ホーム ─ 連載コラム ─ 非上場株式27講 ─ 第22講

『非上場株式27講 ― 売れない株の教科書 ―』【第22講】

会社が動いた瞬間がチャンス ― 反対株主の株式買取請求権:「公正な価格」での退出保障と、招集通知に潜むトリガーの見つけ方 ―

『非上場株式27講 ― 売れない株の教科書 ―』【第22講】

22第Ⅴ部 少数株主・経営権紛争編 ― 戦い方の技術第22講

会社が動いた瞬間がチャンス
― 反対株主の株式買取請求権:「公正な価格」での退出保障と、招集通知に潜むトリガーの見つけ方 ―

「兄が経営する会社の株を15%持っています。株主総会の招集通知が届き、議案に『株式移転による持株会社設立の件』とあります。事業承継のためだと説明されていますが、私の株はどうなるのでしょう。何かできることはありますか」

「叔父の会社から『株式併合の件』という議案の招集通知が来ました。1,000株を1株に併合すると書いてあります。私の持株は300株なので、1株未満になって現金で精算されるようです。その金額は会社が決めるのですか」

「(会社側から)事業承継のためグループ3社を合併して整理する計画です。株主のうち、疎遠になっている親族が数名います。合併に反対されたら、株を買い取らなければならないと聞きましたが、いくら用意しておけばよいのか見当がつきません」

この講の結論

会社が合併・会社分割・株式交換・株式移転といった組織再編、事業譲渡、譲渡制限を新設する定款変更、端数の生じる株式併合を行うとき、これに反対する株主は、自分の株式を「公正な価格」で買い取ることを会社に請求できます(会社法116条、182条の4、469条、785条、797条、806条)。第21講の譲渡承認請求が「株主が自ら仕掛けるルート」であるのに対し、これは「会社が動いたときにだけ使えるルート」ですが、価格の面では有利です。最高裁は、非上場会社の合併に反対した株主の買取請求について、収益還元法で算定した価格から非流動性ディスカウントを行うことはできないと判断しており(最決平成27年3月26日民集69巻2号365頁)、譲渡承認請求の売買価格(144条)でこれを許容した最決令和5年5月24日とは対照的です。

行使の手順は厳格です。総会に先立って反対を通知し、総会で反対の議決権を行使し、効力発生日の20日前から前日までの間に株式数を明らかにして請求する。このどれかを欠けば権利は失われ、いったん請求すれば会社の承諾なく撤回できません。価格は効力発生日から30日以内の協議で決まらなければ、その後30日以内に裁判所に申し立てます。少数株主側の実務は、招集通知を読み飛ばさないことに尽きます。「定款一部変更の件」「株式併合の件」「株式移転計画承認の件」という議案の中に、このルートのトリガーが潜んでいます。会社側は、組織再編の設計時に、反対株主が現れた場合の支払額を「公正な価格」ベースで見積もり、通知・公告と資金を準備しておかなければ、計画全体が想定外の現金流出で頓挫します。

1「公正な価格」での退出保障 ― 制度の趣旨と譲渡承認請求との違い

合併や株式交換のような会社の基礎に本質的な変更をもたらす行為は、株主総会の特別決議、すなわち多数決で決まります。反対した株主も、決議が成立すれば、望まない会社の株主になるか、望まない対価を受け取ることになります。そこで会社法は、多数決で決めることを認める反面、反対した株主に「公正な価格」で株式を買い取らせて会社から退出する機会を与えました。最高裁はこの制度の趣旨を、反対株主に会社からの退出の機会を与えるとともに、退出を選択した株主に組織再編がなかったとした場合と経済的に同等の状況を確保し、組織再編によって企業価値が増加する場合にはその増加分を適切に分配すること、と説明しています(最決平成23年4月19日民集65巻3号1311頁、最決平成27年3月26日民集69巻2号365頁)。

第21講の譲渡承認請求と比べると、この制度の性格がはっきりします。

← 表は横にスクロールできます →

比較項目譲渡承認請求→売買価格決定(第21講)反対株主の株式買取請求(本講)
誰が起点か株主。いつでも仕掛けられる会社。会社が組織再編等を行うときだけ使える
譲受人候補必要(138条1号ロ)不要。会社が買主
価格の概念「売買価格」。譲渡等承認請求時の資産状態その他一切の事情(144条3項)「公正な価格」。ナカリセバ価格またはシナジー分配価格。基準日は買取請求日
非流動性ディスカウント行うことができる(最決令和5年5月24日)収益還元法による場合、行うことはできない(最決平成27年3月26日)
売買の成立時期会社・指定買取人の買取通知の到達買取請求の時(撤回は会社の承諾が必要)。買取りの効力は効力発生日
申立期間買取通知の日から20日以内効力発生日から30日以内に協議不成立→その後30日以内
申立てを落とした場合1株当たり純資産額×株式数で確定(144条5項)効力発生日から60日経過後は株主が撤回できる(117条3項等)。価格は未確定のまま
供託・仮払い会社側が1株当たり純資産額×株式数を供託会社は決定前に「公正な価格と認める額」を仮払いできる(117条5項等)。60日経過後は法定利息
買主が会社である場合の税務みなし配当(総合課税)。相続株式は3年10か月の特例合併・株式併合の反対株主はみなし配当とならず譲渡所得。それ以外(株式交換・分割・事業譲渡・定款変更)はみなし配当(第8節)

