第33講承継・退出・再発防止
共同経営を終わらせる5つの方法
株式・事業・人・契約・保証の整理
この講の結論
共同経営を終えるときの選択肢は、一方が他方の株式を買う、事業の一部を譲渡する、会社分割で事業を分ける、第三者に売却する、解散・清算するという五つに整理できます。どれを選ぶかは、法人格と事業と資本のどれを残すかで決まり、価格の合意だけでは終わりません。事業譲渡は契約ごとの同意と従業員の承諾を要し、会社分割は債権者異議と労働契約承継の手続を要し、いずれの方法でも許認可、知的財産、データ、そして退く側の個人保証の解除は別に手当てが必要です。会社分割をしただけでは双方が別々の会社の単独株主になるわけではなく、事業を二つに分けても既存の借入れと保証が自動的に半分になるわけでもありません。法的に移せるものの一覧と、金融機関や取引先の同意を実行条件に組み込んだ工程表を先に作ることが、価格交渉と同じだけ重要です。
50対50でも救済は残る
株式を半分ずつ持つ共同経営者が対立すると、株主総会は普通決議も特別決議も成立せず、取締役会が二人で構成されていれば取締役会も動きません。この状態を「何もできない」と受け取る相談が多いのですが、膠着したのは新しい決定だけであり、既に選任されている代表取締役の業務執行権限、監査役の権限、株主としての情報取得権(第18講)、違法行為の差止め(第27講)、役員責任の追及(第23講)は膠着の影響を受けません。相手が会社の資金を私的に使っている、無断で事業を別会社へ移しているという場合には、まずこれらの手段で損害の拡大を止め、その後に分離の条件を交渉するのが順序です。
膠着の最終手段として会社法は解散の訴え(833条1項)を置いていますが、総株主の議決権または発行済株式の10分の1以上を持つ株主が、業務執行の著しい困難により回復できない損害が生じ、または生じるおそれがあるといった事由に加えて「やむを得ない事由」を立証する必要があり、第25講で見たとおり、役員の改選ができないというだけでは足りず、株式の譲渡など他の解決手段が現実的でないことまで求められる傾向にあります。解散は事業の価値を失わせる手段でもあるため、実際には、事業を継続しながら資本関係を解消する方法を先に検討します。共同経営の継続、当面の役割分担の暫定合意、そして分離の三つを並べ、双方の資金と、どちらが事業を続ける意思と能力を持つかを確かめることが出発点です。株主間契約に、一方が価格を提示して他方が買うか売るかを選ぶ条項(いわゆるショットガン条項)や、第三者による評価に従って買い取る条項があれば、その手続が優先します。
五つの方法を比較する
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| 方法 | 残るもの | 主な法定手続 | 主な難所 |
|---|---|---|---|
| 一方が他方の株式を買う | 法人格と事業はそのまま | 譲渡承認(136条〜145条)。会社が買う場合は特別決議と財源規制(156条、160条、461条) | 価格、買主の資金、退く側の保証解除、役員の辞任 |
| 事業の一部を譲渡する | 会社は残り、事業が分かれる | 重要な一部の譲渡は特別決議(467条1項2号、309条2項11号)、反対株主の買取請求(469条) | 契約ごとの相手方の同意、従業員の承諾、許認可、譲渡会社の競業避止(21条) |
| 会社分割で事業を分ける | 承継先ごとに事業が分かれる | 分割契約・分割計画の特別決議(783条、804条)、債権者異議(789条、799条、810条)、労働契約承継法の通知・異議 | 分割対価の帰属、債務の切分け、金融機関の同意、税務上の適格要件 |
| 第三者へ売却する | 買主のもとで事業が続く | 株式譲渡または事業譲渡・会社分割の手続 | 買主の確保、価格、表明保証、買主の調査への対応、双方の退任条件 |
