件を取るかまでは決めない

配偶者と子が相続人であれば、原則として配偶者が2分の1、子ども全体で2分の1です。しかし、この割合だけでは「自宅は母、賃貸マンションは長女、駐車場は長男」といった配分は決まりません。

遺産分割協議によって具体的な帰属を決めるには、相続人全員の合意が必要です。遺産の一部だけを先に分ける方法もありますが、その部分についても全員の合意が必要です。協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停・審判による解決を検討します。日本公証人連合会「遺言がないときは、どうなりますか」

「相続人はこの三人のはず」という家族の認識だけで進めず、戸籍等で相続人を確定します。未成年者、判断能力に課題がある方、行方不明者がいる場合には、代理や家庭裁判所の手続が必要かも確認します。

すべての管理に全員一致が必要なわけではない

共有物の保存行為は各共有者が行える一方、管理に関する事項は原則として持分価格の過半数、軽微なものを除く変更は原則として全員の同意という区別があります。遺産共有の不動産でも、この枠組みを踏まえて検討します。民法251条・252条

例えば雨漏りの応急措置と、建物全体の用途変更を伴う工事は同じ扱いではありません。「修繕」という名称だけで権限を判断せず、工事の内容、緊急性、費用、建物への影響を確認します。新たな賃貸借も、契約期間だけでなく借地借家法上の更新・保護の仕組みを踏まえる必要があります。

日常管理を止めないためには、当面の担当者、入出金口座、支払える費用、見積承認の方法、収支報告の頻度を文書で決めておくと役立ちます。管理委託先への連絡内容もそろえます。

預金を動かす前に、用途と権限を確かめる

遺産に属する預貯金には、遺産分割を経ずに一定額を払い戻せる制度があります。民法909条の2による金融機関での払戻しは、相続開始時の預貯金額の3分の1に、その相続人の法定相続分を掛けた額が基本で、同一金融機関からの払戻しには150万円の上限があります。家庭裁判所の手続による仮払いとは別の制度です。

もっとも、現金を引き出せることと、その金額を最終的に自分のものにできることは別です。修繕費などに使う場合も、領収書と支出の理由を残し、精算の対象を明確にします。相続放棄を検討しているなら、遺産の処分が承認の問題につながることがあるため、先に確認してください。民法909条の2・921条

架空の設例:管理をしていた長女に、弟から不信感が生まれた

父の死亡後、長女が家賃を管理し、修繕費と固定資産税を支払っています。弟は「家賃を独り占めしているのでは」と疑い、長女は「何も手伝わないのに」と反発しました。

この段階で必要なのは、相手の性格を論じることより、死亡日時点の残高、その後の入金、支出、未払費用を分けた収支表です。家賃の帰属と最終的な物件の取得者は、当然に同じになるとは限りません。相続開始後の賃料の扱いは第22講で詳しく取り上げます。

管理の情報を共有し、争いのない費用と争いのある費用を整理できれば、遺産分割の交渉に集中しやすくなります。

遺言で減らせる手間、遺言があっても残る確認

生前に物件ごとの承継先を適切に定めておけば、その財産について分割協議を経ずに承継を進められる場合があります。ただし、単に割合だけを定める遺言、対象から漏れた財産、遺留分、遺言の有効性を巡る問題は残り得ます。「遺言が一枚あれば、相続人は何も争えない」という理解は正確ではありません。

今日確認したいこと

  • 相続人と遺言の有無を、資料で確認したか。
  • 家賃、敷金、管理費、借入返済を同じ口座記録で追えるか。
  • 応急対応と、大きな契約変更・処分を区別しているか。
  • 暫定管理の合意と、最終的な分割の合意を混同していないか。

よくあるご質問

Q. 相続人の多数決で、物件の取得者を決められますか。

A. 遺産分割協議は多数決では決められません。管理行為に関する過半数のルールとは別です。

Q. 家賃を受け取る代表者に同意すると、所有権も譲ったことになりますか。

A. 単なる管理・集金の委任であれば、通常、所有権を譲る合意とは異なります。ただし、書面の内容を確認し、権限と精算方法を明記しておくべきです。

明徳法律事務所への相談で整理できること

遺言がない段階でも、相続人調査、暫定的な管理・収支報告の取り決め、分割案の交渉を組み合わせて進められます。管理を続けながら、分け方を決める道筋を作りたい方は、管理会社からの報告書と、これまでの家族間のやり取りをご用意ください。

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