図表1 二つの換価ルートの比較 ― 受動的だが、価格と税務で有利な場面がある

このルートの弱点は受動性です。会社が動かなければ、権利は発生しません。しかし非上場会社でも、事業承継に伴う持株会社化やグループ再編、M&Aに伴う株式交換、少数株主の排除を目的とする株式併合など、トリガーとなる行為は相当な頻度で行われています。第20講で見た五つの換価ルートの中で、このルートは「使える機会が来たときに、期限を落とさない」ことがすべてです。

2トリガーとなる会社の行為 ― 非上場会社で起きる場面の一覧

株式買取請求権が発生する会社の行為は、会社法上、次のとおりです。

← 表は横にスクロールできます →

会社の行為買取請求の根拠対象株式請求できる期間価格決定の申立て
全部の株式に譲渡制限を新設する定款変更116条1項1号全部の株式効力発生日の20日前の日から前日まで(116条5項)117条2項
ある種類の株式に譲渡制限または全部取得条項を付す定款変更116条1項2号111条2項各号の株式同上117条2項
株式併合・分割・無償割当て・単元株の定款変更・募集株式の発行等で、322条2項の定款の定めのある種類株主に損害を及ぼすおそれ116条1項3号当該種類の株式同上117条2項
1株に満たない端数が生じる株式併合182条の4第1項端数となる部分の全部効力発生日の20日前の日から前日まで(182条の4第4項)182条の5第2項
事業の全部の譲渡、重要な一部の譲渡、子会社株式の譲渡、事業全部の譲受け、事業全部の賃貸等(事業譲渡等。467条1項1号〜4号)469条1項全部の株式効力発生日の20日前の日から前日まで(469条5項)470条2項
吸収合併の消滅会社、吸収分割の分割会社、株式交換の完全子会社の株主785条1項全部の株式効力発生日の20日前の日から前日まで(785条5項)786条2項
吸収合併の存続会社、吸収分割の承継会社、株式交換の完全親会社の株主797条1項全部の株式効力発生日の20日前の日から前日まで(797条5項)798条2項
新設合併・新設分割・株式移転をする会社の株主806条1項全部の株式会社の通知または公告の日から20日以内(806条5項)807条2項(設立会社の成立の日から起算)
(参考)全部取得条項付種類株式の全部取得172条1項(取得価格の決定申立て)全部取得条項付種類株式取得日の20日前の日から前日までに裁判所へ直接申立て―(第14講)

図表2 株式買取請求権のトリガー一覧 ― 新設型(株式移転など)だけは請求期間の起算が異なる

非上場会社で実際に多いのは、①事業承継の一環として株式移転や株式交換で持株会社を作る場面(806条・785条)、②グループ会社を合併して整理する場面(785条・797条)、③少数株主を排除する目的で端数の生じる株式併合を行う場面(182条の4)、④事業を売却する場面(469条)です。逆に、非上場会社ではすでに全株式に譲渡制限があるのが通常ですから、116条1項1号(譲渡制限の新設)が問題になる場面は限られます。

買取請求権が発生しない場合もあります。事業の全部を譲渡する決議と同時に解散の決議がされた場合(469条1項1号)、存続会社側の簡易組織再編(対価が純資産の5分の1以下。797条1項ただし書、796条2項)、消滅会社の株主に持分会社の持分等が割り当てられる合併・株式交換(785条1項1号、783条2項)などです。会社側が簡易・略式の要件を満たすように再編を設計すれば、買取請求権の発生を避けられる場面があるということでもあります。

3誰が「反対株主」か ― 事前通知+総会での反対、総会がない場合

買取請求ができるのは「反対株主」です。反対株主の定義は、その行為に株主総会の決議が必要かどうかで分かれます(785条2項ほか各条同旨)。

図解A 「反対株主」の三類型

① 総会で議決権を行使できる株主総会に先立って会社に反対する旨を通知し、かつ総会でその行為に反対した株主両方が必要。欠席して何もしなければ反対株主にならない
② 総会で議決権を行使できない株主議決権制限株式の株主、基準日後の取得者など。通知も反対も不要で、当然に反対株主785条2項1号ロ等
③ 総会決議を要しない場合略式組織再編(特別支配会社が相手方。784条1項)など、総会がない場合はすべての株主が反対株主(特別支配会社を除く)785条2項2号等。通知・反対の手順は不要

図解A ①の二段構えを一つでも欠くと、権利は発生しない

事前の反対通知。「当該株主総会に先立って」反対する旨を会社に通知しなければなりません。方式の定めはありませんが、到達の時期と内容が争われないよう、招集通知を受け取ったらすぐに、対象となる行為を特定して反対する旨を内容証明郵便で送ります。総会当日に会場で反対しただけでは、事前の通知がないので反対株主になりません。

総会での反対。総会に出席して反対の議決権を行使するか、書面投票・電子投票が認められている会社では議決権行使書で「反対」を選んで提出します。代理人による出席も可能です(310条)。欠席して議決権行使書も出さなければ、反対したことになりません。また、一部の株式について賛成し一部について反対するといった扱いは、議決権の不統一行使(313条)の手続を経ない限りできませんから、保有する株式全部について反対の議決権を行使します。