| 解散・清算する | 事業は原則として終了 | 解散の特別決議(471条3号、309条2項11号)、清算人の選任(478条)、債権申出の公告(499条) | 債務の弁済(500条、502条)、従業員の解雇、資産の換価、残余財産の分配(504条、505条) |
会社分割について誤解が多いのは、分割対価の帰属です。新設分割をすると、設立会社の株式を取得するのは分割をした会社であり(764条8項)、株主個人ではありません。吸収分割でも、対価は分割会社が受け取ります(759条8項)。分割の効力発生日に、その株式を剰余金の配当として株主に分配すること(いわゆる分割型分割。758条8号ロ、763条1項12号)はできますが、配当である以上、株主に持株数に応じて按分して交付されるのが原則ですから、AとBが半分ずつ持つ会社を分割しても、その時点では新旧二つの会社を二人が半分ずつ持つ状態になるだけです。Aが旧会社、Bが新会社の単独株主になるには、分割の後に、AがBの旧会社株式を、BがAの新会社株式をそれぞれ譲り受ける、あるいは旧会社がBの株式を自己株式として取得し新会社株式を対価として交付するといった追加の取引を設計する必要があります。分割対価を持株数に応じて按分しない分割は、法人税法上の適格分割の要件を満たさず(法人税法2条12号の11)、分割した会社に資産の譲渡損益が生じる場合があるため、分割の設計は税理士と並行して進めます。
株式の価格と資金
株式の売買で分ける場合、評価基準日、評価手法(純資産、収益還元、DCF、類似業種比準など)、前提となる事業計画、役員への貸付けや役員からの借入れ、事業に使っていない資産、簿外債務と偶発債務、少数株式であることの減価をどう扱うかを、価格を言い合う前に整理します。共通の算定人を選び、双方の評価に差が出たときの調整手順を先に合意する方法も有効です。相続税評価と、交渉や裁判で用いられる価格は同じではありません。反対株主の株式買取請求における公正な価格について、最高裁は、収益還元法で算定した価格から非流動性ディスカウント(市場性がないことによる減価)を行うことはできないとしましたが(最決平成27年3月26日民集69巻2号365頁)、譲渡制限株式の売買価格の決定(144条)については、投下資本の回収を保障する手続であることを理由に、DCF法による評価額から非流動性ディスカウントを行うことができるとしています(最決令和5年5月24日判時2582号95頁)。どの手続で価格が決まるかによって、同じ会社の株式でも裁判所の評価が変わり得ることを、交渉の基準として知っておく必要があります。
買主に資金がない場合、会社が退く側の株式を自己株式として取得する方法があります。特定の株主から取得するには株主総会の特別決議が必要で、その株主は議決権を行使できず(160条1項・4項、309条2項2号)、他の株主は自分も売主に加わることを請求できます(160条2項・3項。この売主追加請求は定款で排除できますが、株式の発行後に定款を変更して設ける場合は、その株式を有する株主全員の同意が必要です。164条)。取得の対価は分配可能額の範囲に限られ(461条1項3号)、退く側には資本金等の額を超える部分がみなし配当として課税されます(所得税法25条1項5号)。相続税を納付した相続人が、相続で取得した株式を相続税の申告期限の翌日から3年以内に会社へ譲渡する場合の特例(租税特別措置法9条の7)など、税務の取扱いは条件で大きく変わります。退く側の役員退職慰労金を組み合わせる場合も、実際に退任し、職務の対価として株主総会の決議または一任の根拠があり、金額が相当であることが必要で(361条、法人税法34条2項)、株式の代金の一部を退職金の名目で会社に負担させることはできません。
譲渡承認・価格決定の限界
譲渡制限株式の譲渡承認請求と、承認しない場合の売買価格の決定は、株主間の交渉が行き詰まったときに裁判所に価格を決めてもらう制度だと理解されがちですが、条文の構造は違います。株主が譲渡の承認を請求し(136条)、承認しない場合には会社または指定買取人が買い取ることを併せて請求したとき(138条1号ハ)に限り、会社は不承認の決定とともに自ら買い取るか指定買取人を指定し(140条)、一株当たり純資産額に株式数を乗じた額を供託して通知します(141条、142条)。売買価格は協議で定め、協議が調わなければ、会社の通知の日から20日以内に裁判所に価格決定の申立てをすることができ(144条1項・2項)、裁判所は請求時の会社の資産状態その他一切の事情を考慮して定めます(同条3項)。20日以内に申立てがなく協議も調わなければ、売買価格は一株当たり純資産額に株式数を乗じた額に確定します(同条5項)。会社が請求の日から2週間以内に承認の可否を通知しなかったとき、不承認の通知から40日以内に会社が買取通知をせず、かつ指定買取人も10日以内に買取通知をしなかったときは、承認したものとみなされます(145条1号・2号。これらの期間は定款で短縮できます)。
つまり、この手続で価格が決まるのは、現実に譲渡しようとする相手がいて、会社が承認せず、会社または指定買取人が買い取る場面に限られます。譲渡先が実在しない請求、供託資金のない会社による買取通知、買取通知の後の請求者による撤回(143条)など、それぞれの局面で要件と期限を守らなければ手続は進みません。他方、退く側が第三者への譲渡を本気で準備すれば、残る側は承認して第三者を株主に迎えるか、会社または指定買取人が買い取るかの選択を迫られ、交渉の膠着が動くことがあります。手続の詳細は、関連連載の非上場株式27講・第21講「譲渡承認と価格決定」に譲ります。
人・契約・許認可を分ける
事業譲渡は、判例上、一定の事業目的のために組織化され有機的一体として機能する財産の全部または重要な一部を譲渡し、譲渡会社がその事業活動を承継させ、譲渡会社が法律上当然に競業避止義務を負うものをいいます(最大判昭和40年9月22日民集19巻6号1600頁)。事業の全部または重要な一部(譲渡する資産の帳簿価額が総資産額の5分の1以下のものは除かれます)の譲渡は株主総会の特別決議を要し(467条1項1号・2号)、決議を欠く事業譲渡は無効で、譲受人の側からも無効を主張できますが、長年にわたり契約の履行を受けた後に自己の残債務を免れるためにする無効の主張は信義則に反し許されないとされています(最判昭和61年9月11日判時1215号125頁)。事業譲渡は個々の権利義務の特定承継ですから、取引先との契約は相手方の承諾がなければ移転せず(民法539条の2)、従業員の労働契約も本人の承諾が必要です(民法625条1項)。承諾しない従業員は譲渡会社に残り、その解雇は労働契約法の解雇規制に服します。譲渡した会社は、別段の合意がない限り、同一および隣接する市町村の区域内で20年間同一の事業を行えず(会社法21条1項)、譲受会社が商号を続用すれば譲渡会社の事業による債務の弁済責任を負い(22条1項。免責の登記または通知で免れます。同条2項)、譲渡会社が残る債権者を害することを知って譲渡し、譲受会社もそれを知っていた場合には、譲受会社が承継した財産の価額を限度として直接請求されます(23条の2)。共同経営を事業譲渡で分けるときは、譲渡した側の会社が同じ事業を続けられるよう、21条の適用を排除する合意を必ず契約に入れておきます。
会社分割は、分割契約または分割計画に定めた権利義務を包括的に承継させる制度で、個々の契約について相手方の同意は原則として不要です(759条1項、764条1項)。ただし、契約に会社分割による承継を制限する条項や解除権の定めがあれば、それは有効に働きますから、主要な契約は事前に確認して同意を取り付けます。労働契約については、承継する事業に主として従事する従業員と、分割契約等に承継の定めのある従業員に対して、株主総会の日の2週間前の日の前日までに書面で通知し(労働契約承継法2条1項・3項)、主として従事する従業員が承継の対象から外されたときは異議を述べて承継され(4条)、主として従事していない従業員が承継の対象とされたときは異議を述べて残ることができます(5条)。異議申出の期限は通知から13日以上置かなければなりません(4条2項)。