議決権のない株主。議決権制限株式(108条1項3号)の株主や、基準日後に株式を取得した株主は総会で議決権を行使できませんが、これらの株主は通知も反対も要せず、当然に反対株主として買取請求ができます(785条2項1号ロ等)。第9講で見た無議決権株式を持つ少数株主にも、このルートは開かれています。

総会がない場合。相手方が議決権の10分の9以上を有する特別支配会社である略式組織再編では株主総会の承認が不要になり(784条1項、796条1項)、この場合、特別支配会社以外のすべての株主が反対株主になります。他方、存続会社側の簡易組織再編(796条2項)では、存続会社の株主には買取請求権自体がありません(797条1項ただし書)。ただし、法務省令で定める数の株式を有する株主が通知・公告の日から2週間以内に反対を通知すれば株主総会の承認が必要になり(796条3項)、その場合には反対株主として買取請求ができるようになります。

4行使の手順と期限 ― 20日間の窓、株券の提出、撤回の禁止

会社の通知。会社は、効力発生日の20日前までに、株主に対し、その行為をする旨(吸収合併等では相手会社の商号・住所も)を通知しなければなりません(116条3項、469条3項、785条3項、797条3項)。公開会社である場合、または株主総会の決議で承認を受けた場合には、公告で代えることができます(785条4項等)。非公開会社でも、総会決議を経た後は官報公告で代えられるため、少数株主が官報を見ていなければ効力発生日を知らないまま請求期間が過ぎることがあります。招集通知の段階で効力発生日を確認しておくことが実務上の防御になります。株式併合では、株主への通知の期限が効力発生日の2週間前から20日前に延長されています(182条の4第3項)。

請求期間。吸収型の組織再編、事業譲渡等、定款変更、株式併合では、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、買取請求に係る株式の数を明らかにして請求します(116条5項、182条の4第4項、469条5項、785条5項、797条5項)。この20日間より前に請求しても、後に請求しても、無効です。新設合併・新設分割・株式移転では起算が異なり、会社は総会決議の日から2週間以内に株主に通知し(806条3項)、株主はその通知または公告の日から20日以内に請求します(806条5項)。事業承継で用いられる株式移転による持株会社化はこの類型です。効力発生日(設立会社の成立の日)を基準に数えていると、期間を過ぎてしまいます。

← 表は横にスクロールできます →

時期株主がすること会社がすること根拠(吸収合併の消滅会社の例)
招集通知の受領議案(合併契約承認等)と効力発生日を確認。事前開示書面の閲覧・謄写を請求。反対通知を内容証明で送付総会の2週間前の日等から事前開示書面を本店に備置(782条)782条、785条2項1号イ
株主総会出席または議決権行使書で反対の議決権を行使特別決議(309条2項12号)783条1項
効力発生日の20日前まで通知(または官報公告)で効力発生日を確認株主に吸収合併等をする旨・相手会社の商号住所を通知(決議後は公告で代替可)785条3項・4項
効力発生日の20日前の日〜前日株式数を明らかにして買取請求(内容証明)。株券発行会社なら株券を提出請求を受理。以後、株主は会社の承諾なく撤回できない785条5項〜7項
効力発生日買取りの効力が生じ、株主の地位を失う合併の効力発生。消滅会社の買取義務は存続会社が承継786条6項、786条1項括弧書
効力発生日から30日価格の協議価格の協議。公正な価格と認める額の仮払いが可能786条1項・5項
その後30日以内協議不成立なら裁判所に価格決定の申立て会社側からも申立て可能786条2項
効力発生日から60日経過後申立てがなければいつでも撤回できる。決定額には法定利率による利息利息負担を避けるため仮払いを検討786条3項・4項

図表3 吸収合併の消滅会社株主の場合の時系列 ― 20日間の窓を逃さない

株券の提出。株券が発行されている株式について買取請求をするときは、株券を会社に提出しなければなりません(785条6項等。株券喪失登録をした者を除く)。株券発行会社であるにもかかわらず株券が発行されていない場合は、事前に株券の発行を請求しておきます。第21講の譲渡承認請求では株券の「供託」でしたが、こちらは会社への「提出」です。

撤回の禁止と失効。買取請求をした株主は、会社の承諾を得なければ撤回できません(785条7項等)。価格が決まる前に「やめる」ことはできない設計です。ただし、効力発生日から60日以内に価格決定の申立てがなければ、その後は株主はいつでも撤回できます(786条3項等)。また、会社が組織再編等を中止すれば買取請求は効力を失います(785条8項等)。買取請求に係る株式については、株主名簿の名義書換に関する133条の適用がなく(785条9項等)、請求後に他人に譲渡して名義書換を求めることはできません。

買取りの効力発生時期。買取りは効力発生日に効力を生じます(786条6項等)。平成26年改正前は代金支払時に効力が生じるとされていましたが、改正により効力発生日に統一されました。株主は効力発生日に株主の地位を失い、その後は価格の支払を受ける債権者になります。株券発行会社では、株券と引換えに代金が支払われます(786条7項)。