分割会社は、従業員の理解と協力を得る努力(7条)と、承継される事業に従事する従業員との個別の協議(商法等改正法附則5条)を求められ、最高裁は、この協議が全く行われなかった場合、または説明や協議の内容が著しく不十分で法が協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には、承継される事業に主として従事する従業員が承継の効力を争えるとしています(最判平成22年7月12日民集64巻5号1333頁)。債権者については、分割後に分割会社に債務の履行を請求できなくなる債権者が異議を述べることができ(789条1項2号)、分割型分割ではすべての債権者が対象になります。異議を述べることができる債権者のうち各別の催告を受けなかった者(官報に加えて日刊新聞紙または電子公告で公告し催告を省略した場合は、不法行為によって生じた債務の債権者に限ります)は、分割契約の定めにかかわらず、分割会社に対しては効力発生日に有していた財産の価額を、承継会社に対しては承継した財産の価額を限度として、双方に請求できます(759条2項・3項、764条2項・3項)。分割会社に残る債権者は、分割型分割でない限り異議を述べることができず、この保護も受けません。
許認可は、事業譲渡では原則として承継されず、新たに取得する必要があり、会社分割でも、業法ごとに事前の認可により承継できるもの、届出で足りるもの、承継が認められず新規取得を要するものに分かれます。建設業、宅地建物取引業、旅館業、酒類販売業、産業廃棄物処理業など、事業ごとに監督官庁の手続と所要期間を確認し、効力発生日を許認可の取得に合わせて設定します。顧客は当事者間で「配分」できる財産ではなく、契約上の地位の移転と、顧客自身がどちらと取引を続けるかの選択は別の問題です。納品済みの製品の保証、進行中の案件のクレーム、前受金の返還を誰が担うかも、分ける前に定めます。
知的財産・データ・名前
共同経営の会社では、ソースコード、商標、図面、ノウハウ、ドメイン名、電話番号、SNSアカウントが誰の名義で、誰の費用で作られたかが曖昧なことが少なくありません。特許権と商標権の移転は登録が効力要件であり(特許法98条1項1号、商標法35条による準用)、著作権の譲渡は契約で足りますが、翻案権等(著作権法27条・28条)は譲渡の目的として特掲しなければ譲渡人に留保されたものと推定されます(同法61条2項)。従業員や役員が職務上作成したプログラムなどは、契約や規程に別段の定めがなければ会社が著作者となりますが(同法15条)、共同経営者の一方が会社設立前に個人で作ったものや、外注先に発注したもので著作権譲渡の合意がないものは、会社の財産ではない可能性があります。共有またはライセンスで対応するなら、利用できる範囲、期間、改良した成果の帰属、対価、保守、契約終了時の扱いを定めます。
個人名義で登録されているドメイン名やアカウントは、費用の負担、利用の経緯、就業規則や契約から会社に帰属するかを確認し、分離の際に名義変更を実行条件に入れます。顧客データを移す際、事業の承継に伴って個人データが提供される場合は本人の同意を要する第三者提供に当たりませんが(個人情報保護法27条5項2号)、承継した側は承継前の利用目的の範囲でしか利用できません(同法18条2項)。取引先との秘密保持契約に、開示を受けた情報の第三者提供や事業譲渡時の扱いを制限する条項があれば、その同意も必要です。複製できるデータだから双方が無制限に使ってよいわけではなく、分けた後に一方が他方の顧客データを使えば、営業秘密の不正使用(不正競争防止法2条1項7号)や契約違反の問題になります(第34講)。
保証解除と決済