5価格の協議・申立て・仮払い ― 30日+30日と法定利息

価格は、まず株主と会社の協議で定めます。協議が調えば、会社は効力発生日から60日以内に支払わなければなりません(117条1項、786条1項等)。効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、株主または会社は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に価格の決定を申し立てることができます(117条2項、786条2項等)。新設型では「効力発生日」を「設立会社の成立の日」と読み替えます(807条)。申立先は会社の本店所在地を管轄する地方裁判所で(868条1項)、裁判所は審問の期日を開いて申立人と相手方の陳述を聴き(870条2項2号)、理由を付した決定をします(871条)。決定に対しては即時抗告ができます(872条5号)。手続の性質・費用・期間は第21講第6節および第25講で扱う売買価格決定と同様で、申立手数料は収入印紙1,000円です。

60日を過ぎるとどうなるか。譲渡承認請求の場合(144条5項)と異なり、申立てがなくても価格が法定の額で確定することはありません。効力発生日から60日以内に申立てがなければ、株主はいつでも買取請求を撤回でき(117条3項等)、撤回すれば株主の地位に戻ります。もっとも、合併の消滅会社のように、効力発生日にすでに会社が消滅している場合には、撤回の実益は限られます。

法定利息と仮払い。会社は、裁判所が決定した価格に対し、効力発生日から60日の期間満了日後の法定利率による利息を支払わなければなりません(117条4項、786条4項等。民法404条)。価格決定に1年以上かかれば、利息だけで相当な額になります。これを避けるため、平成26年改正で、会社は価格決定の前に「公正な価格と認める額」を株主に支払うことができるようになりました(117条5項、786条5項等)。この仮払いをすれば、その額については利息の負担を免れます。株主側から見れば、仮払いは会社が「最低でもこの額」と認めた金額であり、その受領は買取請求の撤回や価格の合意を意味しません。仮払いを受けた上で、裁判所の決定でさらに高い価格を求めることができます。

6「公正な価格」の判例法理 ― ナカリセバ価格とシナジーの分配

「公正な価格」の内容は、条文には書かれていません。上場会社の組織再編をめぐる一連の最高裁決定が、その意味を明らかにしました。

← 表は横にスクロールできます →

判例事案判示の要点
最決平成23年4月19日民集65巻3号1311頁上場会社(放送事業者)の吸収分割に反対した株主(大株主)の買取請求反対株主に「公正な価格」での買取請求権を与えた趣旨は、組織再編により退出を選択した株主に、組織再編がなかったとした場合と経済的に同等の状況を確保すること。シナジーその他の企業価値の増加が生じない場合には、承認決議がされることがなければその株式が有したであろう価格(ナカリセバ価格)をもって公正な価格とする。基準日は買取請求がされた日。上場株式では市場株価を参照でき、組織再編の影響を排除するため公表前の株価を参照することも裁判所の合理的な裁量の範囲内
最決平成23年4月26日集民236号519頁上場会社の株式交換(完全子会社化)に反対した株主の買取請求企業価値の増加が生じない場合の公正な価格は、原則として買取請求日におけるナカリセバ価格。公表前の市場株価を参照し市場全体の変動で補正する算定も裁判所の裁量内
最決平成24年2月29日民集66巻3号1784頁上場会社2社の共同株式移転に反対した株主の買取請求企業価値の増加が生じる場合の公正な価格は、株式移転比率が公正なものであったならば買取請求日に株式が有していると認められる価格(シナジー分配価格)。相互に特別の資本関係がない会社間で、株主の判断の基礎となる情報が適切に開示され、適法に総会で承認されるなど一般に公正と認められる手続により効力が発生した場合には、株主の合理的な判断が妨げられたと認めるに足りる特段の事情がない限り、比率は公正なものとみる。基準日は買取請求日
最決平成27年3月26日民集69巻2号365頁非上場会社の吸収合併に反対した消滅会社の株主の買取請求(785条1項)。原審は収益還元法で算定した価格に25%の非流動性ディスカウントを行い1株80円とした収益還元法は将来期待される純利益を資本還元率で還元して現在の価格を算定するもので、市場における取引価格との比較という要素は含まれていない。非上場会社において785条1項の買取請求がされ、裁判所が収益還元法を用いて買取価格を決定する場合、非流動性ディスカウントを行うことはできない。原決定を破棄し、1株106円と自判

図表4 「公正な価格」をめぐる最高裁決定 ― 非上場会社への適用は平成27年決定

非上場会社への当てはめ。上場株式には市場株価がありますが、非上場株式にはありません。ナカリセバ価格は、DCF法・収益還元法・時価純資産法などの評価手法によって算定することになり、ここで第3講・第4講の評価理論が働きます。平成27年決定は、非上場会社の買取請求において収益還元法が用いられた場合に非流動性ディスカウントを否定しましたが、その理由は、この手続が「退出する株主に組織再編がなかった場合と同等の状況を確保する」ものであること、収益還元法には市場性との比較という要素が含まれていないことにあります。これに対し、第21講で見た最決令和5年5月24日は、144条の売買価格決定について、当該手続が投下資本回収の手段の保障であって組織再編に対する救済ではないこと等を理由に、DCF法による評価額からの非流動性ディスカウントを許容し、平成27年決定は「事案を異にし、本件に適切でない」としました。同じ株式でも、どの手続で価格が決まるかによって、2〜3割の差が生じ得るということです。少数派であることを理由とするマイノリティ・ディスカウントの可否については、平成27年決定は判断しておらず、学説上議論があります。

「独立した当事者間」でない場合。平成24年決定が組織再編の条件を尊重した前提は、相互に特別の資本関係がない会社間での公正な手続でした。非上場会社の組織再編の多くは、同じオーナーが支配する親子会社・兄弟会社の間で行われ、この前提を満たしません。その場合、合併比率や株式交換比率の公正性は推定されず、裁判所が独自に企業価値を評価して公正な価格を算定することになります。少数株主側にとっては、「グループ内再編だから比率は会社が決めたとおり」という会社側の主張を、平成24年決定の射程外であるとして争う根拠になります。

7非上場会社での実際 ― 持株会社化・グループ再編・株式併合と情報収集

非上場会社で買取請求権のトリガーとなる典型的な場面を、少数株主の側から見ます。

図解B 非上場会社で買取請求のトリガーになる四つの場面

持株会社化株式移転(806条)または株式交換(785条)で後継者の会社を親会社にする事業承継スキーム株式移転は通知・公告日から20日以内に請求
グループ再編兄弟会社の合併、事業部門の分割(785条・797条)同一オーナー支配下では比率の公正性は推定されない
株式併合スクイーズアウト少数株主の持株が1株未満の端数になる割合での株式併合(182条の4)端数部分の買取請求または端数処理の価格決定(235条・234条)。第14講
事業の売却事業の全部または重要な一部の譲渡、子会社株式の譲渡(469条)解散決議を伴う全部譲渡は対象外

図解B いずれも「株主総会の招集通知」の議案に現れる

情報収集の手段。組織再編をする会社は、総会の2週間前の日等から、合併契約等の内容と法務省令で定める事項(対価の相当性に関する事項、相手会社の計算書類など)を記載した書面を本店に備え置き、株主は営業時間内いつでも閲覧・謄写を請求できます(782条、794条、803条、施規182条以下)。株式併合でも同様の事前開示があり、併合割合の相当性や端数処理で株主に交付される金銭の見込みに関する事項が記載されます(182条の2、施規33条の9)。少数株主は、招集通知を受け取ったら、まずこの事前開示書面の謄写を請求します。会社が対価をどのように算定したか、第三者の算定書があるか、比率の根拠は何かが分かり、買取請求をするか、いくらを目標にするかの判断材料になります。事前開示の記載が不十分であれば、それ自体が手続の公正性を疑わせる事情として、価格決定手続や差止めの主張に使えます。

差止めとの関係。組織再編が法令・定款に違反し株主が不利益を受けるおそれがある場合、株主は差止めを請求できます(784条の2、796条の2、805条の2)。略式組織再編では対価が著しく不当な場合も差止事由になります。株式併合についても同様です(182条の3)。差止めは組織再編そのものを止める手段であり、買取請求は退出して価格を争う手段ですから、目的が異なります。少数株主が「会社に残って争う」のか「公正な価格で退出する」のかを、招集通知を受け取った時点で決めておく必要があります。両方の準備を並行し、総会後に選ぶのが実務です。

株式併合の場合の特殊性。端数の生じる株式併合では、端数部分の買取請求(182条の4)のほか、会社が端数を競売または裁判所の許可を得て売却し、その代金を株主に交付する端数処理の手続(235条・234条)が並行します。買取請求をした株主は「公正な価格」を裁判所に決めてもらえますが、買取請求をしなければ、端数処理で会社が定めた価格(裁判所の許可を経た売却価格)を受け取ることになります。第14講で見たとおり、スクイーズアウトの局面で少数株主が価格を争う正規のルートは、この買取請求です。

8会社側の視点 ― 買取請求リスクの見積り、通知、資金、税務

会社側から見れば、組織再編の設計時に「反対株主が買取請求をしてきたら、いくらの支払リスクがあるか」を織り込むことが必須です。見積りの基準は、税務上の評価額でも簿価純資産でもなく、裁判所が決める「公正な価格」、すなわち非流動性ディスカウントを施さないDCF法・収益還元法等による実質的な価値です。少数株主の持株比率が合計で20%を超えるような会社では、全員が買取請求をした場合の支払額が、組織再編で得ようとしている効果を上回ることもあります。

会社側の設計チェック ①反対株主になり得る株主と持株数の把握、②「公正な価格」ベースでの最大支払額の見積り、③通知(または公告)を効力発生日の20日前までに確実に行う体制、④仮払いによる利息負担の抑制、⑤簡易・略式の要件を満たすスキーム選択の可否、⑥買取りに応じた場合の税務(次の段落)、⑦買取請求が出た場合に組織再編を中止する選択肢の留保(785条8項等)。とくに③は、通知の懈怠が過料の対象になるだけでなく(976条2号)、請求期間の起算を争われる原因になります。

財源規制との関係。組織再編(469条、785条、797条、806条)に伴う買取りは、分配可能額による財源規制(461条)の対象に列挙されていません。他方、定款変更(116条)と株式併合(182条の4)に伴う買取りについては、支払った金銭が分配可能額を超えるときは業務執行者が超過額の支払義務を負います(464条)。