退く側が会社の借入れについて個人保証をしていれば、その解除には金融機関の同意が必要で、当事者間で「残る側が負担する」と合意しても、金融機関に対する保証債務は消えません。経営者保証に関するガイドラインの事業承継時の特則(令和2年4月1日適用)は、前経営者と後継者の双方から二重に保証を求めないことを原則とし、退任して株式も手放した前経営者は、実質的な経営権や支配権を持つといった特別の事情がない限りいわゆる第三者に該当する可能性があるとして、株式の保有状況や代表権の有無などを踏まえて保証契約の見直しを検討するよう金融機関に求めています。もっとも、ガイドラインは金融機関に解除を義務付けるものではなく、会社の財務状況によっては解除に応じないこともあります。そのため、保証解除を分離の前提条件とするか、残る側が借換えによって従来の借入れを完済するか、解除できない場合に残る側が退く側に補償し、その補償に担保を付けるかを、金融機関との協議の結果を踏まえて決めます。金融機関が主債務者の変更や保証の差替えに応じるには、残る側の事業計画と返済能力の説明が必要になるため、分離の交渉と並行して早めに金融機関へ相談します。
決済の工程は、前提条件の充足を確認したうえで、株式の移転(株券発行会社では株券の交付が効力要件。128条1項。株券不発行会社では譲渡と名義書換。130条1項)、代金の支払、退く側の役員辞任と登記、譲渡承認の決議と株主名簿の書換え、印章・通帳・鍵・データ・アカウントの引渡しを、同じ日に順序を定めて行います。代金を分割払いにするなら、買主の支払能力、株式への担保設定、期限の利益の喪失、支払が止まったときに株式を戻すか代金を請求するかを定めます。同じ日に行うだけで履行の事故が完全に防げるわけではなく、辞任届や株式譲渡承認の議事録を弁護士が預かり、代金の入金確認後に交付するといった手順が実務上使われます(第35講)。
PRACTICE NOTE
会社を二つにすれば保証も半分になるか
【設例】二人の共同経営者が、それぞれの担当する事業を会社分割で二つの会社に分け、「借入れも保証も半分ずつにする」と合意しました。しかし、金融機関の借入れは分割契約で承継会社に移す部分と分割会社に残す部分を定めることはできても、金融機関が異議を述べれば弁済や担保の提供を求められ(789条1項2号・5項)、契約に会社分割を期限の利益喪失事由とする条項があれば、金融機関の事前同意がない分割は一括返済の請求を招きます。個人保証についても、主債務が承継会社に移ったからといって保証人が入れ替わるわけではなく、分割会社の代表者が負っていた保証をどう扱うかは、金融機関との合意によって初めて決まります。事業を分けても、分割会社に残る債務について承継会社が責任を負わないという契約の定めは、催告を受けた債権者には有効ですが、分割型分割のように異議を述べることができる債権者が各別の催告を受けなかった場合には、承継した財産の価額を限度としてその債権者に対抗できません(759条2項・3項)。
顧客契約、事務所の賃貸借、許認可、従業員、システムの利用契約にも、それぞれ承継の可否と手続があります。事業の価値を等分した評価表を作っても、法的に移せる契約と権限の一覧を突き合わせなければ、等分したはずの事業の一方が許認可や主要契約を失うことになりかねません。分割契約の内容を固める前に、主要な契約の相手方、金融機関、監督官庁への確認を終え、その結果を分離の実行条件に組み込みます。
実務チェック
- 法人格・事業・資本のどれを残すかを決め、五つの方法から候補を絞り、税務上の取扱いを並行して確認する。
- 人、契約、資産、負債、許認可、知的財産、データ、名称の目録を作り、移転に必要な同意と手続を項目ごとに書き込む。
- 金融機関、主要な取引先、監督官庁への確認を先に終え、その同意を実行条件に入れる。
- 退く側の保証解除の可否を金融機関に確認し、解除できない場合の借換えや補償と担保を定める。
- 株式・代金・辞任・名義書換・引渡しの履行順序と、分割払いの場合の担保と期限の利益喪失を定める。
よくある質問
会社分割をすれば、半分ずつの株主関係も解消しますか。
それだけでは解消しません。分割の対価である承継会社や設立会社の株式は分割をした会社が取得し、株主に分配しても持株数に応じて按分されるのが原則ですから、分割後も二つの会社を二人が同じ比率で持つ状態になります。旧会社と新会社を一人ずつの単独所有にするには、分割後の株式の相互譲渡や自己株式の取得を組み合わせた設計が必要で、按分しない分割は税務上の適格要件を満たさない点にも注意が必要です。