税務。会社が買取請求に応じて自社の株式を取得すれば自己株式の取得ですが、みなし配当課税の扱いはトリガーとなった行為によって異なります。合併に反対する消滅会社株主の買取請求に基づく買取りと、株式併合に反対する株主の買取請求(182条の4)に基づく買取りは、みなし配当が生じない取得として政令に列挙されており(所得税法25条1項5号、所得税法施行令61条1項8号・9号)、売主である株主には譲渡所得課税(20.315%)のみが生じます。これに対し、株式交換・会社分割・事業譲渡・定款変更に反対する株主の買取請求に基づく買取りは列挙されておらず、資本金等の額を超える部分についてみなし配当課税(総合課税)が生じます(第13講)。同じ「公正な価格」でも、株主の手取りが大きく異なる可能性があり、会社側はこれを価格協議の材料として理解しておく必要があります。相続で取得した株式については、相続税の申告期限後3年以内の発行会社への譲渡にみなし配当課税を受けない特例があり(措法9条の7)、買取請求に基づく買取りへの適用については税理士に確認します。

反対株主が出ない設計。疎遠な親族株主が複数いる会社が組織再編を計画する場合、組織再編を実行してから買取請求を受けるより、先に任意の買取交渉(第12講)を行い、株主構成を整えてから組織再編に進むほうが、価格と時間の両面で有利になることが多くあります。買取請求では「公正な価格」がノンディスカウントで決まるのに対し、任意交渉では双方が合意できる価格を探せるからです。組織再編の予定を株主に伏せたまま任意交渉を進めることは、後に価格決定手続で「情報が適切に開示されていなかった」と評価される要因にもなり得ますから、開示の程度は慎重に設計します。

PRACTICE NOTE

招集通知が届いた日からのチェック

少数株主が株主総会の招集通知を受け取った日に、当事務所が確認する項目です。会社側の対応は右欄に併記しました。

← 表は横にスクロールできます →

確認項目少数株主側会社側
議案の種類「合併契約承認」「株式交換契約承認」「株式移転計画承認」「吸収分割契約承認」「事業譲渡契約承認」「株式併合」「定款一部変更(譲渡制限・全部取得条項)」の有無を確認する。名称が穏当でも内容を読む議案の内容が買取請求権のトリガーに当たるかを確認し、反対株主の出現を想定する
効力発生日契約書・計画書に記載された効力発生日を確認し、20日前の日と前日をカレンダーに入れる。新設型(株式移転等)は通知・公告日から20日効力発生日の20日前までに通知を発する日程を組む。公告代替の可否を確認する
事前開示書面本店で閲覧・謄写を請求し、対価の相当性に関する記載、算定書の有無、相手会社の計算書類を確認する法務省令の記載事項を漏れなく備置する。記載不備は手続の公正性を疑わせる
反対通知総会に先立って、対象行為を特定した反対通知を内容証明で送る到達日と内容を記録する
総会出席または議決権行使書で、保有株式全部について反対する議決権行使の記録(反対した株主と株式数)を正確に残す
買取請求効力発生日の20日前の日から前日までに、株式数を明らかにして内容証明で請求する。株券発行会社なら株券を提出する請求の到達日・株式数を記録する。撤回には会社の承諾が必要であることを踏まえて対応する
価格「公正な価格」の目標額を、DCF法・収益還元法等で算定する(私的鑑定)。非流動性ディスカウントは争う。同一オーナー支配下の再編なら比率の公正性は推定されないと主張する公正な価格と認める額を算定し、仮払いを検討する。効力発生日から30日の協議期間に合意を試みる
申立て効力発生日から30日以内に協議不成立なら、その後30日以内に申立て。60日を過ぎると撤回はできるが価格は決まらない会社側からの申立ても検討する。長期化すれば法定利息が累積する
税務トリガーが合併・株式併合なら譲渡所得、それ以外ならみなし配当となる可能性を踏まえ、手取りを計算する(第13講)源泉徴収の要否を確認する。株主との価格協議で税務の差を理解しておく
差止めとの選択会社に残って争う(差止め・決議取消し)か、退出する(買取請求)かを、総会前に方針決定する法令・定款違反がないか、開示が十分かを再確認する

少数株主にとって最も多い失敗は、招集通知を読まずに総会を欠席し、後から「買い取ってほしい」と言うことです。事前の反対通知と総会での反対の議決権行使を経ていない株主は反対株主になれず、このルートは閉じます。招集通知が届いたら、総会前に弁護士に持ち込む。それだけで、選べる手続の幅がまるで変わります。