保証解除ができなくても、相手が負担すると約束すれば安心ですか。
安心とはいえません。金融機関に対する保証債務は当事者間の約束では消えず、残る側の会社が返済できなくなれば金融機関は退いた保証人に請求できます。約束が意味を持つのは、相手に補償する資力があり、その補償に担保が付いている場合に限られます。借換えによる完済、経営者保証に関するガイドラインの特則に基づく解除の申入れ、解除が実現するまでの補償と担保を組み合わせ、残るリスクを金額として把握したうえで分離の条件を決めます。
事業の一部を相手の会社へ譲渡した後、残った会社で同じ事業を続けられますか。
契約で定めなければ続けられません。事業を譲渡した会社は、別段の合意がない限り、同一および隣接する市町村の区域内で20年間同一の事業を行わない義務を負います(会社法21条1項)。共同経営を分ける目的で事業を譲渡する場合は、譲渡した側も同種の事業を続けることを前提に、競業避止義務を適用しない旨、または対象となる事業と地域と期間を限定する旨を契約に明記しておきます。
この講の主な根拠・判例原文
- 会社法〔e-Gov法令検索〕21条〜23条の2、128条、130条、136〜145条、156条、160条、164条、309条2項、361条、461条、467条、469条、471条、478条、499条、500条、502条、504条、505条、758条、759条、763条、764条、783条、789条、799条、804条、810条、833条
- 民法〔e-Gov法令検索〕539条の2、625条
- 会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律〔e-Gov法令検索〕2条、4条、5条、7条
- 個人情報の保護に関する法律〔e-Gov法令検索〕18条2項、27条5項2号
- 法人税法〔e-Gov法令検索〕2条12号の11、34条2項
- 事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則〔中小企業庁〕令和元年12月公表、令和2年4月1日適用。前経営者・後継者からの二重徴求の原則禁止、前経営者の保証解除の考え方
- 最大判昭和40年9月22日民集19巻6号1600頁事業譲渡の意義(有機的一体として機能する財産の譲渡、事業活動の承継、譲渡会社の競業避止義務)を示した判例
- 最判昭和61年9月11日判時1215号125頁株主総会の特別決議を欠く事業譲渡は無効であり、譲受人の側からも無効を主張できるが、長年の履行を受けた後に残債務を免れるための無効主張は信義則に反し許されないとした判例
- 最判平成22年7月12日民集64巻5号1333頁会社分割に際し、承継される事業に従事する従業員との協議が全く行われず、または説明や協議の内容が著しく不十分で法が協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には、従業員が労働契約承継の効力を争えるとした判例
- 最決平成27年3月26日民集69巻2号365頁反対株主の株式買取請求における公正な価格について、収益還元法による評価額から非流動性ディスカウントを行うことはできないとした判例
- 最決令和5年5月24日判時2582号95頁譲渡制限株式の売買価格の決定(会社法144条)において、DCF法による評価額から非流動性ディスカウントを行うことができるとした判例
条文のリンクは法令本文へ移動します。記載の条番号から各規定をご覧ください。裁判例のうち裁判所ウェブサイトに掲載されているものは、裁判例検索で裁判年月日から原文を確認できます。旧商法下の判例は、判断の前提と現行法との違いに注意してお読みください。
公開日 2026年7月1日/改訂日 2026年8月1日/改訂日 2026年9月21日