実務チェック

  • (株主側)招集通知の議案が、合併・分割・株式交換・株式移転・事業譲渡・株式併合・譲渡制限や全部取得条項を付す定款変更のいずれかに当たるかを確認したか。
  • (株主側)総会に先立って反対通知を送り、総会で保有株式全部について反対の議決権を行使したか(欠席・棄権は反対にならない)。
  • (株主側)効力発生日の20日前の日から前日まで(株式移転等は通知・公告日から20日以内)に、株式数を明らかにした買取請求を内容証明で送ったか。株券発行会社なら株券を提出したか。
  • (株主側)事前開示書面を謄写し、対価の算定根拠と相手会社の計算書類を入手したか。
  • (株主側)効力発生日から30日以内の協議と、その後30日以内の申立ての期限をカレンダーに入れたか。
  • (株主側)買取請求後は会社の承諾なく撤回できないことを踏まえ、公正な価格の見通しと税務上の手取りを事前に確認したか。
  • (会社側)反対株主になり得る株主と持株数、「公正な価格」ベースの最大支払額を見積もったか。
  • (会社側)効力発生日の20日前までの通知(または公告)と、事前開示書面の備置を日程に組み込んだか。
  • (会社側)仮払いによる利息負担の抑制、簡易・略式スキームの可否、買取りに伴う税務(みなし配当の有無)を確認したか。
  • (双方)差止め・決議取消しの訴えと買取請求の関係を整理し、総会前に方針を決めたか。

よくある質問

株式移転で持株会社を作る議案の招集通知が届きました。反対して株を買い取ってもらうには、いつまでに何をすればよいですか。

三つの手順があります。第一に、株主総会に先立って、株式移転に反対する旨を会社に通知します(会社法806条2項1号)。内容証明郵便で、議案を特定して送ります。第二に、総会に出席するか議決権行使書で、保有株式全部について反対の議決権を行使します。第三に、買取請求です。株式移転などの新設型組織再編では、会社は総会決議の日から2週間以内に株主に株式移転をする旨を通知(または公告)し、株主はその通知または公告の日から20日以内に、株式数を明らかにして買取請求をします(806条3項〜5項)。吸収合併などの「効力発生日の20日前から前日まで」という期間とは起算が異なるので注意してください。株券発行会社なら株券も提出します。その後、設立会社の成立の日から30日以内に価格の協議が調わなければ、その後30日以内に裁判所へ価格決定を申し立てます(807条2項)。事業承継目的の持株会社化はオーナー一族が支配する会社間で行われるのが通常で、株式移転比率の公正性が推定される「相互に特別の資本関係がない会社間」(最決平成24年2月29日)には当たらないことが多いため、裁判所が企業価値を独自に評価して公正な価格を決めることになります。

1,000株を1株にする株式併合で、私の300株は端数になります。会社が示した金額に納得できません。

端数の生じる株式併合に反対する株主は、端数となる部分の全部を「公正な価格」で買い取ることを会社に請求できます(会社法182条の4第1項)。総会に先立って反対を通知し、総会で反対の議決権を行使した上で、効力発生日の20日前の日から前日までの間に請求します。価格は、効力発生日から30日以内に協議が調わなければ、その後30日以内に裁判所に決定を申し立てます(182条の5第2項)。買取請求をしなければ、会社が端数をまとめて売却し、裁判所の許可を得た価格で代金が交付される端数処理(235条・234条)の結果を受け入れることになります。会社は総会の2週間前の日等から、併合割合の相当性や端数処理で株主に交付される金銭の見込みに関する事項を記載した書面を本店に備え置いていますので(182条の2、施規33条の9)、まずその謄写を請求してください。なお、株式併合に反対する株主の買取請求に基づく買取りは、みなし配当が生じない取得として政令に列挙されており(所得税法施行令61条1項9号)、売却益は譲渡所得(20.315%)として課税されます。スクイーズアウト全体の仕組みは第14講をご覧ください。

総会には行けませんでした。議決権行使書も出していません。今から買取請求はできますか。

できません。株主総会で議決権を行使できる株主が反対株主となるには、総会に先立って反対を通知し、かつ総会で反対したことが必要です(会社法785条2項1号イ等)。欠席して議決権行使書も提出していなければ、「総会で反対した」に当たりません。例外は、議決権制限株式の株主や基準日後の取得者など、総会で議決権を行使できない株主(当然に反対株主になります)と、略式組織再編のように総会決議が不要な場合(すべての株主が反対株主になります)です。買取請求以外の手段としては、決議に手続上の瑕疵があれば決議取消しの訴え(831条。決議の日から3か月以内)、対価が著しく不当な略式組織再編なら差止め、合併等の無効の訴え(828条)がありますが、いずれも価格の救済ではなく要件も厳格です。次に会社が動いたときに同じ失敗をしないよう、招集通知が届いた日に専門家に相談する体制を作っておくことをお勧めします。

会社から「公正な価格と認める額」として1株5,000円が振り込まれました。受け取ると、この金額で決まってしまいますか。

決まりません。会社は、裁判所の価格決定があるまでの間、公正な価格と認める額を株主に支払うことができ(会社法117条5項、786条5項等)、これは決定後に生じる法定利息の負担を減らすための仮払いです。受領しても、買取請求を撤回したことにも、価格に合意したことにもなりません。効力発生日から30日以内に協議が調わなければ、その後30日以内に裁判所に価格決定を申し立て、裁判所が決めた価格が仮払額を上回れば差額と利息を受け取ります。もっとも、会社が仮払額を「公正な価格」だと主張してくる以上、その算定根拠(評価手法、事業計画、ディスカウントの有無)を確認し、事前開示書面や計算書類をもとに、こちら側の算定を用意する必要があります。非上場会社の買取請求では、収益還元法による価格から非流動性ディスカウントを行うことはできないとされていますので(最決平成27年3月26日)、会社側の算定にディスカウントが含まれていないかを確認してください。

(会社側)グループ会社の合併を計画しています。親族株主が反対して買取請求をしてきたら、どのくらいの支払を想定すべきですか。

基準は「公正な価格」です。非上場会社の合併では、DCF法や収益還元法を中心とする実質的な企業価値をもとに算定され、非流動性ディスカウントは行えません(最決平成27年3月26日)。税務上の配当還元価額や簿価純資産ではなく、第3講・第4講で見た評価手法による価値を、少数株主の持株数全部について見積もります。同一オーナーが支配する会社間の合併では、合併比率の公正性が推定される「相互に特別の資本関係がない会社間」の手続(最決平成24年2月29日)には当たらないため、比率の根拠となる第三者算定書を用意し、事前開示書面に対価の相当性を丁寧に記載することが、後の価格決定手続で重要になります。資金面では、効力発生日から60日を超えると法定利息が発生しますから、公正な価格と認める額を仮払いする準備をしておきます。税務面では、合併に反対する消滅会社株主の買取請求に基づく買取りはみなし配当が生じない取得に該当し(所得税法施行令61条1項8号)、株主側は譲渡所得課税で済みます。反対が見込まれる株主が複数いる場合は、合併の前に任意の買取交渉(第12講)で株主構成を整えるほうが、価格と時間の両面で有利なことが多くあります。

おわりに ― 招集通知を読み飛ばさない

反対株主の株式買取請求権は、会社の側が動いたときにだけ開く扉です。しかしその扉の向こうにある「公正な価格」は、少数株主が自ら仕掛ける譲渡承認請求の売買価格より高くなることがあり、税務上も有利な場合があります。扉が開くのは、株主総会の招集通知が届いたときです。議案の名称が穏当でも、契約書・計画書・事前開示書面を読み、効力発生日を確認し、反対通知と総会での反対、20日間の窓の中での買取請求という手順を踏む。それができるかどうかで、同じ株式の値段が変わります。

明徳法律事務所(大阪市西区)では、少数株主の側からは、招集通知の分析、事前開示書面の検討、反対通知・買取請求の手続代理、公正な価格の算定(公認会計士との協働)、価格決定の申立てと差止め・決議取消しとの選択まで、会社側からは、組織再編の設計段階での買取請求リスクの見積り、通知・開示・仮払いの実務、価格決定手続での主張立証まで、いずれの立場でもお引き受けしています。

次回 第23講「役員のクビをめぐる戦い ― 取締役の解任・辞任と損害賠償」では、経営権紛争の最前線である取締役の解任と、解任された側の損害賠償請求(339条2項)、解任の訴え(854条)を扱います。

この講の主な根拠条文・裁判例・資料

  • 会社法〔e-Gov法令検索〕108条1項3号、111条2項、116条、117条、133条、172条、180条、182条の2〜182条の5、234条、235条、309条2項・3項、310条、313条、322条2項、461条、464条、467条〜470条、782条〜787条、794条、796条、796条の2、797条、798条、803条、805条の2、806条、807条、828条、831条、868条1項、870条2項2号、871条、872条5号、976条2号
  • 会社法施行規則〔e-Gov法令検索〕33条の9(株式併合の事前開示事項)、182条以下(組織再編の事前開示事項)
  • 所得税法〔e-Gov法令検索〕25条1項5号(みなし配当)
  • 所得税法施行令〔e-Gov法令検索〕61条1項8号(合併反対株主の買取請求に基づく買取り)・9号(182条の4の買取請求等に基づく買取り)
  • 租税特別措置法〔e-Gov法令検索〕9条の7
  • 民法〔e-Gov法令検索〕404条(法定利率)
  • 最決平成23年4月19日民集65巻3号1311頁吸収分割に反対した株主の買取請求について、「公正な価格」の趣旨、ナカリセバ価格、基準日(買取請求日)を示した判例
  • 最決平成23年4月26日集民236号519頁株式交換に反対した株主の買取請求について、企業価値の増加が生じない場合の公正な価格をナカリセバ価格とした判例
  • 最決平成24年2月29日民集66巻3号1784頁株式移転に反対した株主の買取請求について、シナジー分配価格と、独立当事者間の公正な手続による比率の尊重を示した判例
  • 最決平成27年3月26日民集69巻2号365頁非上場会社の吸収合併に反対した株主の株式買取請求(785条1項)について、収益還元法で算定した価格に非流動性ディスカウントを行うことはできないとした判例
  • 最決令和5年5月24日判タ1514号33頁会社法144条2項の売買価格決定において非流動性ディスカウントを行うことができるとし、平成27年決定とは事案を異にするとした判例(第21講)
  • 加藤真朗編著『非上場株式の相続と会社法』(新日本法規、2025年)第6章、同編著『株主管理・少数株主対策ハンドブック』(日本加除出版、2022年)

条文のリンクは法令本文へ移動します。記載の条番号から各規定をご覧ください。裁判例は掲載誌の巻号頁を記載しています。

公開日 2026年8月24日/改訂日 2026年9月22日

非上場株式27講 目次へ戻る